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二、農業改革の拡大—各領地への普及と抵抗

春が訪れた。1533年の春だった。

紘一は美濃各地を回り始めた。

農業改革を広めるためだった。

最初に訪れたのは、東方会合で説得した遠藤慶隆の領地だった。

遠藤の領地は、美濃の東部にあった。

山がちな地形で、田んぼは少ない。

だが、遠藤は、領地を丁寧に治めていた。

遠藤の屋敷に到着すると、遠藤自身が出迎えてくれた。

「田邊殿、ようこそ」遠藤の声は、穏やかだった。

「お待ちしておりました」

「遠藤様、お久しぶりです」

二人は、屋敷の中で話をした。

「田邊殿、間断灌漑について、教えていただけると聞きました」

遠藤は、興味深そうに言った。

「はい」紘一は頷いた。

「神崎領では、大成功を収めました。

遠藤様の領地でも、きっとうまくいきます」

「ですが」遠藤は、少し不安そうだった。

「我が領地は、山がちです。田んぼも少ない」

「それでも、できます」紘一は励ました。

「むしろ、水の管理がしやすい地形かもしれません」

紘一は遠藤の領地の田んぼを見て回った。

確かに、山がちで、田んぼは小さい。

だが、水は豊富だった。山からの湧水が、田んぼに流れ込んでいる。

「これなら、間断灌漑に最適です」紘一は確信した。

紘一は遠藤の家臣たちと農民たちを集めて、説明会を開いた。

最初、農民たちは半信半疑だった。

「水を抜くなんて……」

「稲が枯れるんじゃないか」

様々な不安の声が上がった。

だが、紘一は丁寧に説明した。

神崎領での成功例を示し、具体的な方法を教えた。

そして、遠藤自身が前に出た。

「皆、田邊殿を信じよう」遠藤の声は、穏やかだが、説得力があった。

「田邊殿は、道三様が信頼する方だ」遠藤は、続けた。

「そして、神崎領では、本当に収穫が倍になったそうだ」

農民たちは、領主の言葉に、少しずつ納得していった。

「分かりました。やってみます」

こうして、遠藤領でも、間断灌漑が始まった。

次に訪れたのは、斎藤利三の領地だった。

斎藤利三は、野心的な男だった。

西方会合で説得した時も、利益を前面に出して説得した。

斎藤の屋敷に到着すると、斎藤は歓迎してくれた。

「田邊殿、来てくれたか」斎藤の声は、力強かった。

「待っていたぞ」

「斎藤様、お久しぶりです」

「早速だが、間断灌漑を教えてくれ」斎藤は、せっかちだった。

「収穫が増えるんだろう。早く始めたい」

紘一は微笑んだ。斎藤の性格は、分かりやすい。

利益になることなら、すぐに飛びつく。

紘一は斎藤領でも説明会を開いた。

ここでは、農民たちの反応が違った。

領主の斎藤が、強く推奨したからだ。

「やれ」斎藤は、命令口調だった。

「収穫が増えれば、お前たちの生活も良くなる」

農民たちは、領主の命令に従った。

こうして、斎藤領でも、間断灌漑が始まった。

だが、すべてが順調だったわけではない。

ある領地では、強い抵抗に遭った。

領主の名を大野という、保守的な老人だった。

大野は、東方会合には参加していなかった。

小さな領主で、道三の同盟に渋々参加した男だった。

大野の屋敷を訪ねた時、大野は不機嫌そうだった。

「田邊とやら、何の用だ」大野の声は、冷たかった。

「道三様の命により、農業改革をお伝えに参りました」

「農業改革?」大野は、鼻で笑った。

「余計なことだ」

「ですが、収穫が増えます」

「増えるわけがない」大野は、断言した。

「我が領地では、代々、同じやり方で稲を育ててきた」大野の声が、強くなった。

「それで十分だ。新しいやり方など、必要ない」

紘一は説得を試みた。だが、大野は頑固だった。

「帰ってくれ」大野は、最終的に言った。

「我が領地で、余計なことはするな」

紘一は仕方なく、大野の領地を後にした。

だが、諦めなかった。

紘一は道三に報告した。

「大野が、協力を拒否しています」

道三は少し考えてから、答えた。

「無理強いはするな」道三の声は、冷静だった。

「大野は、頑固な男だ。説得しても、無駄だろう」

「ですが……」

「他の領地で成功すれば、大野も変わる」道三は続けた。

「結果を見せることが、最良の説得だ」

紘一はその通りだと思った。

こうして、紘一は美濃各地を回り続けた。

協力的な領主、半信半疑の領主、抵抗する領主。様々な反応があった。

だが、徐々に、間断灌漑は広がっていった。


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