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十九、松永の決断
その日の夕方、松永久秀のもとに、斥候から報告が入った。
「殿、確認しました。神崎広綱は、中風で倒れたそうです」
「ほう」
松永の目が、危険な光を放った。
「意識は?」
「ないそうです。医者も、回復は難しいと」
「よし」
松永は、立ち上がった。
「好機だ。すぐに兵を集めろ」
「はっ!」
家臣たちが動き始めた。
だが、年配の山田だけが、まだ不安そうな顔をしていた。
「殿、本当によろしいのですか」
「何を案じている、山田」
「神崎家には、あの奇妙な男がいます。もし、その男が何か策を……」
「たかが一人の男だ」
松永は、断言した。
「どんな知恵者でも、兵力の差は覆せぬ。我らが百五十で攻めれば、神崎家など簡単に潰せる」
「ですが……」
「案ずるな。三日後、我らは神崎領を手に入れる」
松永は、自信に満ちていた。
だが、この自信が、後に松永を破滅へと導くことになる。




