【一章】表と裏 part1
裏世界デーモン
教室に鳴り響く、チョークが黒板にこすれる音。
その音は淡々と言葉を綴る。
授業と言えば怠いものだ、小一時間机に縛り付けられ、好きでも無いものを学ぶ。
言い方を変えれば拷問にも等しい。
窓から差し込む日差しが僕を暖め、眠気が襲ってくる。
ウトウトとしつつも、シャーペンを強く握りしめ、ノートに黒板に書かれた言葉を書き写す。
それは作業、労働でしかない。
俺は教室の窓側、その後ろ側の片隅の席に座っていた。
俗に言う主人公席だ。しかし、ただの席でしかない。
冬場ならちょうどいい頃だが、夏場は勘弁と言いたいところだ。
4月の始まり、まだ少し肌寒いころ、僕は高校二年生になった。
だけどそれだけでしかない、もっと言い方を変えれば一年過ぎただけだ。
でも、こんな退屈な日常には満足していた。いや、それ以上に何を望めばいいのかがわからないだけだろう。
地位?名誉?そんな肩書きは要らない。
お金?恋人?それだけじゃ心は満たされない。
僕が僕として、納得できるものなんてこの世には……無いものなのかな。
パキッ…
シャーペンの芯が折れ、その破片がノートに転がった。
その瞬間、意識が戻ったかのように僕はまばたきをし、再び授業に向き直るのだった。
◆ ◆ ◆
時間とは集中してれば勝手に過ぎていくものだ。大人に近づくに連れて一日と言うのも短く感じるようになる。
僕の場合は別だけども、ね。
授業の合間と言えばつまらなくなれば考え事にふける。
考える事は日に日に変わる、それも、今思えばどうでもいいことのようにも思える。
下校、一人で。時刻は五時、夕日が僕を照らし、影が僕の後ろにできる。
肩に下げたバッグを掛け直し、帰り道を歩き続ける。
何も無い日常、他人にとってはただの日常では無いかもしれない。
けれども、僕には関係ない。
僕は学校への登下校は徒歩で済む。
歩いて20分ほど、自転車も持っているが、何しろ独りの時間が好きだ。
当然、遅刻しそうでも無い限り使うことは無いだろう。
住宅街に入った。まだ明るいが、この辺りに来るとさすがに薄暗くもなるものだ。
家まであと数分、そんな時。
十字の道に差し掛かかる。
反対側からトラックが走ってきた。
それも、住宅街を通るとは思えないスピードで。
危なっかしい運転だ。正面から来るので、端に寄ればまず接触することは無いだろう。飛び出しでもしない限りは。
けれども、違った。
トラックに轢かれた。
一瞬の出来事だった。
十字路の横道から人が飛び出し、それを避けようとしたトラックが僕の方へと向かってきた。
大きく吹き飛ばされ、数メートルほど飛ばされる。
右も左も分からなく、地面が上なのか下なのかすら理解できない。
そして勢いよくアスファルトに倒れ込んだ。
痛み、というより苦しみ。
全身が味わったことの無い苦痛を感じ、気持ち悪くなる。
意識はある。けれども身体は動かない。
頭を打つことは無かったようだ。
ただ、死と言うなの恐怖が僕に迫っていた。
助け……
運転手……トラックの運転手は……
そこにはトラックはおろか、人一人すら居なかった。
逃げ……られた
とてつもない憎悪を感じた。人は何て生き物だろうか。
目の前が暗くなり、眠るように僕の意識は遠のいて行った。
小説になろう!初投稿になります。
黒猫白猫です。
初心者が作った小説ですが、読んでくれた皆様、ありがとうございます!