三、寺子屋の拡大—教師育成と教育の普及
初夏に入った頃、紘一は教育改革にも着手した。
神崎領の寺子屋は、順調に運営されていた。
生徒数は、八十名を超えていた。そ
して、その中から、優秀な生徒が育っていた。
紘一はその優秀な生徒たちを、教師として育成することにした。
候補者は、五名だった。
清次—十三歳。最も優秀な生徒。
読み書きだけでなく、算術にも長けている。
吉松—太郎の息子、十歳。真面目で、努力家。
お光—十二歳の少女。
理解力が高く、優しい性格。
健太—十一歳。
元気で、年下の子供たちの面倒見が良い。
次郎の息子、小次郎—九歳。若いが、非常に聡明。
紘一はこの五名を集めて、教師育成プログラムを始めた。
「皆さん、これから、教師になるための訓練を始めます」紘一は五名の前で言った。
子供たちは、緊張した顔で聞いていた。
「教師とは、何でしょうか」紘一は問いかけた。
清次が、手を挙げた。「人に、字を教える人です」
「それも正しいですが、それだけではありません」紘一は続けた。
「教師とは、人を導く人です」
紘一は説明した。
「字を教えることは、手段です」紘一の声が、真剣になった。
「本当の目的は、人が成長することを助けることです」
子供たちは、真剣に聞いていた。
「では、人が成長するために、何が必要でしょうか」
お光が、答えた。「知識、ですか」
「そうです。知識も必要です」紘一は頷いた。
「ですが、それだけではありません」
紘一は続けた。
「思いやりも必要です。努力する心も必要です。そして、夢を持つことも必要です」
紘一は子供たちを見回した。
「教師とは、それらすべてを教える人です」
訓練は、数ヶ月続いた。
子供たちは、教え方を学んだ。どうすれば、分かりやすく説明できるか。
どうすれば、生徒のやる気を引き出せるか。
そして、実践訓練も行った。実際に、年下の生徒たちに字を教える。
最初は、うまくいかなかった。
清次は、説明が難しすぎた。
自分が理解していることを、そのまま説明しようとして、生徒が理解できなかった。
吉松は、緊張して、声が小さくなった。
生徒たちが、聞き取れなかった。
お光は、優しすぎて、生徒が甘えてしまった。
真剣に勉強しなくなった。
だが、紘一は一人一人に助言した。
「清次、もっと簡単な言葉で説明してください」
「吉松、大きな声で。自信を持って」
「お光さん、優しさと厳しさの、バランスが大切です」
子供たちは、徐々に成長していった。
そして、三ヶ月後、五名とも、一人前の教師になった。
紘一は五名を集めて、言った。
「皆さん、よく頑張りました」紘一は微笑んだ。
「これから、それぞれの場所で、教師として働いてもらいます」
子供たちは、緊張した顔をした。
「清次は、遠藤様の領地へ」紘一は発表した。
「そこで、寺子屋を開いてください」
清次は、深く頭を下げた。「承知しました」
「吉松は、神崎領の第二寺子屋を担当してください」
「はい」
「お光さんは、斎藤利三様の領地へ」
「はい」
こうして、五名の若き教師たちは、それぞれの場所へ旅立った。
紘一は彼らを見送りながら、思った。
教育は、時間がかかる。だが、確実に、未来を変える。
この子供たちが、さらに多くの子供たちを教える。
そして、その子供たちが、また次の世代を教える。
そうやって、知識が広がっていく。
それが、紘一の願いだった。




