襲われまくりですわ
おひさしぶりです(・∀・)
長い間エタっていた訳ですが、先日同僚にこの小説がバレましたOTL
その人に「続き早よ」と弄られまくったので書きました。
今回も続ける気はありますが相変わらずプロットは脆弱です。
またエタったらごめんなさい(_ _)
さて、大きな声で叫んでしまったせいで眼下にいたオオカミっぽいモンスター達に気付かれたよう。
「なんだかまずい状況になりそうだね、壁のれは」
このままここに居座っていればモンスターに襲われるのは確実だろう。すでにモンスターは吠えたりしながら僕の方へ向かってきている。三十六系逃げるにしかずとは言うが後ろの森に逃げ込んだりしたら迷子になりそうに思える、ここは正面に逃げることにしようじゃないか。
「つー訳でレッツゴー!」
とは言え馬鹿正直にモンスターの群れに突っ込もうならば戦闘スキルゼロの僕は即死できるだろう。なので氷の板を複数精製&空中に固定し即席階段にして、攻撃されなさそうな高さに上がり、そこからさらに少し長めの氷の板を1枚、これに足を固定し板を前に飛ばす。そうすればあら不思議、空中を滑空できるのだ。
「無駄に使い方考えまくっててよかったね、ってこいつら脚速くない!?」
これで逃げ切れればよかったのだがモンスター達は下を併走して追って来ていた。平原だからかなぁ?
なんだか若干空気も乾燥してるしここは障害物を作るよりも体内の水弄って殺った方が早そうである。ただ、それをやると僕の良心が痛むんだ。
「でも背に腹は変えられないか……」
あまり時間をかけると彼らが可哀想だし、脳内の水を氷結、粉砕。これで哀れな彼らは死んだと理解することもなく野に横たわった。
「なむなむ……っと。この後はどうしようかな?」
というよりさらっと『僕』として動いてたけど何があるかわからないし一人でも『私』でいるべきかもしれない。
「ままならないものですわね」
とりあえずは人の住んでいる所へ行きたいです。あんな魔方陣をくぐってこんなモンスターのいる場所ということは地球ではないのでしょう。さしずめ異世界でしょうか。
異世界で言葉が通じるかはさて置き、人に会えば何かわかるでしょうし、今後のことも考えられるでしょう。
先ほどのように氷の板に乗って高速移動すれば快適に探索できそうですけれど、この世界の事情が分からない以上地道に歩いて探索したほうが余計なトラブルを招く危険性がないと思いますし、徒歩で行くことにしました。
しばらく歩くとすぐにモンスターとエンカウントします。まぁすぐに脳をクラッシュしてしまうのですけれどもね。そして30匹を越えたあたりから少し愉快になってきたのは危険な兆候でしょうね。
それから1時間ほど歩いたところでしょうか、遠めに人影が見えました。早速大声で呼ぼうとしましたが一抹の不安がよぎります。彼らは安全な人でしょうか、物語的によく居るゴロツキの可能性もあるのです。
そこで登場しますのが水100%で出来た望遠鏡。これはそれなりに作り慣れていて、ある程度の距離までは対応可能です。
さて、早速彼らを見てみますと、3人で、雰囲気としては武装していますし冒険者と言えます。ですが男しか居ないので少し不安もありますが、向こうもこちらの存在に気付いたようです。もう逃げることは難しいでしょう。まぁ1名、熟練な見た目の人が居て、初心者風の若い人が2人ですし、安全でしょう。そう腹を括って彼らとコンタクトしました。
「どうも、こんにちは」
こういう時は微笑を浮かべ、第一印象を好くしておきます。初心者風の2人は少しデレっと警戒心がない様子でしたけど、熟練風の彼は逆に警戒してしまったようです。
「こんにちは、お嬢さん。こんなところで、しかも一人で何をしておられるのですかな?」
「少し道に迷ってしまったのですわ。もしよろしければ最寄の町かどこかまで案内していただけません?」
なおさら警戒されました。やはりこんなモンスターの闊歩する草原に非武装の人間が居れば怪しむのは当たり前のようです。
「いったいお嬢さんはどこから来たというのだね?」
「おそらく、歩いて行けるような場所ではないと思いますわ。私も戻り方は分かりませんし」
少しおどけて見せたら抜剣されました。赤い刀身が特徴の綺麗な剣ですね。
「お前ら、離れていろ」
「サイファスさん!?何してるんだよ、相手はただの女性だ!」
「お前は何も疑問を覚えないのか?こんな魔物の蔓延る草原に女が一人だ。それも装備も何もせずに、彼女もまた魔物の可能性がある」
後ろに居た一人が驚いて熟練風の―――サイファスさんというらしいですね、をとめようとします。さすがは正義感の強い年齢の男子ですね、今回は彼が正解なのですけれど経験則からサイファスさんは私を魔物と判断しました、彼もクラッコと同類ですね。
となるとここで人間アピールしても悪化するだけでしょう。ひとつ悪乗りしてみます。
「ふふふ、あっさり気付いてしまうのですね。つまりませんわ」
浮かべていた微笑を落とし、退屈そうに唇を尖らせます。
「最近一方的に襲ってばかりでしたので、たまには同意の上で楽しみたかったのですけれども……」
私とイイコトしません?と後ろの正義感の強い方へ視線を投げます。
「逃げろ!お前らでは手に負えん、俺が食い止めている間に町へ戻れ!」
「まじかよ……行くぞグレン!」
さっきまで黙っていた方の彼が呆けていた正義感のグレンと逃走していきました。何故でしょうか、失敗した感じが否めません。
「私はどうしたらいいんですの?」
小首をかしげながらサイファスさんに聞いてみますが敵意むき出しな視線しかされません。ほんとにどうしたらいいのでしょう?
「冗談だったのですけれど、あの」
「貴様の甘言に耳を貸す気はない!」
彼はそう気合を入れて襲い掛かってきました、絶体絶命です。
とりあえず誤解を解く為にもこちらから攻撃できませんし、あからさまに能力を使ってもどうなるか分からないので少し大変です。
「ちょっ、敵対意思はありませんわ!まず話を聞きなさい!」
足裏に水のスプリングを作り、ほぼノーモーションで後方へ4mほど下がります。ついでに説得も試みてみました。
「っは!」
安全かと思ったら彼の剣から衝撃波のようなものが飛び出しました。非常に驚きですが、異世界ということで無理やり納得しておきます。
「非武装の人間に襲い掛かって恥ずかしくないんですの!?」
「まだ言うか!サキュバスの分際で!」
それをよけながら説得を続けていると、あろうことか淫魔扱いされました。このおっさんは少し頭を冷やすべきでしょう。そうに違いありません。
『ウゴクナ』
彼の周りの水蒸気を固定―――まぁ分子の微振動まで止めたら絶対零度で死んでしまうのでその場で分子は振動させておきます―――すれば、サイファスは強制的に急制動で静止します。全力で壁にぶつかったようなものですが、ザマァミロです。少しそれっぽく発音したのはプラシーボ効果をわずかに期待してのことです。勝手に思い込んでくれればラッキーです。
「っぐふ!?」
「あまり使いたくはないのですけれど、仕方がありませんわ。話をまったく聞こうとしてくれませんもの」
「うぅ、貴様、何をした!?何が目的なのだ!」
すんごい睨みつけてきました。めちゃ怖い……。
「まず、嘘偽りない事を宣言したうえで言いますわ。私は人間ですわ」
「呪文の詠唱もなくこのようなことが出来る人間がいるか!」
「これはちょっとした裏技ですわ、なので気にしないでくださいまし。それよりも初対面の女性に対して淫魔呼ばわりは如何なものかと思いますけれど、おじ様にデリカシーというものはありませんの?」
言いながら徐々に背中のほうの分子の微振動を弱めていき、擬似的に『背筋がゾクリとする』を生み出します。大人しく話を聞いてくれればそれでいいのです。
「そもそも私が人間だと言っている時点でキチンと確認すべきですわ」
「…………」
背筋がゾクリ、で彼は逆らうのを躊躇ったのか睨みはするものの、先ほどよりかはこちらの話に耳を傾けてくれました。
とは言え、不可視の力で拘束されたままではあまり好意的には接してくれませんでしょうし、分子を解放します。
「少しおじ様を信用して解放しますので、おじ様も私を信用してほしいですわね」
「むぅ……」
「私としましては右も左もわからない所へ転移させられて困っておりますの。幸い言葉は通じますけれど、お金もありませんし、地理も不明。身分を証明できる手段もありませんわ」
「……そうか」
ひとしきり迷った後、彼は構えていた剣を仕舞ってくれました。どうやらある程度は信用してくれたようですね。
「適切な判断、感謝いたしますわ」
「完全に信用した訳ではない、それを忘れるな」
「結構ですわ。先ほどの淫魔を想像させるような受け答えについては謝罪いたします。割と最近似たような質問をされましたときに、危険人物ではない、と答えましたら自分でそういう人はいないだろうと疑われましたの。
なので今回は逆に少しだけ悪ノリしてみたんですわ」
イタズラっぽく微笑みながら謝罪をしましたら、しかめっ面をされました。まぁモンスターが存在する世界で好き好んで間違われようとはしませんでしょう、少し反省です。
「呆れて何も言えんな……
しかしまぁ何にしても、お嬢さんはどこのご令嬢なのかね?」
非武装で、制服も見方によってはドレスになるのでしょうか?を着ていればご令嬢扱いも納得がいきます。
「なんと説明したらいいのかわかりませんわ。私は理解しているんですけれども、おじ様に理解できるかどうか……。無理矢理表現するならば、徒歩でも馬車でも船でも行けない遥か彼方ですわね」
「そんな遠くからどうやって……それで転移か」
「まぁそれで、とりあえずは町かなにかへ行きまして、生活の糧でも稼ごうかと思いましたの」
彼らの風体を見ていると、冒険者ギルドなんかもありそうですし、そこへ加入すればそれなりに自由に動けそうです。今のままだと、今回のようなトラブルに会う可能性が高いですけれど、『これでも冒険者やってますわ』と言えたらなんだかかっこいいです。
戦力については、あの狼っぽいモンスターのように体内をぐちゃぐちゃにしても良いですし、どこかで剣術を学んでもいいですね。
「生活の糧か……まさか身を売ろうなんて考えてるんじゃないだろうな!?」
「殺しますわよ?」
どうやら邪な想像をした様なので、笑顔で言い放ちました。おじ様世代はすぐ調子に乗りますので嫌です。