十一、道三の評価—神崎家の地位向上と新たな責任
十一月に入った頃、道三から招待状が届いた。
稲葉山城で、美濃統一を祝う宴が開かれる。
主要な同盟者たちを招待するとのことだった。
神崎家からは、広綱と紘一が招待された。
宴の日、二人は稲葉山城へ向かった。
城内には、多くの領主たちが集まっていた。
東方会合で説得した三人、西方会合で説得した五人、そして他にも何人かの領主たち。
総勢で二十人ほどの領主が、ここに集まっていた。
大広間は、豪華に飾られていた。
美しい屏風、立派な調度品、そして豪華な料理。
道三の力を示すような、圧倒的な空間だった。
道三が上座に座っていた。
その隣には、稲葉一鉄が座っている。
やがて、道三が立ち上がった。
「皆、よく集まってくれた」道三の声が、広間に響いた。
「今日は、美濃統一を祝う宴だ」
領主たちから、拍手が起こった。
「長年、美濃は争いが続いていた」道三は続けた。
「だが、今、我らは一つになった」道三の目が、輝いた。
「美濃は、統一された」
拍手が、さらに大きくなった。
「これも、皆の協力のおかげだ」道三は領主たちを見回した。
「特に、ある男の働きが、大きかった」
道三は紘一を見た。
「田邊紘一だ」
広間の視線が、一斉に紘一に向いた。
「田邊、前へ」
紘一は立ち上がって、前に出た。
「田邊は東方会合で三人の領主を説得した」道三は説明した。
「そして、西方会合で五人の領主を説得した」道三の声が、力強くなった
。「その手腕は、見事だった」
道三は紘一の前に立った。
「田邊、お前の働きに感謝する」道三は懐から何かを取り出した。
それは、立派な刀だった。
美しい拵えの刀で、鞘には金の装飾が施されている。
「これを、お前に与える」道三は刀を紘一に渡した。
紘一は驚いた。刀は、この時代、非常に貴重なものだった。
特に、これほど立派な刀は。
「ありがたく、頂戴いたします」紘一は深く頭を下げた。
「そして、もう一つ」道三は続けた。
「神崎家に、新たな領地を与える」
広間が、ざわめいた。
広綱も、驚いた顔をした。
「神崎領の東に、小さな村がある」道三は説明した。
「その村を、神崎家の領地とする」道三は続けた。「約二百石分だ」
広綱は立ち上がって、深く頭を下げた。
「ありがとうございます、道三様」
二百石。それは、神崎家にとって、大きな増加だった
。元々約千石の領地が、千二百石になる。
「これからも、頼む」道三は紘一と広綱を見た。
「美濃の発展のために」
「はい」二人は、答えた。
宴が始まった。
料理が配られ、酒が注がれる。
領主たちは、食べ、飲み、笑った。
紘一は様々な領主から声をかけられた。
「田邊殿、素晴らしい働きでしたな」
「あなたの説得術には、感心しました」
賞賛の言葉が、次々と飛んできた。
だが、紘一は謙虚に答えた。
「皆様のご協力があってこそです」
宴の途中、道三が再び紘一を呼んだ。
二人は、静かな部屋に移動した。
「田邊」道三が口を開いた。
「お前に、新しい役職を与えたい」
「役職、ですか」
「ああ」道三は頷いた。
「美濃統一顧問、という役職だ」
紘一は驚いた。
「具体的には、美濃全体の政策について、わしに助言をしてほしい」道三は説明した。
「外交、内政、経済。すべてについてだ」
紘一はその重責を感じた。
「ですが、私は神崎家の家臣です」
「分かっている」道三は頷いた。
「だから、神崎家の立場で、助言してくれればいい」道三は続けた。
「お前の領地経営の経験は、貴重だ。それを、美濃全体に広げたい」
紘一は考えた。これは、大きな責任だ。
だが、同時に、大きな機会でもある。
もし、美濃全体の政策に影響を与えられるなら、もっと多くの人々を助けられる。
「承知しました」紘一は答えた。
道三は満足そうに頷いた。
「よし。では、頼む」
こうして、紘一は新しい役割を担うことになった。
美濃統一顧問。それは、紘一にとって、新しい挑戦だった。




