鑑定石×ウルトラレア
35歳の社畜が、名刺管理スキルを武器に異世界へ。
名刺から魔法・アイテム・キャラまで顕現できる《Card Registry》を手に、
世界の構造崩壊に立ち向かう物語です。
地味な名刺管理が、異世界では最強のチートになる。
そんな“構造×異世界ファンタジー”を楽しんでいただければ嬉しいです。
王都の門をくぐった瞬間、エリックは思わず立ち止まった。
街は確かに大きい。
だが、活気よりも緊張が支配していた。
武装した兵士が巡回し、建物のあちこちに補修跡が残っている。
遠くで爆音が響き、黒煙が上がる。
「……本当に、戦争の最中なのですね」
「はい。王都も安全とは言えません。
それでも、ここが最後の砦です」
リリアは淡々と答えた。
その声には、わずかな疲れが滲んでいる。
街を進むにつれ、兵士や市民がリリアに気づき、自然と道を開けた。
「リリア王女、お帰りなさいませ」
「王女殿下、本日もご無事で……!」
リリアは一人ひとりに短く頷き返しながら歩いていく。
王都の中心部に近づくと、古い石造りの建物が姿を現した。
魔法陣の刻まれた扉、淡く光る紋章。
ここが鑑定院だ。
中に入ると、外の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
空気は冷たく、張り詰めている。
まるで神殿のような静寂だ。
受付の女性がリリアに気づき、丁寧に頭を下げた。
「リリア王女。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「この方のスキルの正式鑑定をお願いします。
最上位の鑑定石を使いたいのですが」
「承知いたしました。大鑑定師をお呼びします。
特別鑑定室へご案内いたします」
案内された特別室に入った瞬間、エリックは固まった。
「……でかっ……!」
部屋の中央に鎮座していたのは、
人の背丈どころか 二階建ての家の壁ほどの高さ がある巨石だった。
表面には複雑な魔法陣が刻まれ、淡い光が脈打っている。
リリアが小声で説明する。
「道具屋に置いてある鑑定石とは、まったく別物です。
こちらは王都専用の高性能鑑定石で、
スキルだけではなく、種族、年齢等の詳細まで判定できます」
エリックは思わず呟いた。
「……いや、これもう岩ですよね……?」
「鑑定石です」
「岩ですよね?」
「鑑定石です」
エリックは黙った。
リリアは微笑んだ。
勝負はついた。
そのとき、重厚な扉が開き、白髪の老人が姿を現した。
「お待たせいたしました。
鑑定院最高鑑定師――ガルド・エルネスト と申します」
老人は深々と礼をした。
声は落ち着いているが、どこか威厳がある。
リリアも丁寧に頭を下げる。
「ガルド大鑑定師。急なお願いで申し訳ありません」
「いえ、王女のご依頼とあらば。
そちらの青年が鑑定対象で?」
「はい。エリックさまです」
ガルドはエリックを一瞥し、わずかに目を細めた。
「……ふむ。妙な気配を感じますな」
「では、あの鑑定石に手を当ててくだされ」
エリックが巨石に手を触れた瞬間――
鑑定石が、爆ぜるように光った。
部屋全体が白く染まり、魔力の風が吹き荒れる。
「なっ……!?」
「……これは……」
リリアもガルドも、思わず一歩退いた。
エリックはというと、
「え、え、え、ちょっと待って!?
これ、爆発しませんよね!?」
「大丈夫です! たぶん!」
「たぶん!?」
リリアの“たぶん”が一番怖かった。
やがて光が収まり、石の表面に文字が浮かび上がった。
鑑定結果(表示)
【名前】エリック = ハーバント
【年齢】十九歳
【種族】ヒューマン
【スキル】カードレジスタリー
【スキルランク】ウルトラレア
【能力詳細】解析不能
ガルドは、目を見開いたまま固まった。
「……ほほう……いや、ほほうでは済まん……!」
リリアが静かに問いかける。
「ガルド大鑑定師。結果を教えていただけますか?」
老人は震える指で鑑定石を指差した。
「スキルランクはノーマル、レア、スーパーレアの三段階。
スーパーレアは希少ではありますが、この世界にも一定数おります」
エリックはほっとしかけた。
(あ、じゃあ俺もレアくらいなのかな――)
ガルドは叫んだ。
「だがエリック殿は違う!!
スーパーレアを超えた、伝説級――ウルトラレア!!
これは物語や伝承でしか語られぬ“幻のランク”!!
わしも実物を見るのは初めてじゃ!!」
エリックは固まった。
リリアは息を呑む。
「伝説級……ウルトラレア……本当に存在したのですね……」
ガルドは続ける。
「しかも、能力の詳細は解析不能。
鑑定院最高位の鑑定石をもってしても、ですぞ!」
エリックはただ困惑するしかなかった。
「え、えっと……それは……そんなに、おかしいことなのでしょうか」
リリアは、はっきりと頷いた。
「はい。
エリックさまのスキルは、この戦乱の世界において――
間違いなく“規格外”です」
エリックは言葉を失った。
こうして――
エリックの“伝説級ウルトラレアスキル”が、世界に刻まれた。
読んでいただき、ありがとうございます。
名刺スキルが異世界でどう広がっていくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




