表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/174

十九、小山領到着—緊張の対面

午後、一行は小山領に到着した。

小山家の屋敷は、山の中腹にあった。

神崎家の屋敷よりさらに小さく、質素な造りだった。

石垣もなく、簡素な木の柵があるだけ。

建物も、古く、修繕が必要そうだった。

壁には、ところどころ穴が開いている。

屋根も、茅葺きだが、所々剥がれている。

経済的に厳しいことが、一目で分かった。

だが、周囲は木々に囲まれ、防衛には適している。

敵が攻めてくるには、急な山道を登らなければならない。

「到着しましたね」

伊藤が、言った。

「ああ」

紘一は、深呼吸をした。

これから、交渉が始まる。

成功すれば、戦いを避けられる。

失敗すれば、多くの命が失われる。

その責任が、紘一の肩にのしかかっていた。

一行は、屋敷の門の前で止まった。

門は、古い木の門だった。

塗装も剥がれ、木が腐りかけている。

門番が二人、立っていた。

どちらも、四十代くらいの男だった。

鎧は着ているが、古く、錆びている。

槍を持っているが、刃は鈍そうだった。

「神崎家の使者、田邊紘一と申します」

紘一は、門番に告げた。

「吉田殿にお会いしたい」

門番は、少し驚いた顔をした。

よそ者が、いきなり家老に会いたいと言ってきたのだ。

しかも、伊藤殿の手紙を持っているという。

「少々、お待ちください」

門番は、屋敷の中に駆けていった。

その足取りは、速い。

緊急の用件だと理解しているのだろう。

紘一は、待ちながら周囲を観察した。

屋敷の周りには、田畑が広がっている。

だが、その田畑も、あまり手入れされていないようだった。

雑草が生い茂り、畝も乱れている。

人手が足りないのだろう。

村も、貧しそうだった。

家々は小さく、壁は土壁だが、ひび割れている。

屋根も、茅葺きだが、古い。

子供たちが、道端で遊んでいる。

だが、その体は痩せていて、栄養不足が伺える。

服も、ぼろぼろだ。

継ぎ接ぎだらけで、汚れている。

「この領地も、苦しいんだな……」

紘一は、心の中で呟いた。

小山領の経済的困窮が、目に見えて分かる。

これでは、戦争などできるはずがない。

しばらくして、門番が戻ってきた。

その後ろには、一人の男が歩いてきた。

五十代くらいの、穏やかな顔をした男だった。

髪には白いものが混じり、顔には深い皺が刻まれている。

だが、目には優しさがあった。

質素な着物を着ているが、清潔で、きちんと整えられている。

その姿勢は、真っ直ぐで、品がある。

「これは、伊藤殿。久しぶりです」

男が、声をかけた。

その声は、温かく、穏やかだった。

「吉田殿、お久しぶりです」

伊藤は、馬から降りて頭を下げた。

「手紙、受け取りました」

吉田は、微笑んだ。

その笑顔は、心からのものだった。

作り笑いではない。

本当に、伊藤との再会を喜んでいる。

「よくぞ、来てくださいました」

「こちらが、田邊紘一殿です」

伊藤が、紘一を紹介した。

「田邊紘一……噂は聞いております」

吉田は、紘一を興味深そうに見た。

その目は、観察している。

だが、敵意はない。

ただ、興味と好奇心がある。

「松永を破った知恵者と」

「過分なお言葉です」

紘一は、馬から降りて頭を下げた。

深く、丁寧に。

使者としての礼儀を、きちんと示す。

「今日は、重要なお話があって参りました」

「承知しております」

吉田は、頷いた。

「伊藤殿の手紙で、大体のことは理解しています」

吉田は、周囲を見回した。

屋敷の中から、何人かの兵が様子を伺っている。

その目は、警戒している。

よそ者に対する、自然な警戒心だ。

「ここでは何ですので、中へどうぞ」

「ありがとうございます」

一行は、屋敷の中に案内された。

門をくぐると、中庭があった。

だが、その中庭も、手入れが行き届いていない。

雑草が生え、石畳も苔むしている。

建物も、古く、修繕が必要そうだった。

壁には、ひび割れがある。

柱も、虫食いの跡がある。

「お金がないんだな……」

紘一は、改めて実感した。

小山領の経済的困窮を。

これでは、戦争など、夢物語だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ