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味噌汁がお袋の味とは限らない

男子高校生の悩みなんて、ほとんどの奴が自分自身のコンプレックスだと思う。彼女が欲しいとか、身長が低いとか、顔が恐いとか。



十分。十分間だけ見て見ぬふりをしていたが、とうとう耐え切れなくなった俺は口を開いた。


「…景姉さん、食事の時は服ではなくエプロンだけ脱いでください」


食卓で茶碗の白米を食べている俺の隣には、ネグリジェの上にエプロンという半裸同然姿で同じく白米を口に運ぶ景姉さんがいる。さっき俺の部屋に来た時はまだシャツを着ていたのに、朝食を作る際に着替えたらしい。いや、脱いだらしい。


「だって暑いんだもの。君の股間も熱いでしょう?」


ブッッ!と勢い良く味噌汁を吹いた。飯食ってる時になんつー事を。しかも目の前には……


「ちょっと景、朝から下品な下ネタやめてよ。こんな男の欲情した顔なんて見たくないから」


「二人とも、不潔」


「けーちゃんさむそう」


(こいつら)がいるのに!


「って誰が欲情するか!! 美直(みなお)お前勝手に人を変態みたいに言うな、腹立つ!」


俺の真向かいに座る中学生の妹の美直に思わず怒鳴ると、美直は箸を止めて頬杖つきながらツインテールを揺らした。


「はぁ? 否定もしないで味噌汁吹くとか動揺している証拠じゃん。しばらく黙ってジロジロ見た上、“脱いでください”とも言ったし」


「エプロンだけっつっただろうがぁ!!」


それにジロジロ見てなんかいねぇ!!黙って飯食ってたわ!


こんなにも他人の性癖や性格に悩む奴なんているだろうか。

もう毎度の事だが朝からエネルギーを使うのはかなり疲れる。景姉さんの裸エプロンは朝だけではない。昼も夜も、というかキッチンに立つ度にこの姿になる。どこのエロゲー設定だ…。


大きくため息を吐いて座り直した俺は再び食べ始める。腹は立つしいろいろと迷惑はしているが、人に作ってもらったものを残すつもりはない。あ、この煮付け美味い。


「景、今ニヤけたよこいつ。股間より胃袋掴むと喜ぶんだね。腹よりもそっちの方がたってるよ」


「お前の下ネタの方が最低だあああ!!!」



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