十五、描画能力の秘密実験—限界と可能性の探求
ある夜、紘一は一人、部屋で実験を続けていた。
描いたものが現実になる能力。その限界と可能性を、もっと知りたかった。
紘一はこれまでに様々なものを描いて現実化してきた。リンゴ、桜の花びら、柳の皮、鍬。どれも成功した。
だが、まだ試していないことがある。
複数のものを同時に現実化できるか。
紘一は紙に、リンゴを三つ描いた。三つ並んだリンゴ。それぞれ、少しずつ大きさを変えた。
絵が完成した。
紘一は念じた。
絵が光り、机の上に三つのリンゴが現れた。
成功だ。複数のものを同時に現実化できる。
次に、紘一は別の実験をした。
動くものを現実化できるか。
紘一は鳥を描いた。翼を広げて、飛んでいる鳥。できるだけリアルに描く。
絵が完成した。
念じる。
絵が光り、部屋の中に本物の鳥が現れた。
だが、鳥は動かなかった。空中で、静止している。まるで、時間が止まったように。
紘一は驚いた。「動かない……」
数秒後、鳥が動き出した。羽ばたき始め、部屋の中を飛び回る。
紘一は慌てて窓を開けた。鳥は、窓から外へ飛んでいった。
「生き物も現実化できる……」紘一は呟いた。
だが、これは危険だとも思った。生き物を現実化する。それは、命を創造することだ。倫理的に、許されるのか。
紘一は深く考え込んだ。
そして、決めた。生き物の現実化は、極力避ける。どうしても必要な時以外は、しない。
次に、紘一は大きなものを試してみた。
家を描いてみる。小さな家。茅葺き屋根の、質素な家。
絵が完成した。
念じる。
だが、何も起こらなかった。
紘一はもう一度、強く念じた。
すると、激しい疲労が襲ってきた。目の前が暗くなり、体が重くなる。
紘一は床に倒れ込んだ。
「くっ……」
しばらく、動けなかった。疲労が、あまりにも激しい。
やがて、少しずつ回復してきた。
紘一は机を見た。家は、現れていなかった。
「大きすぎるものは、無理なのか……」紘一は理解した。
あるいは、自分のエネルギーが足りないのか。
紘一は限界を知った。
小さなもの、単純なものなら、現実化できる。だが、大きなもの、複雑なものは、難しい。あるいは、不可能。
そして、現実化には、エネルギーを消費する。大きなものほど、多くのエネルギーを必要とする。
紘一はこれらの知識を、頭に入れた。
そして、能力の使い方を、さらに慎重に考えなければならないと思った。




