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再会の日々 ~仕合わせ~  作者: マツバラ
19/20

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「すごく嬉しいよ」


「うん、私も嬉しい」


腰にまわした手にぎゅっと力が入る。同時にぬくもりが伝わってくる。もう一度、短めのキスをした。


「あっ、一回だけって言わなかったっけ?」


「そんな昔のこと忘れちゃったよ」


「ずいぶん忘れっぽいのね」


そう言って今度は裕子からキスをしてきた。


「これでおあいこ」


また裕子を抱きしめた。


考えてみればすごく遠回りをしてここにたどり着いた。

だけどあっという間だったような気もする。


さっきまでドキドキしていたのが嘘のように穏やかだ。

夢心地というか、まるで時間が止まったかのように思える。


「なんか時間が止まっているみたいね」


「うん、僕も今そう思っていたんだ」


時間が許す限り、ずっとこうしていたいと思った。


「ねぇ、もう立ち直れた?」


「もうちょっとかな」


「しょうがないなぁ」


腰にまわしていた手を離して僕の顔を見上げる。

そっと4度目のキスをした。


二人は黙ったまま並んでソファーに座った。

恥ずかしさと嬉しさと、過去と現在と・・・

色々なものが混ざり合っていた。

少しの沈黙のあと、裕子が話し始めた。


「さっきの話なんだけど」


「何?」


「ほら、写真のことを小さかった裕美に話したこと」


「あぁ、なぜその時に話をしたの?」


「あれは裕美が小学校三年生、8年前の12月だったけど

何か記憶にない?」


8年前といったら僕は30歳、30歳の12月って・・・

あっ、僕が結婚した時だ!


「わかった?あれは一也が結婚した時だったんだよ」


裕子は思い出すようにゆっくり話し始めた。


「高校の友達に一也が結婚したことを聞いて、もうこれで完全に

手の届かない存在になったと思ったらすごく悲しかった。

それであの写真を眺めていたら、ちょうど裕美が学校から帰って

きて、ついしゃべっちゃったのよね」


「でも裕子はもっと前に結婚していたし、裕美だっていたじゃん」


「そうだけど・・・もうとにかくショックだったの。

だって私も初恋だったんだから」


うわっ、裕子の初恋の相手が僕?そんなの想像もしていなかった。ということはお互い初恋だったのか。


「もし、もしもだよ、8年前に僕が結婚をやめて裕子に告白して

いたらどうにかなった?」


「う~ん、でも私は結婚していたから・・・無理だよね」


「そっか、どっちにしても無理だったんだ」


裕子は英雄や裕美との家庭を捨てるような女性ではない。

そんなことはわかっていたが、もしかしたらと思って聞いてみた。でもやっぱり、もしかしなかった。


「高三の時に暗室で告白してくれていたら・・・」


「もうやめてくれよ、また自己嫌悪で立ち直れなくなる」


「でもキスをすれば立ち直るんでしょ」


そう言いながら僕の顔を覗きこむ。


「またキスしていい?」


「もうダメ」


「ケチ!減るもんじゃあるまいし」


「おっさん発言だ、一也がおっさんになったぁ~」


「ちょっと、そんなに大きな声出さないでよ」


「おっさんに怒られたぁ~」


ついさっきまで恋人同士のような雰囲気だったのに二人で大笑いした。

本音で話し合ってすっきりしたせいか、笑いが止まらなかった。


「ガチャガチャ」


玄関で鍵を開ける音が聞こえた。裕美が帰ってきたようだ。

「笑い声が外まで聞こえてるよ」そう言いながらリビングに

入ってきた。


「おかえり」


「おかえりなさい」


「ただいま・・・あれ、並んで座って仲良しだね」


今まで笑っていたので並んで座っているのを忘れていた。

さりげなく二人の間隔を空ける。

裕美は立ったまま裕子をじっと見ていたが、目線を僕に移した。


「一也、口紅がついてるよ」


「えっ!?」


反射的に自分の唇を指でこすってその指を見てしまった。

隣で裕子が「バカ」と小さくつぶやく。


「ふ~ん、そういうことね。まっ、いいけどさ」


まさかこうなることを予測して昨夜キスをしてきたのか?

しかも裕子との様子に気づき、すぐにカマをかけるなんて。

怖い、怖い。やっぱりこの17歳は怖すぎる。


「汗かいちゃったからシャワー浴びてくるね」


何事もなかったかのようにお風呂場へ向かった。

シャワーの音を確認してから裕子が話し始めた。


「なに簡単に引っかかってるのよ!」


「いきなりだったからつい・・・」


「もう二度とあんなことしないからね」


「えっ、う、うん・・・わかった、ごめん」


「落ち込んでるの?またキスしたい?」


「さっきしたからもうそれでいい、我慢する」


「なんかかわいい~」


突然裕子が抱きついてきた。急だったし意外と勢いがあったので

僕はよろけてソファーの上に寝ころぶような体勢になった。


「どうしたの、裕美に見つかっちゃうよ」


「だって一也って時々すごく可愛くなるんだもん」


裕子の匂いがする。柔らかい体の感触が伝わる。


「我慢なんてしなくていいの」


耳元でそうつぶやいて、そのままキスをしてきた。

僕は下から手をまわし、抱きしめながら裕子の重さを感じていた。

次回で最終話になります。

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