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六、道三からの新たな使命—美濃統一への加速

収穫祭の数日後、再び斎藤家から使者が訪れた。

今回も稲葉一鉄だった。

だが、その表情は、いつもより深刻だった。

紘一が広間に呼ばれると、稲葉はすでに広綱と話をしていた。

「田邊殿」稲葉が、紘一を見た。

「道三様から、緊急の要請がある」

「緊急の、ですか」

「そうだ」稲葉は、書状を取り出した。

「道三様は、近く、西の領主たちとの大規模な会合を開く」稲葉の声が、重くなった。

「これは、美濃統一の最終段階だ」

紘一は緊張した。

最終段階。

それは、重要な会合だということだ。

「その会合に、お前の参加を求めている」稲葉は、続けた。

「西の領主たちは、まだ道三様の傘下に入っていない。

彼らを説得し、同盟に引き込む。それが、お前の役目だ」

紘一は考えた。西の領主たち。

おそらく、複数の領主を同時に説得しなければならない。

「何名の領主ですか」

「五名だ」稲葉は、答えた。

五名。それは、東方会合の時よりも多い。

難易度が高い。

「会合は、十日後だ」稲葉は、続けた。

「それまでに、準備をしてくれ」

稲葉が去った後、紘一は広綱と二人きりになった。

「田邊、どう思う」広綱が、尋ねた。

「難しい任務です」紘一は正直に答えた。

「五名の領主を同時に説得する。それぞれが、異なる利害を持っているでしょう」

「だが、断れないな」

「はい」紘一は頷いた。

「道三様の要請を断れば、関係が悪化します」

広綱は深くため息をついた。

「お前に、また大きな負担をかけてしまう」

「いえ、これは神崎家のためでもあります」紘一は言った。

「道三様の統一事業に協力することで、神崎家の地位も上がります」

「分かった」広綱は頷いた。

「では、行ってくれ。だが、無理はするな」

「はい」

その日から、紘一は準備を始めた。

まず、佐々木に情報収集を依頼した。

「佐々木殿、西の五名の領主について、詳しく調べてください」

「承知しました」佐々木は、すぐに動き出した。

三日後、佐々木が詳細な情報を持ってきた。

「田邊殿、西の五名の領主についてです」

二人は、紘一の部屋で話をした。

「まず、一人目。名を竹中重元という男です」佐々木は、説明し始めた。

「年齢は五十五歳ほど。性格は、慎重で、保守的です」

「領地の規模は」

「約八百石。経済状態は、安定しています」

「軍事力は」

「兵は、約百五十名。訓練は、そこそこです」

紘一はメモを取った。竹中重元—慎重、保守的、安定志向。

「二人目は、名を斎藤利三という男です」佐々木は、続けた。

「年齢は四十歳ほど。性格は、野心的で、攻撃的です」

「領地の規模は」

「約千石。経済状態は、やや厳しいです」

「軍事力は」

「兵は、約二百名。よく訓練されています」

紘一は頷いた。斎藤利三—野心的、攻撃的、利益志向。

長井道利と似たタイプだ。

「三人目は、名を不破光治という男です」佐々木は、続けた。

「年齢は六十歳ほど。性格は、知恵者で、慎重です」

「領地の規模は」

「約千二百石。西の領主の中では、最大です」

「経済状態は」

「非常に安定しています。

不破は、内政に優れており、領地を豊かにしています」

紘一は緊張した。不破光治。

この男が、おそらく最も難しい相手だろう。

「四人目は、名を池田恒興という男です」佐々木は、続けた。

「年齢は三十五歳ほど。性格は、若く、熱血です」

「領地の規模は」

「約七百石。経済状態は、普通です」

「軍事力は」

「兵は、約百二十名。若い兵が多く、士気は高いです」

紘一はメモを取った。

池田恒興—若く、熱血、理想主義的か。

「五人目は、名を稲葉良通という男です」佐々木は、最後の人物を説明した。

「年齢は四十五歳ほど。性格は、現実主義的で、計算高いです」

「領地の規模は」

「約九百石。経済状態は、安定しています」

「軍事力は」

「兵は、約百八十名。よく訓練されています」

紘一は五人の領主の情報を整理した。

竹中重元—慎重、保守的。

斎藤利三—野心的、攻撃的。

不破光治—知恵者、慎重。

池田恒興—若く、熱血。

稲葉良通—現実主義的、計算高い。

それぞれが、異なる性格と利害を持っている。

すべてを同時に説得するのは、至難の業だった。

「彼らが、何を求めているか、分かりますか」紘一は尋ねた。

佐々木は、答えた。「竹中は、安定を求めています。

戦いを避け、平和に領地を守りたいと考えています」

「斎藤利三は」

「領地の拡大を求めています。野心的な男です」

「不破光治は」

「独立を求めています。誰の下にもつきたくないと考えています」

紘一はため息をついた。

不破光治は、氏家卜全と同じタイプだ。

最も説得が難しい。

「池田恒興は」

「正義を求めています」佐々木は、答えた。

「池田は、理想主義的な若者です。正しいことをしたいと考えています」

「稲葉良通は」

「利益を求めています。計算高い男で、常に最大の利益を得る方法を考えています」

紘一は戦略を練り始めた。

竹中には、安定を提示する。

斎藤利三には、領地拡大の機会を提示する。

不破光治には、名目上の独立を提示する。

池田恒興には、正義と大義を提示する。

稲葉良通には、具体的な利益を提示する。

それぞれに、異なるアプローチが必要だった。

紘一は数日間、準備に費やした。

各領主への説得方法を練り、予想される質問への答えを用意し、

様々なシナリオを想定した。

そして、出発の前日、広信が紘一の部屋を訪ねてきた。

「田邊さん、俺も一緒に行かせてください」

紘一は驚いた。「広信様、ですが……」

「前に約束したじゃないですか」広信は真剣に言った。

「次の交渉には、俺も同行させてくれると」

紘一は思い出した。確かに、そう約束していた。

「ですが、今回は難しい交渉です」紘一は心配した。

「だからこそ、見たいんです」広信の目には、決意があった。

「難しい交渉を、田邊さんがどう乗り越えるのか。それを見て、学びたいんです」

紘一は少し考えてから、頷いた。

「分かりました。一緒に行きましょう」

広信の顔が、明るくなった。

「ありがとうございます」

「ですが、条件があります」紘一は言った。

「事前に、しっかりと準備をしてください。

五人の領主について調べ、それぞれの特徴を理解してください」

「はい」

「そして、会合の場では、まず観察に徹してください」

「分かりました」

翌日、紘一と広信は稲葉山城へ向かった。伊藤と平吉も同行した。

大きな会合が、待っていた。


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