二十四、広信の成長—若き領主の自覚と決意
ある夜、広信が紘一の部屋を訪ねてきた。
「田邊さん、少しお時間いいですか」
「もちろんだ。どうぞ」
広信は部屋に入って座った。
その顔には、真剣な表情があった。
「田邊さん、俺、決めました」広信は言った。
「何を」
「もっと領主として、成長します」広信の声には、決意があった。
「田邊さんや父上に頼るばかりではなく、自分でも判断できるようになります」
紘一は広信の成長を感じた。
「それは、素晴らしいことですね」
「田邊さんから、多くを学びました」広信は続けた。
「外交のこと、政治のこと、領地経営のこと」広信の目には、感謝があった。
「ですが、まだ実践の経験が足りません」
「実践の経験、ですか」
「はい」広信は頷いた。
「田邊さんは、道三様との交渉、長井との交渉、すべてを実際に経験されています」広信は続けた。
「ですが、俺は、まだそういう経験がありません」
紘一は広信の言葉を理解した。
確かに、広信は学んでいる。だが、実践の場が少ない。
「では、どうしたいのですか」
「次に何か交渉の機会があれば、俺も同行させてください」広信は頼んだ。
「そして、実際に交渉の場を見せてください」
紘一は少し考えてから、頷いた。
「分かりました。次の機会には、一緒に行きましょう」
広信の顔が、明るくなった。「本当ですか」
「はい。ただし、条件があります」
「何でしょうか」
「事前に、しっかりと準備をしてください」紘一は言った。
「交渉相手について調べ、戦略を立て、予想される質問への答えを用意する」
「はい」
「そして、交渉の場では、観察に徹してください」紘一は続けた。
「まずは、見て学ぶ。それから、実際にやってみる」
広信は深く頷いた。「分かりました。そうします」
二人は、しばらく、今後のことについて話し合った。
広信の成長計画。領地経営の課題。
様々なことを、率直に話し合った。
「田邊さん」広信が、話の終わりに言った。
「俺、いつか、田邊さんのように、人々を助けられる領主になりたいです」
紘一は微笑んだ。「広信様なら、必ずなれます」
「本当でしょうか」
「本当です」紘一は断言した。「広信様には、優しさがあります。人々を思いやる心があります」
紘一は続けた。
「それが、最も重要な資質です」
広信は涙を拭った。
「ありがとうございます」
その夜、広信は希望を持って部屋を出ていった。
紘一は窓の外を見た。月が出ていた。
満月。その光が、部屋を照らしている。
「広信は成長している」紘一は呟いた。
この若者は、いずれ、立派な領主になるだろう。そ
して、この領地を、さらに発展させるだろう。
紘一の役目は、その成長を支えることだ。




