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超能力高校生探偵:白詰朔の幸福  作者: 正坂夢太郎
第一章 春!出会いの季節だよ!
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第六話 「1-E」


 その後、つつがなく入学式は終わり、俺たちは担任の先生引率のもと六陵一年生棟へやってきた。

 二階の1-E教室に入り、職員棟へ一旦戻って行った担任を待つことになった。俺が指定されていた出席番号順の机に座ると、前の席に座ってたやつが声をかけてきた。


「よぉ!ひさしぶりだなぁ!」


 そいつはへらへらと笑いながらそう言った。


「…誰だお前。久しぶりじゃなく、初対面だと思うが」

「オレは相模友久さがみともひさ! トモヒサと呼んでくれぇ!」


 そう言うとそいつは左手をバッと差し出してきた。アメリカンだな。


「……俺は白詰朔だ」


 俺が左手で握手しようとすると、相模は寸前で手を引っ込め、今度は右手を差し出した。


「よろしくシロサク! オレはいつかでっけぇアイドルになるのが夢なんだ! いつか、憧れのアイドルマスターに……オレはなる(倒置)!」


 なかなかにアクの濃いキャラクターだな。そして少しウザいな。


「まぁ、とりあえず、これから一年間よろしくな」


 俺が右手を出すと、相模はまた手を引っ込めた。


「そ~んな改まらなくっていいってぇ! お互い様だろぉ!?」


 相模はバシバシと俺の背中を叩いてきた。強い。叩くの強い。


「そんなことよりさ、このクラス、メチャ難易度高ぇよな!?」


 相模は声を上ずらせる。


「……何がだよ」

「女子だよ女子! 女子に決まってんだろ? カワイ娘ちゃんせ・い・ぞ・ろ・い! ウッヒョー、今年一年、楽しくなりそうだなぁ!」


 相模はそう言ってウヒョホホホと笑った。完全にただの変人だなコイツ。と思いつつ、俺はどんなやつらがこのクラスにいるのか確認するため、辺りを見回した。相模の言うとおり、結構レベルが高い、といえなくもない。よくみれば、さっきの新入生代表の子もいるじゃないか。ちょっとくせっぽい長く伸びた髪が、全体の印象を引き立てている。長身で美人なイマドキの女子、みたいな感じだ。さっそくクラスの中心になりそうな、気の強そうな女子たちと楽しそうに笑っている。御簾川…だっけか。モテそうなオーラがバンバン出まくってるが、俺はスレンダーが好みだ。


 そのとき、担任の先生が戻ってきた。横に一人、生徒を付き従えている。ぽわぽわの短髪の女子だ。先生の指示で俺たちはそれぞれの席に着いた。


「はーい皆さん、おはようございまーす、私は篠木しのぎつくねっていいます。気軽につくね先生って呼んでくださいねー」


 つくね先生はそう言うと、付き従えていた生徒を教壇に立たせた。


「この子は少し訳ありで……まあ詳しい話は本人からどうぞ!はい!」


 つくね先生はそう言って横に下がり、教室の隅の棚に腰かけた。ついて来ていた女子生徒は、きょろきょろと教室の中を見回した。教室中の視線がその生徒に集中する。


「あたしの名前は宗田栞そうだしおり…です。ちょっと訳あって、その…皆と一緒に授業は受けられないんですけど…このクラスの一員として、この学校に入学することになりました。これから一年間、よろしくお願いします…っ!」


 下に俯きながら、精一杯を振り絞ったような震えた声で、宗田さんはそう言った。かなり緊張しているのだろうか、顔が真っ赤になっている。パチパチパチ…とまばらな拍手が鳴り、宗田さんは先生に言われ、俺の後ろの席に座った。


「じゃあとりあえず、出席をとりますね~。相槌あいづちさーん……岩場下いわばった……さーん……」


 担任の先生が点呼を取り始めた。俺は何の気なしに、後ろの宗田さんに話しかけた。


「宗田さんってどっから来たの?」


 宗田さんはずっと俯いたまま、顔を下に向けて、上げようとしない。


「……」

「えーっとじゃあ、好きなテレビとか」

「…………」

「あ、好きな食べ物は?俺はらぁめんが好きなんだけど」

「……ラーメンはあたしも好き」


 宗田さんは俯いたままそう答えた。会話を広げる気配は無い。これはどうしたものか。


「どこから学校に通ってんの?俺は駅四つ向こうの吉舎布(きさふ)が最寄りなんだよ」


 宗田さんはピクッと反応したが、会話に起こすつもりはないらしい。俺はかり、と頭を掻き、そのときまだ俺が自己紹介をしていないことを思い出した。名も名乗らず宗田さんから話を聞き出そうとしていたとは、われながら愚かしい。


「そういや俺、自己紹介してなかったな。俺は白詰朔って言うんだ、よろしくな」


 宗田さんはその言葉を聞くやいなや、バッと顔を起こした。驚いたような、珍しいものをみたような、困惑と歓喜の混ざり合った瞳で、宗田さんは俺をみつめた。


「ど…どうした? 俺、何かまずいこと言ったか?」

「白詰朔…くん?」


 宗田さんはそう言って俺をみつめた。俺もつられて宗田さんの顔をみつめた。よく見ると、どこかで見たことがあるような気がする。最近、どこかで……


「あーーーーーッ!」


 俺は椅子から飛び上がり、そいつを指差して言った。


「あの時の…女子中学生!」


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