王様のおはなし
初投稿です。不慣れなため、穴がいくつもあると思います。それでもいいと思える方はどうぞ読んでいって下さい。拙文ですが楽しんで頂ければ幸いです。
これはみんなが知っている王様が王様になった時のお話。
ある王国の大きなお城の綺麗なお部屋でため息がひとつ。これがこの王国の王子様。めっぽう強いのに頭もいい。それでいて優しくて、かっこいい。そんなみんなの知っている王様のちいさかったころ。
そんな王子様の眉は今は八の字、クリッとした目は眠そうで、綺麗な顔も台なし。そして、ため息をもうひとつ。
"はぁ。王様なんかになりたくないなぁ。僕が王様になったってみんなに迷惑をかけるだけ。誰か代わりになってくれないかなぁ。"
そう。王子様はヘタレなのです。王子様は剣はもちろん勉強だって。おまけにグータラで面倒くさがり。何ひとつ上手にできるものはありません。とてもあの王様と同じ人だなんて思えません。
"そうだ!神父に代わりになってもらおう!神父なら僕よりやさしいし、良い王様になってくれるだろう!"
そう言うと、さっきまでの落ち込み様はどこへやら。王子様は大臣を探して走っていきます。
"やあ、神父。思ったのだけれど、神父が王様になるのはどうだい?神父は僕よりずっとやさしいし、僕よりずっと良い王様になるはずさ。"
"いいえ、王子様。私よりも王子様の方がずっと良い王様になれます。もっと大きな国にできます。"
"それを聞いた王子様、足りない頭を捻ったけれどあんなにやさしい神父よりも良い王様になれるなんて到底思えません。"
"神父の方がいいと思うのに。他を当たろう。そうだ!賢者なら僕より賢いし、良い王様になってくれるだろう!"
そう言うと、またまた王子様は走っていきます。行動力だけならありますね。
"やあ、賢者。思ったのだけれど、賢者が王様になるのはどうだい?賢者は僕よりずっと頭がいいし、僕よりずっと良い王様になるはずさ。"
"いいえ、王子様。私より王子様の方がずっと良い王様になれます。もっと大きな国にできます。"
それを聞いた王子様。足りない頭を捻ったけれど頭の良い賢者より良い王様になれるなんて到底思えません。
"賢者の方がいいと思うのに。他を当たろう。そうだ!騎士なら僕より強いし、良い王様になってくれるだろう!"
言わずもがな。王子様は可愛くて素敵な騎士を探して走っていきます。いつもの面倒くさがりもどこへやら。
"やあ、騎士。思ったのだけれど、騎士が王子様になるのはどうだい?騎士は僕よりずっと強いし、僕よりずっと良い王様になるはずさ。"
"いいえ、王子様。私より王子様の方がずっと良い王様になれます。もっと大きな国にできますわ。"
それを聞いた王子様。ますますもってわかりません。最後の頼みの優しくて強い騎士でさえ、王子様の方が良い王様になれると言うのです。
"ううむ。わからないぞ。王様に必要なものはなんだろう。それがわかれば、教えてもらうことだってできるはずさ。"
王様に必要なものとはなんでしょう。王子様の割には難しいことを考えていますね。もちろん長くは続きません。すぐ人に聞くことにしました。でも、さっきまでの足の速さはどこへやら。のっそりのっそり歩いていきます。
"ご、ご機嫌いかがでしょうか、お父様"
そう。王子様はお父上が苦手です。なんでもすぐに怒るし、何を考えているのかわからないから苦手なんだとか。もっとも王子様に何を考えているのかわかる人なんていないんですが。
"これはめずらしい。王子が自分から話しかけてくるとは。花瓶でも割ったのか?"
"いいえ、お父様。花瓶を割ってなんていません。お父様にお聞きしたいことがあるのです。"
"何でも答えよう。何が聞きたいのだ。"
"僕は王様になりたくありません。僕がやっても上手くいかないと思うからです。僕は代わりになってくれるだろう人に頼みました。ですが、僕のほうが良い王様になれると言って断るのです。"
そこまで話すと王子様は一度だけ深呼吸をして続けます。
"良い王様に必要なものとは何でしょうか?良い王様とは何なのでしょうか?"
"それは王子が見つけること。答えられないが、代わりに良い王様になれる理由を答えよう。"
"僕は、初めにやさしい神父に頼みましたが、神父は断りました"
"優しければ良い王になれるのか?ならば咲いている花こそ王にふさわしい。優しさは必要だが大事ではない。"
"次に、僕より賢い賢者に頼みましたが、賢者も断りました。"
"賢ければ良い王になれるのか?ならばロボットこそ王にふさわしい。賢さも必要だが大事ではない。"
"その次は僕より強い騎士に頼みましたが、騎士も断りました。"
"強ければ良い王になれるのか?ならば空を飛ぶ竜こそ王にふさわしい。強さも必要だが大事ではない。"
"ならば何が大事なことなのでしょうか?"
"それに気づくこともまた大事なことなのだ。彼らから良い王になると言われたのだ、それは王子の中にあるかもしれぬぞ。"
いつの間にか、良い王様に必要なものが何か気になっている王子様。それに王子様が持っているかもしれないと言われてやる気が出てきました。
"よいのか?あれほどまでに嫌がっていたものを"
"なんだか嫌な気持ちはなくなってきました!"
王様になりたくないがためにあれほど走ったのに、素質があると言われただけで王様になりたくなってきたなんて現金ですね。
だめだめな王子様は神父に、賢者に、騎士に王様になるために訓練を付けてもらう事にしました。元がグータラな王子様です。学ぶことが多く、大変でしたが弱音一つ吐くことなく頑張り抜きました。心を鍛え、知恵を付け、力を強くしても王子様は訓練をやめません。王子様のひたむきさにまわりの人たちは少しずつ心を動かされていきます。
そして、あくる日の朝。王子様はお父上にむかって言います。
"王様。良い王様に必要なものが何かわかった気がします。それは努力です。僕は優しくなれたし、賢くもなれました。それに、強くも。これで、たくさんの人を助けられます。良い王様になれるはず。"
王様は応えて言います。
"努力をすれば良い王になれるのか?ならばみなが王になれる。努力も必要だが大事ではない。"
王子様は考えます。あれからたくさんのことを知ったし、賢くなった頭で考えます。けれども一向にわかりません。王子様は泣きそうになりました。
"お父様!僕にはわかりません!僕は良い王様になれるのでしょうか!僕は良い王様になってたくさんの人を助けたい!"
"王子よ。これまで王子は良い王が何か考え、厳しい訓練にも耐えてきた。この国にそれを知らぬ者はいない。王子が王になると言っても、みなが認めるだろう。だからこそ、私はお前に王位を譲ろう。その言葉を忘れなければきっと良い国になる。もっと大きくできるだろう。"
「それから、王子様は王様になりました。みんなが知っている王様に。みんなの大好きな王様に。おしまい。」
「ねえねえ!王子様はそれからどうなったの?」
「竜を倒したり遭難したりしたわ。他にも色々な冒険をしてたくさんの人を助けたわ。でも続きはまた明日。」
「いい王様にひつようなものってなんだったの?」
「それはね。王子が考えて頑張らないといけないことなのよ。この王子様のようにね。そうすればきっと見つかるはずよ。」
「おいおい、ほとんど悪口じゃないか!人を童話に使わないでくれって何度も言ったろう!だいたい君は!自分のことばかり良く言って!」
これはみんなが大好きな王様のお話。みんなを大好きな王様のお話。王様の国はずっと続くけれど、お話はこれでおしまい。
改行の仕方などで読みにくい箇所がございましたら、どうぞご指摘下さい。都度訂正していきたいと思います。