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第六章 新たな時代

一、美濃統一後の展開—道三の野望と紘一の役割

新年を迎えて数日後、紘一は道三から稲葉山城への召喚を受けた。

「美濃統一顧問として、本格的に動いてもらう」

そう書状に記されていた。

紘一は広綱に報告した後、稲葉山城へ向かった。

今回は、広信も同行した。

広信の教育の一環として、道三との会議を見学させるためだった。

稲葉山城に到着すると、紘一たちは道三の執務室に案内された。

執務室には、道三だけでなく、稲葉一鉄、そして他の重臣たちも揃っていた。

「田邊、よく来た」道三は紘一を見て微笑んだ。

「そして、広信も。成長したな」

「ありがとうございます、道三様」広信は深く頭を下げた。

道三は紘一と広信に席を勧めた。

「田邊、美濃は統一された」道三は口を開いた。

「だが、それは終わりではない。始まりだ」

紘一は道三の言葉を聞いていた。

「統一された美濃を、どう治めるか」道三の目が、鋭くなった。

「それが、今後の課題だ」

道三は地図を広げた。美濃全域の地図だった。

「美濃には、約三十の領主がいた」道三は説明した。

「そのすべてが、今、わしの同盟者となった」道三は続けた。

「だが、彼らを統治するのは、容易ではない」

稲葉一鉄が、口を開いた。

「それぞれの領主が、それぞれの利害を持っています」稲葉の声は、現実的だった。

「それらを調整し、美濃全体の利益にするのは、困難です」

道三は頷いた。「だからこそ、田邊の力が必要だ」

道三は紘一を見た。

「田邊、お前に、美濃全域の内政改革を任せたい」

紘一はその重責に驚いた。

「美濃全域の、ですか」

「そうだ」道三は頷いた。

「お前が神崎領で成功させた改革を、美濃全体に広げてほしい」

道三は具体的に説明した。

「農業改革、教育改革、医療改革」道三は指を折りながら言った。

「それらを、美濃全域で実施する」

「ですが、それには……」紘一は困難を想像した。

「莫大な費用がかかる。分かっている」道三は先回りして答えた。

「だが、今年の豊作で、美濃全体の税収が増えた」道三は続けた。

「その増収分を、改革に投資する」

道三は紘一を真っ直ぐ見た。

「美濃を、日本で最も豊かな国にする」道三の声には、野心があった。

「それが、わしの目標だ」

紘一は道三の野心を感じた。

だが、同時に、その野心が人々の幸せにつながるなら、悪くないとも思った。

「承知しました」紘一は答えた。

「最善を尽くします」

道三は満足そうに頷いた。

会議は、数時間続いた。

具体的な計画が、次々と話し合われた。

農業改革はまず主要な十の領地で試験的に実施する。

成功すれば、全域に拡大する。

教育改革は、各領地に寺子屋を設立する。

教師は、神崎領の寺子屋で育成する。

医療改革は各地に医師を配置し、定期的な巡回診療を行う。

すべてが、大規模な計画だった。

会議が終わった後、道三は紘一と二人きりになった。

「田邊」道三が真剣な顔で言った。

「わしには、もう一つの目標がある」

「何でしょうか」

「織田信秀だ」道三は窓の外を見た。

「尾張の織田信秀。彼は、強大な勢力を持っている」

紘一は織田信秀の名を聞いて、緊張した。織田信長の父だ。

「信秀は美濃を狙っている」道三は続けた。

「これまで、何度も美濃に攻め込んできた」道三の声が、厳しくなった。

「だが、今、美濃は統一された。もう、内部で争っている場合ではない」

道三は紘一を見た。

「織田家との戦いが、始まる」道三の目には、決意があった。

「だが、わしは、できれば戦いたくない」

「戦いたくない、ですか」

「ああ」道三は頷いた。

「戦えば、兵が死ぬ。領民が苦しむ」道三は続けた。

「そして、せっかく統一した美濃が、再び乱れる」

道三は紘一に近づいた。

「だから、お前の力を借りたい」道三の声は、真剣だった。

「織田家との和睦を、成立させてほしい」

紘一はその難題に驚いた。

「織田家との、和睦ですか」

「そうだ」道三は断言した。

「戦わずして、織田家と協力関係を築く」道三の目が、輝いた。

「それができれば、美濃と尾張は、共に繁栄できる」

紘一は考えた。織田信秀との和睦。それは、可能なのだろうか。

だが、道三は本気だった。

「時間はかかるだろう」道三は続けた。

「だが、お前なら、できる」

紘一は深く息をついた。

「やってみます」紘一は答えた。

「ですが、時間がかかることを、ご了承ください」

「もちろんだ」道三は微笑んだ。

「焦らなくていい。じっくりと、進めてくれ」

その日の夕方、紘一と広信は稲葉山城を後にした。

帰路、広信が口を開いた。

「田邊さん、すごい役目を任されましたね」

「ああ」紘一は頷いた。

「正直、重すぎる」

「ですが、田邊さんなら、できると思います」広信の声には、確信があった。

紘一は広信を見た。

「広信様も、手伝ってくれますか」

「もちろんです」広信は即座に答えた。

「俺も、美濃のために働きたいです」

紘一は微笑んだ。

「ありがとうございます」

二人は、神崎領へ向かった。

新しい挑戦が、始まろうとしていた。


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