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十四、日常の中の小さな改善
翌日、田邊は平吉に提案した。
「平吉さん、ちょっと相談があるんだけど」
「何ですか、田邊さん」
「食事のことなんだけど、少し工夫できないかな」
田邊は、慎重に言葉を選んだ。
いきなり大きな変化を提案しても、受け入れられないだろう。
小さなことから、少しずつ。
「例えば、粥に豆を入れるとか」
「豆、ですか?」
「ええ。大豆を煮て、粥に混ぜる。そうすれば、栄養も増えるし、少し味も変わる」
平吉は、考え込んだ。
「でも、豆は貴重ですよ。そんなに使えるかどうか……」
「少しでいいんだ。一人当たり、ひとつかみ程度でも、全然違う」
田邊は、粘り強く説明した。
「豆には、体を強くする力がある。病気にもかかりにくくなる」
「本当ですか」
「ああ。俺の……記憶がないけど、なぜかそういう知識だけはあるんだ」
平吉は、しばらく考えてから頷いた。
「分かりました。殿に相談してみます」
「ありがとう」
これが、田邊の最初の小さな改善だった。




