二、収穫の日々—領民との共同作業と絆の深化
収穫は、数日間続いた。
村全体が、収穫に追われていた。
男も、女も、子供も、老人も、皆が田んぼに出て働いた。
紘一も、毎日、村に出て、収穫を手伝った。
稲を刈り、束ね、運ぶ。そして、脱穀する。
一連の作業を、農民たちと共に行った。
その過程で、紘一は農民たちとの絆を深めていった。
ある日、紘一は源蔵の田んぼを手伝っていた。
源蔵は、完全に回復していた。
杖は使っているが、自分で稲を刈れるまでになっていた。
「田邊様、本当にありがとうございます」源蔵は、稲を刈りながら言った。
「冬、俺が病気で倒れた時、田邊様が助けてくださいました」
「当然のことです」紘一は答えた。
「あの時は、もうダメだと思いました」源蔵の声が、震えた。
「高熱で、意識も朦朧としていました」源蔵は、続けた。
「ですが、田邊様が医者を呼んでくださり、薬を用意してくださり、食料を届けてくださいました」
源蔵は、涙を拭った。
「おかげで、こうして、今年の収穫を迎えることができました」
源蔵の声には、感謝が込められていた。
「田邊様は、俺の命の恩人です」
紘一は胸が熱くなった。
「源蔵さんが元気になって、本当に良かったです」
「そして、今年の収穫を見てください」源蔵は、自分の田んぼを指差した。
「俺も、間断灌漑を採用しました」源蔵は、続けた。
「結果は、素晴らしいです。去年の一・八倍ほどの収穫になりそうです」
紘一は源蔵の田んぼを見た。
確かに、豊作だった。
「これで、俺も、孫に良い生活をさせられます」源蔵は、微笑んだ。
紘一は源蔵の笑顔を見て、満足した。
人々の生活が良くなる。それが、紘一の最大の喜びだった。
別の日、紘一は若い農民たちと一緒に働いていた。
その中に、名を次郎という三十代の男がいた。
次郎は、春に間断灌漑について質問した男だった。
「田邊様」次郎が、紘一に話しかけた。「俺、最初は半信半疑でした」
「間断灌漑のことですか」
「はい」次郎は、頷いた。
「水を抜くなんて、稲が枯れるんじゃないかって思いました」次郎は、苦笑した。
「でも、田邊様と太郎さんを信じて、やってみました」
「結果は、どうでしたか」
「素晴らしいです」次郎の顔が、明るくなった。
「俺の田んぼも、去年の一・六倍ほどの収穫になりそうです」次郎は、続けた。
「これで、借金を返せます」
「借金、ですか」
「はい」次郎は、正直に言った。
「去年までは、収穫が少なくて、借金をしていました」次郎の声が、暗くなった。
「毎年、利子を払うだけで精一杯でした」
次郎は、紘一を見た。
「ですが、今年は違います」次郎の声が、明るくなった。
「収穫が増えたので、借金を返せます」次郎の目に、涙が滲んだ。
「本当に、ありがとうございます」
紘一は次郎の肩を叩いた。「次郎さん、頑張りましたね」
「はい」
このような会話が、収穫の日々の中で、何度もあった。
農民たちは、それぞれの喜びを、紘一に伝えた。
借金を返せる。家を修理できる。
子供に服を買える。
小さな、だが彼らにとっては大きな喜び。
紘一はそれらすべてを聞いて、胸が熱くなった。
自分の努力が、人々の生活を変えている。
それを実感できる。それが、何より嬉しかった。
そして、紘一は思った。
これが、自分がこの時代で生きる意味なのだと。




