九、領民たちの生活
昼過ぎ、田邊は平吉と共に、領内の村を訪れた。
「田邊さん、村の様子も知っておいた方がいいです」
平吉の案内で、田邊は村を歩いた。
村は、想像以上に貧しかった。
家々は、すべて茅葺き屋根の粗末な造り。壁は土壁で、隙間も多い。
冬は、相当寒いだろう。
田んぼでは、農民たちが働いていた。
男も女も、腰をかがめて田植えをしている。
その表情は、疲れ切っていた。
「皆、大変そうだな」
田邊が呟くと、平吉は頷いた。
「そうですね。今年は雨が少なくて、作物の育ちが悪いんです」
「雨が少ない?」
「はい。このままだと、収穫が減ります。そうなると、年貢も払えなくなるかもしれません」
平吉の声には、不安が滲んでいた。
年貢—領主に納める税だ。
戦国時代、年貢は米や麦などの現物で納められた。
収穫の半分、あるいはそれ以上を納めることもあった。
もし収穫が減れば、年貢を納めた後、農民たちの手元にはほとんど何も残らない。
飢えることになる。
「それは……大変だな」
田邊は、言葉を失った。
現代日本では、飢えるということは、ほとんどない。
セーフティネットがあり、生活保護もある。
だが、この時代は違う。
飢饉が起きれば、人々は本当に飢え死にする。
それが、現実だった。
「殿も、心配しておられます。何とかしたいのですが……」
平吉は、複雑な表情を浮かべた。
領主も、万能ではない。
天候を変えることはできない。
収穫を増やす魔法もない。
領主ができることは、限られている。
田邊は、村を歩きながら考えた。
現代の知識を使えば、何かできることはないか。
灌漑の改善、肥料の改良、品種の選択。
農業技術を向上させれば、収穫を増やせるかもしれない。
だが、それには時間がかかる。
そして、領民たちの信頼を得なければならない。
よそ者の言うことを、簡単に信じてはくれないだろう。
「少しずつ、やっていくしかないな」
田邊は、心の中で呟いた。
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