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四、医療改革の展開—宗安の弟子と巡回医療網

夏が深まった頃、紘一は医療改革にも本格的に着手した。

神崎領では、宗安医師による週一回の巡回診療が定着していた。

そして、紘一が密かに提供している薬草のおかげで、多くの患者が助かっていた。

だが、美濃全域に医療を広げるには、医師が足りなかった。

宗安一人では、限界がある。

紘一は宗安を訪ねた。

「先生、相談があります」

宗安は、いつものように穏やかに迎えてくれた。

「何でしょうか、田邊殿」

「美濃全域に、医療を広げたいのです」紘一は説明した。

「ですが、医師が足りません」

宗安は、頷いた。「その通りですな。医師は、少ない」

「先生、弟子を育てることはできますか」

宗安は、少し考えてから、答えた。

「できないことはありません」宗安の声が、慎重になった。

「ですが、医師を育てるには、時間がかかります」

「どれくらいですか」

「完全に一人前になるには、十年ほど」宗安は、答えた。

「ですが、基本的な治療ができるようになるには、三年ほどでしょうか」

紘一は考えた。

三年。それでも、長い。

だが、始めなければ、永遠に医師は増えない。

「では、弟子を取ってください」紘一は頼んだ。

「そして、基本的な治療を教えてください」

宗安は、頷いた。

「分かりました。やってみましょう」

紘一は美濃各地から、医療を学びたい者を募集した。

条件は、三つ。

一つ、二十歳から三十歳まで。

若く、体力がある者。

二つ、字が読める者。

医学書を読む必要があるからだ。

三つ、人々を助けたいという強い意志を持つ者。

募集の知らせは、美濃全域に広がった。

そして、二ヶ月後、十五名の応募者が集まった。

紘一と宗安は、面接を行った。

応募者たちは、様々な背景を持っていた。

ある者は、家族を病気で亡くした経験から、医師になりたいと思った。

ある者は、字を学んだ後、もっと人の役に立ちたいと考えた。

ある者は、単純に、医療という仕事に興味を持った。

面接の結果、十名が選ばれた。

その中には、女性も二名いた。

一人は、名をお絹という二十五歳の女性。

夫を病気で亡くし、同じ苦しみを他の人に味わわせたくないと考えていた。

もう一人は、名をお春という二十二歳の女性。

寺子屋で字を学び、さらに学びたいと思っていた。

宗安は、最初、女性の弟子を取ることに躊躇した。

「女性の医師など、聞いたことがありません」

だが、紘一は説得した。

「先生、女性だからこそ、できることもあります」紘一は説明した。

「特に、女性や子供の患者は、女性の医師の方が安心するかもしれません」

宗安は、考えてから、頷いた。

「確かに、その通りですな」

こうして、十名の弟子たちの訓練が始まった。

訓練は、厳しかった。

朝早くから、夜遅くまで、学び続ける。

解剖学、薬学、診断法、治療法。

すべてを、宗安から学ぶ。

そして、実践訓練も行う。実際の患者を診る。

宗安の指導の下で、診察し、薬を処方する。

最初は、失敗もあった。

診断を間違えたり、薬の量を間違えたり。

だが、宗安は、厳しく、そして優しく指導した。

「失敗から学びなさい」宗安は、言った。

「ですが、同じ失敗を繰り返してはいけません」

弟子たちは、必死に学んだ。

そして、一年が経った頃、弟子たちは、基本的な治療ができるようになっていた。

紘一は彼らを美濃各地に配置した。

各領地に、一名ずつ。そして、定期的に巡回診療を行う。

お絹は、遠藤の領地へ。

お春は、斎藤利三の領地へ。

他の弟子たちも、それぞれの場所へ。

そして、宗安を中心とした医療ネットワークが、美濃全域に広がり始めた。

定期的に、弟子たちは宗安のところへ戻り、報告し、さらに学ぶ。

困難な症例があれば、宗安に相談する。

こうして、美濃の医療は、徐々に改善されていった。


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