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三十四、松永の降伏

松永久秀は、神崎軍に捕らえられ、広信の前に引き出された。

かつて威勢の良かった男は、今は惨めな姿だった。

鎧は血で汚れ、顔には恐怖が浮かんでいる。

手は縛られ、地面に膝をついている。

「松永久秀」

広信が、冷たい声で言った。

若き当主の声には、初陣とは思えない威厳があった。

「お前は、我が領地を侵略しようとした」

「申し訳ございません!」

松永は、地面に頭をこすりつけた。

かつての野心家の姿は、どこにもなかった。

「どうか、命だけはお助けください!」

広信は、刀の柄に手をかけた。

「お前を、ここで斬ってもいい」

「お許しを、お許しを!」

松永は、必死に懇願した。

商人あがりからだろうか武士としての誇りはそこには見られなかった。

「私には、家族がおります。妻も、子もおります。どうか、命だけは!」

広信は、田邊を見た。

田邊は、小さく頷いた。

二人は、事前に相談していた。

松永を殺すのは簡単だ。だが、それは得策ではない。

「松永」

広信は、刀から手を離した。

「お前の命は助けてやる」

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

「だが、条件がある」

「何なりと!」

「今日から、お前は神崎家に従え。お前の領地も、兵も、すべて神崎家のものとなる」

松永の顔が、一瞬強張った。

領地を失う。

それは、武士としての地位を失うことを意味する。

だが、命には代えられない。

松永は、深く頭を下げた。

「承知いたしました。喜んで、お仕えします」

「よし。では、誓いを立てろ」

松永は、その場で誓いを立てた。

「私、松永久秀は、この日より神崎家に忠誠を誓います。領地も、兵も、すべてを捧げます。もしこの誓いを破れば、天罰を受けても構いません」

こうして、神崎家は松永領を吸収した。

領地は倍になり、兵力も一気に増えた。

田邊の策は、完全な成功を収めた。



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