八、会合後の疲労—広信の学びと紘一の限界
会合が終わった後、紘一は激しい疲労を感じていた。
五人の領主を同時に説得する。
それぞれに異なるアプローチをする。
常に集中し、適切な言葉を選び、タイミングを計る。
精神的な疲労が、体に蓄積していた。
紘一は自分の部屋に戻ると、床に倒れ込んだ。
「疲れた……」
しばらく、動けなかった。
その時、扉がノックされた。
「田邊さん、大丈夫ですか」広信の声だった。
「ああ、入ってくれ」
広信が入ってきた。その顔には、心配があった。
「田邊さん、顔色が悪いです」
「大丈夫だ。少し疲れているだけだ」
広信は紘一の隣に座った。
「田邊さん、今日の会合、素晴らしかったです」広信の声には、感動があった。
「五人の領主、それぞれに異なる説得方法を使いました」
「見ていてくれたのか」
「はい」広信は頷いた。
「稲葉様には、具体的な利益を示しました。
斎藤様には、野心を満たす方法を提示しました。
竹中様には、安定を約束しました」広信は続けた。
「池田様には、正義と大義を説きました。そして、
不破様には、形式的な独立を保証しました」
広信の目は、輝いていた。
「それぞれが求めるものを理解し、それを満たす方法を提示する」広信は感心したように言った。
「これが、外交なんですね」
「その通りだ」紘一は微笑んだ。
「俺も、いつか、田邊さんのようになりたいです」広信の声には、決意があった。
「広信様なら、必ずなれます」紘一は励ました。
だが、同時に、紘一は自分の限界も感じていた。
交渉のたびに、激しい疲労を感じる。
このペースで続けていけば、いつか倒れるかもしれない。
「広信様」紘一は言った。
「次の交渉からは、広信様も実際に話してみてください」
広信は驚いた顔をした。
「俺が、ですか」
「はい」紘一は頷いた。
「今日、観察して学びました。次は、実践です」
広信は不安そうな顔をした。
「ですが、俺にできるでしょうか」
「できます」紘一は断言した。
「私が、隣で支えます」
広信は深く頷いた。
「分かりました。頑張ります」
その夜、紘一は一人、部屋で考えていた。
自分一人では、限界がある。
もっと、協力者を育てなければならない。
広信、平吉、そして寺子屋の優秀な生徒たち。
彼らを育て、神崎家の未来を支える人材にする。
それが、今の紘一の課題だった。




