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十四、村の寺子屋計画—教育の第一歩

新年から一週間後、紘一は教育の計画を実行に移し始めた。

まず、村に小さな寺子屋を作ることにした。寺子屋とは、子供たちに読み書きを教える場所だ。江戸時代には広く普及するが、この戦国時代には、まだほとんど存在しない。だが、紘一は、その重要性を理解していた。

教育は、未来への投資だ。今、子供たちに字を教えれば、二十年後、三十年後、この領地には字が読める大人が増える。それは、領地の発展に、大きく貢献するだろう。

だが、問題もあった。まず、場所だ。村には、適切な建物がない。次に、教師だ。字を教えられる人間が、ほとんどいない。そして、教材だ。紙も筆も墨も、すべて高価だ。

紘一は、これらの問題を、一つずつ解決していくことにした。

まず、場所だ。紘一は、村の長老である源蔵に相談した。源蔵の家を訪ねると、源蔵は以前よりずっと元気になっていた。まだ完全に回復したわけではないが、歩けるようになっている。

「田邊様、よくお越しくださいました」源蔵は、嬉しそうに出迎えた。

「源蔵さん、具合はいかがですか」

「おかげさまで、だいぶ良くなりました」源蔵は、微笑んだ。「もう少しで、畑仕事に戻れそうです」

「それは良かった。だが、無理はしないでくださいね」

「はい、分かっております」源蔵は、頷いた。「ところで、田邊様、今日は何か御用でしょうか」

「はい。実は、村に寺子屋を作りたいのです」紘一は、説明した。「子供たちに、字を教えたいと思っています」

源蔵の目が、明るくなった。「それは、素晴らしいことです」源蔵は、続けた。「字が読めれば、子供たちの未来が広がります」

「そうなんです。ですが、場所がなくて……」紘一は、困った顔をした。

源蔵は、少し考えてから言った。「村の西の端に、古いお堂があります」源蔵は、続けた。「もう何年も使われていませんが、修理すれば使えるかもしれません」

「本当ですか」紘一は、期待した。

「はい。見に行きましょう」

二人は、村の西へ向かった。雪道を、ゆっくりと歩く。源蔵は、まだ体力が完全には戻っていないので、時々休憩を取りながら進む。

やがて、小さなお堂が見えてきた。古い木造の建物で、屋根は茅葺き。壁は土壁だが、ところどころ崩れている。窓も、破れている。長年、放置されてきたことが分かる。

「これが、そのお堂です」源蔵が、言った。

紘一は、お堂に近づいた。中を覗くと、床は土間で、埃が積もっている。天井からは、蜘蛛の巣が垂れ下がっている。だが、構造自体はしっかりしているようだった。柱も梁も、腐っていない。

「修理すれば、使えそうですね」紘一は、言った。

「はい」源蔵も、頷いた。「屋根を葺き替えて、壁を塗り直して、床を整えれば、十分に使えるでしょう」

「では、これを寺子屋にしましょう」紘一は、決断した。

「ですが、修理には、お金がかかります」源蔵は、心配そうに言った。

「それは、私が何とかします」紘一は、答えた。実際には、広綱に相談して、領地の予算から出してもらうつもりだった。

その日の夕方、紘一は広綱に相談した。

「殿、村に寺子屋を作りたいのですが、修理費を出していただけますでしょうか」

広綱は、少し考えてから答えた。「いくらかかる」

「おそらく、米にして二十俵分くらいかと思います」紘一は、見積もった。

広綱は、頷いた。「分かった。出そう」広綱は、続けた。「だが、条件がある」

「何でしょうか」

「寺子屋では、子供だけでなく、大人も受け入れろ」広綱は、言った。「字を学びたい大人もいるはずだ」

「もちろんです」紘一は、嬉しくなった。広綱は、紘一の意図を完全に理解している。

「そして、もう一つ」広綱は、続けた。「教えるのは、お前だけか」

「はい。最初は、私一人で始めます」

「それでは、大変だろう」広綱は、心配した。「誰か、手伝いを見つけろ」

紘一は、考えた。誰か、字が読めて、教えるのが上手な人間。そんな人が、この領地にいるだろうか。

その時、紘一は思いついた。「広信様に、手伝っていただけないでしょうか」

広綱は、驚いた顔をした。「広信に?」

「はい」紘一は、説明した。「広信様は、字が読めます。そして、教えることで、広信様自身も学べます」紘一は、続けた。「領主として、領民と触れ合うことも大切です」

広綱は、しばらく考えていた。そして、頷いた。「なるほど。それは、良い考えだ」広綱は、微笑んだ。「広信にとっても、良い経験になるだろう」

こうして、寺子屋の計画が動き出した。


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