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二十一、斥候の準備

会議が終わった後、田邊は佐々木に声をかけた。

「佐々木殿、斥候のことで相談があります」

「何でしょう」

佐々木は、三十代半ばの精悍な男だった。

斥候を統括するだけあって、目が鋭く、動きも機敏だった。

「松永軍の動きを探る際、どのような情報が必要か、詳しく教えていただけますか」

「もちろんです」

二人は、屋敷の隅の静かな場所で話し始めた。

「まず、兵力の正確な数。それから、武装の状態。騎馬はいるか、弓兵はどれくらいいるか」

佐々木は、指を折りながら説明した。

「そして、最も重要なのが、移動ルートです」

「移動ルート、ですか」

「はい。敵がどの道を通ってくるか。それが分かれば、待ち伏せの場所を決められます」

田邊は、頷きながらメモを取った。

いや、メモではない。この時代、紙は貴重品だ。

田邊は、頭の中で情報を整理していた。

不思議なことに、一度聞いた情報は、完璧に記憶できた。

これも、能力の一つなのだろうか。

「佐々木殿、もう一つお聞きしたいのですが」

「何でしょう」

「斥候は、どれくらいの距離まで偵察できますか」

「そうですね……片道一日の距離までは可能です」

「ということは、敵の動きを知ってから、こちらが準備する時間は……」

「二日、というところでしょうか」

田邊は、計算した。

二日あれば、谷に罠を仕掛けることができる。

丸太や石を準備し、伏兵の位置を決める。

ギリギリだが、可能だ。

「分かりました。では、すぐに斥候を出してください」

「承知しました」

佐々木は、立ち上がった。

「田邊殿」

「はい」

「あなたの策、信じています」

佐々木の言葉に、田邊は頭を下げた。

「ありがとうございます」

佐々木が去った後、田邊は一人、考え込んだ。

自分は、本当にこれでいいのか。

命を賭けると言ってしまった。

もし失敗すれば、死ぬ。

だが、今さら後戻りはできない。

「やるしかない」

田邊は、拳を握りしめた。


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