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二十、交渉の成功—紘一の評価と報酬

会合が終わった後、道三は再び紘一を書院に呼んだ。

「田邊、見事だった」道三の声には、賞賛があった。

「ありがとうございます」

「特に、長井の野心を利用したのは、巧妙だった」道三は続けた。

「神崎領よりも、南の領地の方が利益があると示した。それが、長井の心を動かした」

紘一は謙虚に答えた。

「長井様の求めるものを理解し、それを満たす方法を提示しただけです」

「その『理解』が、難しいのだ」道三は紘一の肩を叩いた。

「お前は、本当に優れた交渉者だ」

道三は懐から袋を取り出した。

「これは、約束した報酬だ」

袋を開けると、中には金が入っていた。かなりの量だった。

「長井の説得に成功した。だから、成功報酬も含めて、米百俵分の金だ」

紘一は驚いた。米百俵分の金。それは、神崎家にとって、大きな収入だった。

「ありがたく、頂戴いたします」紘一は深く頭を下げた。

「そして、もう一つ」道三は続けた。

「神崎家に、森林の使用権を与える」

「森林の、ですか」

「そうだ」道三は説明した。

「神崎領の北に、広大な森林がある。その森林の木を、神崎家が自由に伐採して良い」

紘一はその価値を理解した。

木材は、この時代、貴重な資源だった。

建築、燃料、様々な用途がある。

森林の使用権は、大きな利益をもたらす。

「重ねて、ありがとうございます」

「これからも、頼む」道三は言った。

「美濃の統一には、まだ多くの領主を説得しなければならない」

「はい。お役に立てるよう、努めます」

紘一は稲葉山城を後にした。

帰路、紘一は満足感を感じていた。交渉に成功した。

神崎家の脅威を取り除いた。そして、大きな報酬を得た。

だが、同時に、疲労もあった。

交渉は、精神的に疲れる。

常に相手の心を読み、適切な言葉を選び、タイミングを計る。それは、戦場での戦いとは違う種類の疲労だった。

神崎領に戻ると、広綱が待っていた。

「田邊、どうだった」

「成功しました」紘一は報告した。

「長井は、道三様の傘下に入りました。神崎家への脅威は、なくなりました」

広綱の顔が、明るくなった。

「それは、素晴らしい」

紘一は金の袋を差し出した。

「そして、これが報酬です」

広綱は袋を開けて、中を見た。その目が、大きくなった。

「これは……かなりの額だな」

「はい。米百俵分だそうです」

「百俵……」広綱は感慨深そうに言った。

「これで、領地の財政が、だいぶ楽になる」

「そして、森林の使用権もいただきました」紘一は続けた。

広綱はさらに驚いた顔をした。

「森林の使用権まで……」

「はい。北の森林を、自由に伐採して良いとのことです」

広綱はしばらく黙っていた。

そして、深くため息をついた。

「田邊、お前は、本当に神崎家の宝だ」広綱の声には、感謝が込められていた。

「お前がいなければ、今頃、神崎家は長井に攻められていただろう」

「いえ、私は……」

「謙遜するな」広綱は首を横に振った。

「お前の働きは、誰もが認めている」

広綱は立ち上がった。

「今夜、宴を開こう。お前の功績を、皆で祝おう」



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