二十五、夏の終わり—収穫への期待と第四章の幕
八月に入り、夏が終わりに近づいていた。
稲は、ほぼ成熟していた。
穂が黄金色に染まり始めている。
あと一ヶ月ほどで、収穫の時期が来る。
農民たちは、期待と不安を抱えていた。
期待は、豊作への期待。不安は、天候への不安。
台風が来れば、すべてが台無しになる。
紘一も、毎日、空を見上げていた。
幸い、今年は、天候が安定していた。
大きな台風も来ていない。
「このまま、無事に収穫の時期を迎えられれば……」紘一は祈っていた。
ある日の夕方、紘一は村の丘の上に立っていた。
そこからは、領地全体が見渡せた。
田んぼが、一面に広がっている。黄金色に染まり始めた稲。
それが、風に揺れている。
美しい光景だった。
そして、この光景が、紘一のこの半年の努力の成果だった。
冬の戦い。春の農業指導。夏の交渉。様々なことがあった。
だが、すべてが、この光景につながっている。
「開花……」紘一は呟いた。
種を蒔いた。水をやった。世話をした。そして、花が咲いた。
間断灌漑という種。寺子屋という種。医療改善という種。
それらが、今、花を咲かせようとしている。
紘一は満足感を感じていた。
だが、同時に、まだやるべきことがあることも理解していた。
収穫を無事に終える。寺子屋を拡大する。
医療をさらに改善する。そして、領地全体を、もっと豊かにする。
課題は、まだ多い。
だが、紘一には、仲間がいた。
広綱、広信、平吉、伊藤、佐々木、太郎、源蔵。多くの人々が、紘一を支えている。
「一人じゃない」紘一は呟いた。
その時、背後から声がした。
「田邊さん」
振り返ると、平吉が立っていた。
「平吉、どうした」
「探しましたよ」平吉は微笑んだ。
「夕食の時間です」
「ああ、もうそんな時間か」
二人は、丘を下りて、屋敷へ向かった。
夕日が、西の空を赤く染めている。
その光が、二人の背中を照らしていた。
「田邊さん」平吉が歩きながら言った。
「今年は、良い年になりそうですね」
「ああ」紘一は頷いた。
「皆の努力が、実を結ぼうとしている」
「来年は、もっと良い年にしましょう」
「ああ」
二人は、笑顔で屋敷へ戻っていった。
夏が終わり、秋が来ようとしていた。
収穫の季節。実りの季節。
そして、紘一にとっても、新しい季節が始まろうとしていた。
様々な種が、花を咲かせた。
そして、今、実を結ぼうとしている。
第四章は、こうして終わりを告げた。
開花の章。種が芽吹き、成長し、花を咲かせた。
そして、次の章では、その花が実を結ぶ。
紘一の旅は、まだ続いていく。
(第四章 完)




