童謡ってよく聴くと泣ける
幼稚園や小学校の音楽の授業では、歌を歌うことだけを習う。そして大人になるに連れてその歌詞の意味などを知って愕然となることがある。
アイスも買ってしまい、買い物袋を両手に持ちながら病院に行く気にはなれず、結局そのまま帰宅した。
「ただいま…」
「お帰りなさい。ご苦労様」
景姉さんは俺から袋を受け取ると、さぞ満足そうに笑った。そして中のアイスに気付くとよしよしと頭を撫でられた。
「良い子良い子」
「そういうのはいらないんで、美直たちにそれあげてください」
手を払いのけ、財布を置いてこようと自室へ戻る。居間から景姉さんの掛け声とバタバタした足音が聞こえて、俺は軽く息を吐いた。
食卓で妹たちと仲良くバニラバーを口に加える。景姉さんは夕飯のシチューを作り始め、材料を切っている。木実は嬉しそうに頬張ってくれていて、口の周りがベタベタになってしまっている。可愛い。
「木実、口拭いてあげるからこっち向いて」
「んー!」
ニコニコしながら顎を突き出してくる。俺もニヤニヤしてしまう。
だがふと視線を感じた。向かいの椅子を見ると美直がアイスを片手にまるで冷めた目で俺を見ていた。
「…なんだよ」
「ロリコ「せめてシスコンって言え」
「あんたに依存されたくないんだけど!」
「するかぁ!!」
ツッコミも虚しく人聞きの悪いことを返された。どんだけ俺を変態扱いするつもりだこいつは!
美直の隣で楠李は静かにアイスを食べている。…いや、舐めている。
「…楠李、そんなに時間掛けて舐めていたら溶けるぞ」
今にもバニラが手に垂れそうになっていて思わず言うと、楠李は小さく笑って呟いた。
「滴り落ちてくるものは舐めたくなる。特に赤いものは」
……サァーッと背筋が寒くなったのは確実にアイスのせいではない。美直も硬直していた。買ってきたのがバニラで良かったと心から思う。
木実は意味を理解していないからか、変わらずニコニコしていた。うん、木実はいつまでも天使のままでいて…。