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 「その後、放課後になって部室に行って、金庫にしまっておいた家宝の印籠を取り出そうとしたところで、金庫が破られて印籠が盗まれていることが分かったんです」

 「ちょっと待ってもらえる? 今、なんて言ったの?」

 「印籠が盗まれていることが分かったんです」

 「じゃなくて、金庫にしまっておいたって言わなかったかしら?」

 「はい。大切なものなので、朝一でまず部室の金庫に大切にしまったのですわ」


 なるほど。これは、金庫に入れれば安全だという安全神話を逆手に取った完全犯罪だったのですね!と思ったのですが、お姉さまのポイントはそこではないようです。


 「どうしてそれを先に言わないのかしら! それを聞いてたら修験道なんて走らないで先に部室に行ってたわよっ」

 「……! なるほど、そうですわね!!」

 「姫ちゃん、姫ちゃん、修験道は走れないよっ」

 「なるほど、そうですわね!!!」


 天さまの言葉で気づきました。修験道の道は道路の道じゃなくて仏道の道なので走ったり歩いたりは不可能でした。さすが、天さま、鋭い指摘です。と思ったのですが、お姉さまのポイントはそこではないようです。


 「どうでもいいわよ、そんなこと!」


 とにかく、私たちは陰陽部の部室に向かい、金庫の前に集合しました。この時ばかりは美雷さんも部室に入ることに文句は言いませんでした。


 「では、開けますわよ」


 美雷さんが金庫のダイヤルを慎重に回していくと、かちりと音がして金庫のドアが開きました。


 「確かに、何もないわ。……ん?」


 中を覗いてみても美雷さんの言うように何も入っていないようでしたが、お姉さまは何か気づかれたようでした。美雷さんに断ってから金庫の中に手を伸ばすと、金庫の内側上面から何かを剥がして取り出しました。


 「紙ね。手紙かしら?」


 器用に折りたたまれた紙を開くとそこには新聞の活字を切り貼りして次のように書かれていました。


 『美雷へ。あなたの大切なものは私が預かりましたの。有里』


 「……どうしてわざわざ切り抜きの活字を使ったのに正直に名前を書いてるのかしら? この犯人、もしかして、バカなの?」

 「有里……、もしかして倉橋くらはし有里ゆり?」

 「知ってるの?」

 「陰陽部のナンバー2ですわ。この金庫の暗証番号は私と有里しか知らないはずなんですの」

 「思いっきり犯人やないかいー!」


 ああ、お姉さまの口調が乱れていらっしゃいます。こんな平和な学校でこんな事件が起きるなんて心優しいお姉さまには心痛が耐え難いのでしょう。


 その後、校内で倉橋有里さんを探して回ったのですが見つけることはできず、印籠の在処ありかようとして知れませんでした。

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