あらすじ(詳細版)
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、家が代々神官も兼任しているために、しきたりに従って男装している。
次期領主として剣の腕を磨き、祖母から教えられた医術を勉強し、領地経営を学ぶのに努めていたある日、彼女は金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みを引き受けることになる。
第二王子は、王家に伝わる神剣に選ばれた人物で、それ故に、病弱な第一王子ではなく、彼が王位に就くことが望まれていたのだ。
しかし、第二王子は慕う兄が王位に就くことを望んでおり、そしてそうなれば、国内外の状況から騒乱の火種にしかならない己の存在を疎んじていた。
また、神剣は「不死」の呪いに関わっていると考えられており、そのために敵対勢力のみならず、一部の「不死人」からも常に命を狙われていた。
国のためにするべきことがあるうちは、死なない程度の手を打ちはするが、生きる努力はしない。そんな王子を、ソランは命懸けで守り、支えていこうとする。
そんな中、刺客に襲われ、返り血と味方の血によって血塗れになって泣きながら、それでも傍を離れないと言い切るソランに、王子は心を動かされ、次第に生き残る道を模索していくようになるのだった。
共に数々の危難を乗り越えるうちに、二人の間に主従を越えた思いが芽生えていき、やがて二人は心を通わすようになる。
そして、それによって、神剣にまつわる神々の時代から続く因縁が明らかになっていく。
前世、ソランは神剣を彼に与えた神であり、彼は神の意を地上で実現しようとした若き将軍であり、恋人だったのだ。
だが、ソランに求婚していた主神が、嫉妬して地上ごと彼を滅ぼそうとし、それを防ごうとした神は神力を失って、彼ともども命を落としたのだった。
ただ、二人の約束の証とされた神剣だけが残り、不完全な加護の力を伝えてきたのだ。
そうして今、遠い昔に断ち切れなかった、主神が蒔いた災厄の芽が西の地で育ち、彼らの国を襲おうとしていた。
王子はソランと生きていく力を得るため、また、国を守るために、王太子位に就くことを決める。
彼らは西の国からの侵略を阻止しようと奔走し、努力の甲斐あって無事に敵を打ち払う。そして、王都へ帰ってきた時、群集に歓呼で迎え入れられたのだった。
彼らはその功績によって、王から王太子とその妃の位を賜り、結ばれることになる。
それははからずも、前世で彼らが最期の時に交わした誓約の成就を意味していた。それによって、「不死人」を縛っていた呪いも解けたのだった。
『暁に、もう一度、あなたと』
数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。