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三十五、勝利の代償

その日の午後、田邊は一人、川のほとりに座っていた。

戦場から少し離れた場所だ。

清流が流れ、鳥がさえずっている。

平和な風景だった。

だが、田邊の心は、平和ではなかった。

川の水で、血まみれの手を洗う。

冷たい水が、手を流れる。

血が、水に溶けて流れていく。

だが、罪は流れない。

「俺は、人を殺した……」

田邊は、呟いた。

二人。

いや、もっとかもしれない。

混戦の中で、何人斬ったか分からない。

彼らにも、家族がいただろう。

帰りを待つ人がいただろう。

だが、もう帰れない。

田邊が、殺したから。

「これが、戦国時代か……」

田邊は、空を見上げた。

青い空が、広がっている。

この空は、現代の空と同じだ。

だが、この地上は、全く違う。

人が人を殺し合う。

それが当たり前の世界。

「俺は、この世界で生きていけるのか……」

田邊は、自問した。

答えは、分からない。

だが、一つだけ確かなことがある。

今日、田邊は生き延びた。

そして、神崎家を守った。

それだけは、確かだ。

「一歩ずつ、だな」

田邊は、立ち上がった。

一歩ずつ、この世界に適応していく。

それしか、できることはない。



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