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再会の日々 ~仕合わせ~  作者: マツバラ
15/20

15

「私ってママに似てると思わない?」


あっ、キスの話は終わったのか。ちょっと安心した。


「まぁ親子だから似ているところもあるよね」


「ママの若い頃の写真を見ると、自分じゃないかと思うほど

似ているのがあるんだ」


無意識だったけどそれで裕美が気になったくらいだから確かに

似ていると思う。でもカンのいい裕美にそれを気づかれると

まずいから似ているとはあまり言いたくない。


「見た目だけじゃなくて人の好みもそっくりなんだよ。

男の人でも女の人でも好みがほとんど一緒なの。

ママが気にいった人は私も気にいって、ママが苦手な人は

やっぱり私も苦手だったりするんだ」


「じゃあ、僕のこと気にいってる?」


「気にいってるよ!でも好きとは違うような気がする

けど、好きなような気もするし・・・よくわからない」


「ママとパパと同じ年だから3人目の親って感じかな」


「それもなんか違う気がするけど、一也と一緒にいるとなんか安心するの、話をしていてもすごく楽しいし。

あと、ママが好きな人だから二人を応援しているけど、ママと

あんまり仲良くなるとなんだか寂しいというか悔しいというか」


「ママを取られるような気になるんじゃないの?」


「そうかもしれないけど、そうじゃないような気もするし

やっぱわかんないや。だからキスして!」


「へぇっ!?」


まわり回ってキスに戻ってしまった。

もちろん女子高生に「キスして」と言われて嬉しくないわけがない。

しかしその女子高生はずっと好きな女性の娘なんだ。

もしキスをして、それが裕子にばれたらと想像すると・・・

いや、そんなの怖すぎて想像したくもない。


「そういうのはさ、本当に好きな人とするものでしょ」


「好きかどうかはわからないけど一也がいいの」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、なんか違うんじゃないかなぁ」


「キスなんて外国じゃ挨拶代わりなんだから」


「でもここは日本だよ」


17歳の女の子にキスを迫るおっさんならわかるが、逆という

のはなかなかないだろうな。でも正直なところ困ってしまう。


黙ったままこちらを見つめている裕美を眺めながら、機嫌を

損ねないで断る方法を考えている僕と、このままキスをして

しまおうかと考えている僕がいた。


裕美は暗い車内だと若い頃の裕子と区別がつかないほどだ。

まるで目の前にあの頃の裕子がいるみたいな気になってくる。


高校時代の裕子と今の裕美が徐々に重なっていく。

僕は無意識に裕美に近づいていた。

裕美もそれに気づいたのか座り直して体をこちらに向けた。

そしてゆっくり目を閉じる。


裕美の左肩に右手を置く、手に震えが伝わってきた。

さらに近づこうと右手に少しだけ力を入れた瞬間、ビクッと

体をこわばらせる。


その反応でふと我に返った。僕は何をしようとしているんだ。

目の前にいる女の子は裕子の娘なんだぞ。


「キスして」と言われたからといって「はい、そうですか」と

後先考えずにする相手ではない。

もう少しで取り返しのつかないことをしてしまうところだった。


でも今は「な~んちゃって」では済まない状況だ。

ベタだけど苦肉の策でおでこにキスをした。


「あれ、なにそれ」


おでこに手をやりながら、閉じていた目を開けた。


「希望どおりキスしたんだよ」


「こんなの全然違うよ~」


当然こういう反応になるだろうけど、まぁしょうがない。


「もう私のファーストキスだったのに」


だから体が少し震えていたのか。

ませた口をきくけど案外純粋なんだなとちょっと安心した。

というか、もしキスしちゃってたらヤバかった。


「そうなの?惜しいことをしちゃったかなぁ」


「じゃ、やり直そうよ」


そうだった、裕美はこういう返しをするんだ。


「だって帰らないといけないでしょ。ママに怒られるよ」


「ほんと一也って鈍感!信じらんない」


「しょうがないじゃん、そういう奴なんだからさ」


裕美は怒っているような呆れているような複雑な顔をする。


「まったく一也は鈍感で弱虫だし、ママは相手のことを気に

しすぎて本音を言わないし、もっと何とかすればいいのに!」


話がおかしな方向にいっている。それに弱虫とか言われてるし。


「どうしたの、何の話?」


「もっと自分が思っていることを言ったり、思っていることを

しなさいって話!」


「え~と、自分が思っているとおり正直に行動しろとかそんな

ことかな?」


「そう!私にもママにもね」


言いたいことはわからなくもないが、そんな本能のおもむくままに行動していたらメチャクチャになってしまうだろう。

裕美は可愛いし好みだから、キスしてなんて言われて正直嬉しい。


しかし裕子の娘にそういうことをするわけにはいかない。

いや、裕子の娘じゃなくても既婚者が同級生の娘にキスをする

なんて非常識だ。


高校生の裕美は社会的な責任も薄いから思っていることを言って

、思っているように動いてもいいのだろうが・・・

ちょっと違うな、僕が裕美と同じ頃はこんなんじゃなかった。

今以上に自分の気持ちをうまく言えなかったような気がする。


そうなると時代の違い、性別の違い、なにより性格の違いか。

そうだ、裕美と僕は性格が全然違うのだから考え方や行動の

仕方が違って当然だ。


「また余計なこと考えてるんでしょ」


「えっ、そんなことないよ」


図星だ、こいつエスパーか。

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