三、寺子屋での祝福—子供たちの成長と未来への希望
収穫が一段落した頃、寺子屋でも変化があった。
生徒たちが、収穫の様子を作文に書いてきたのだ。
ある日の授業で、紘一は生徒たちに作文を読ませた。
最初に読んだのは、吉松だった。
太郎の息子で、九歳になっていた。
吉松は、立ち上がって、自分の書いた作文を読み始めた。
「今年の収穫は、素晴らしかったです。
父が、田邊先生の教えた方法で、米を育てました。
結果は、去年の倍になりました」
吉松の声は、はっきりしていた。
読み方も、スムーズだった。
「父は、とても喜んでいました。
母も、泣いていました。嬉し涙だと言っていました」
教室の中で、他の生徒たちが、静かに聞いていた。
「私も、嬉しかったです。
これで、家族が幸せになれます。
田邊先生、ありがとうございます」
吉松は、作文を読み終えて、紘一に頭を下げた。
紘一は感動していた。
数ヶ月前まで、字が読めなかった少年が、今はこんなに立派な作文を書き、
読めるようになっている。
「よくできました、吉松」紘一は拍手をした。
他の生徒たちも、拍手をした。
次に、清次が読んだ。清次は、すでに上級レベルに達していた。
「今年の収穫を見て、私は思いました。努力は、必ず報われると」
清次の作文は、より深い内容だった。
「農民たちは、毎日、田んぼの世話をしました。
水を管理し、草を取り、虫を駆除しました」清次は、続けた。
「その努力が、豊作という形で報われました」
「私も、字の勉強を頑張ります。いつか、田邊先生のように、
人々を助けられる人になりたいです」
清次の作文を聞いて、紘一は将来への希望を感じた。
この少年は、いずれ、この領地の重要な人材になるだろう。
授業が終わった後、紘一は広信、平吉と話をしていた。
「生徒たちの成長が、素晴らしいですね」広信は嬉しそうに言った。
「ああ」紘一は頷いた。「彼らは、この領地の未来だ」
「清次のような生徒が、もっと増えればいいですね」平吉も言った。
「そのために、寺子屋を拡大する計画を進めましょう」紘一は提案した。
「他の村にも、寺子屋を作る」
「はい」広信は頷いた。「父上に相談してみます」
その日の夕方、広信は広綱に相談した。
広綱は即座に承諾した。「良い計画だ。進めてくれ」
「ありがとうございます、父上」
「教育は、領地の未来を作る」広綱は続けた。
「今年の豊作で、財政に余裕ができた」広綱は微笑んだ。
「その余裕を、教育に投資しよう」
こうして、寺子屋拡大の計画が、正式に承認された。
紘一は次の村に寺子屋を作る準備を始めた。
建物の選定、教師の育成、教材の準備。
やるべきことは、多かった。
だが、紘一には、協力者がいた。
広信、平吉、そして清次のような優秀な生徒たち。
「来年には、二つ目の寺子屋を開校しよう」紘一は目標を立てた。




