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再会の日々 ~仕合わせ~  作者: マツバラ
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「いつ頃からといってもあやふやなんだけど、好きだと気づいた

のはたぶん一学期の終わりのほうだと思う」


「ふ~ん、それで本当に初恋だったの?」


「えっ、そんなこと言ってた?」


「言ってた言ってた、もうそれが写真のことより気になっちゃって早く話を聞きたかったの」


「なんだよ、それ。許してもらおうとして必死に話していたのに」


「だって初めから怒ってないんだから許すも許さないもないでしょ。一也が写真のことを忘れていたのは少し残念だけど、20年も前のことなんだからしょうがないじゃない」


「うそ、だって裕美が・・・」


裕美にハメられた。まったくあの小悪魔め!

でも良かった、裕子は怒ってなかったんだ。


「それで本当に私が初恋の相手?」


ここまできたら隠してもしょうがない。

本音でいこうと決めたんだから本当のことを言おう。


「そう、僕の初恋の相手は裕子だよ。この際だからぶっちゃける

けど、もう好きで好きでしょうがなかったんだ。

今だってそうだよ、20年も経っているのになんでこんなに好きなのか自分でも理解できないくらいだ。

僕は結婚しているから好きだとか言うのはマズイと頭ではわかっているけど、好きなもんは好きなんだからしょうがないよね。

昨日だって裕子が怒ってもう会わないと言ったらどうしようと思ってほとんど寝れなかったんだから」


裕子は目をまん丸にして驚いている。


いくらなんでも言いすぎたか。怒っていないのがわかって安心

したのと、話をしているうちに興奮してきてしゃべりすぎた。


「ごめん、一人で興奮しちゃってバカみたいだね」


「ううん、感動しちゃった。なんか泣きそう」


そんなに喜んでくれるのならもっと早く言えばよかった。

でも今さらだけど言えてよかった。


「それで裕子は当時、僕のことをどう思ってたの?」


「そんなの恥ずかしくて言えないよ」


「僕にだけ言わせて自分は内緒なんてズルイじゃん」


「私も高一の時から一也を好きだったの。今も好きよ」


少し考えていたが恥ずかしそうに話してくれた。

裕美が言ってたとおりお互い好きだったんだ。

嬉しさとなにか後悔のような複雑な心境になった。


「写真を一緒に現像した三年生の時も好きでいてくれてたの?」  

    

「もちろん好きだったよ。もう三年だったでしょ、二学期からは

受験とか就職活動で忙しくなるから夏休みが最後のチャンスだと思って。

だから勇気をふり絞って声をかけたんだよ。

暗室で二人でいる間、ずっと心臓バクバクだったんだからね」


「マジで!?緊張しすぎてて全然気づかなかったよ」


「でしょ。だって私に一生懸命現像のやり方を教えていたもん」


20年前の僕は何をやってるんだ!

せっかくのチャンスだったのに。裕子も僕のことを好きだったのに。

二人っきりで暗室という密室にいたのになぜ告白しない!

しかも現像のやり方を教えているとかトンチンカンすぎる。


「どうしたの、下を向いちゃって」


「もうダメ、恥ずかしすぎて裕子の顔を見れない」


「今さら何を恥ずかしがってるのよ」


そう言われても顔をあげられない。自己嫌悪全開だ。

なんだか胸も異様に苦しくなってきた。


「いつまでも下を見てないで早く顔をあげて」


「無理!もう一生下を向いて裕子の顔は見ない」


「なにバカなことを言ってるの!ドンマイ、ドンマイ!」


本当にずっと下を見ているわけにもいかないのでおそるおそる

頭をあげた。身を乗り出していた裕子の顔が近い。


「じゃあ、立ち直るために一つだけお願いがあるんだけど

聞いてくれる?」


「お願い?私に出来ることだったらいいけど」


「裕子にしか出来ないことだよ」


「えっ?」


「あのさ・・・一回だけキスしていいかな?」


「ちょ、ちょっと何それ!?」


「やっぱダメかな、そういうの」


「ダメというか・・・そんなの聞くものじゃないでしょ」


「そうかもしれないけど自分に自信が無いんだ。

余計なことは覚えているのに肝心なことは忘れちゃってたし、裕子が僕のことを好きだというのも実感がわかない。

それに僕にはつ・・・」


「お互い好きなんだからね」


僕には妻がいる・・・そう言いかけたのを制止するように裕子は

ソファーから立ち上がった。

僕もつられて立ち上がり、ゆっくり裕子の両肩に手を添えた。


少し長めのキスをした。

そして抱き寄せると、遠慮がちに僕の腰に手をまわしてきた。


「心臓が口から飛び出しそうだ」                  


「私も自分の心臓の音が聞こえてる」


心臓の鼓動を体で感じる。だがそれが自分のか裕子のかはわからない。

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