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九、稲葉山城への出発—緊張の旅立ち

会合の前日、紘一は稲葉山城へ向けて出発した。

今回は、伊藤と平吉が同行した。護衛として、三名の兵も一緒だった。

朝早く、屋敷の門の前に、多くの人が見送りに来ていた。

広綱、広信、そして領民たち。

「田邊、気をつけて」広綱は紘一の手を握った。「神崎家の名誉を、頼む」

「はい」紘一は深く頭を下げた。

広信も、紘一に近づいた。「田邊さん、必ず無事に帰ってきてください」

「ああ、約束する」

太郎も、来ていた。「田邊様、頑張ってください」

源蔵も、杖をつきながら来ていた。「田邊様、我らが、ここで祈っております」

紘一は感動した。こんなに多くの人が、自分を見送ってくれる。その期待に、応えなければならない。

「皆さん、ありがとうございます」紘一は深く頭を下げた。「必ず、良い結果を持って帰ります」

一行は、馬に乗って出発した。

初夏の道は、美しかった。木々は緑に覆われ、花が咲いている。鳥が歌い、蝶が舞っている。平和な光景だった。

だが、紘一の心は、緊張していた。明日の会合。そこで、何が起こるのか。うまく交渉できるのか。

「田邊殿、緊張しているな」伊藤が、馬を並べてきた。

「はい。正直、緊張しています」

「当然だ」伊藤は、微笑んだ。「大きな会合だからな」

「失敗したら、神崎家に迷惑をかけます」

「お前なら、大丈夫だ」伊藤は、紘一の肩を叩いた。「小山領を説得した手腕。道三様も、それを認めている」

「ありがとうございます」

平吉も励ました。「田邊さん、俺、信じています」

紘一は二人の言葉に、勇気をもらった。

一日の行軍を経て、一行は稲葉山城に到着した。

城は、相変わらず威容を誇っていた。だが、今回は、さらに多くの兵が配置されているようだった。明日の会合に備えて、警備を強化しているのだろう。

城門で、紘一たちは出迎えられた。

「神崎家の田邊殿ですね。お待ちしておりました」

案内役は、若い武士だった。

一行は、城内に案内された。そして、宿泊用の部屋に通された。

「明日の会合は、午前中に始まります」案内役は、説明した。「それまで、ゆっくりお休みください」

案内役が去った後、紘一は部屋で、明日の準備をした。

三人の領主への説得方法を、もう一度確認する。遠藤には安定を。安藤には利益を。氏家には名目上の独立を。

そして、予想される質問への答えも、用意する。

「道三様の傘下に入って、本当に安全なのか」

「道三様は、信頼できるのか」

「我らの領地は、守られるのか」

様々な質問が、予想される。それらに、的確に答えなければならない。

紘一は深夜まで準備を続けた。

やがて、疲れて、床についた。だが、なかなか眠れなかった。明日の会合のことが、頭から離れない。

窓の外を見ると、月が出ていた。半月。その光が、部屋を照らしている。

「明日、頑張ろう」紘一は自分に言い聞かせた。

そして、ゆっくりと、眠りについた。



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