十種族×対立
35歳の社畜が、名刺管理スキルを武器に異世界へ。
名刺から魔法・アイテム・キャラまで顕現できる《Card Registry》を手に、
世界の構造崩壊に立ち向かう物語です。
地味な名刺管理が、異世界では最強のチートになる。
そんな“構造×異世界ファンタジー”を楽しんでいただければ嬉しいです。
翌朝。
澄んだ空の下、エリックとリリアは村を出て王都へ向かう街道を歩いていた。
道は整備されているものの、ところどころに焼け焦げた跡が残っている。
戦争の影が、こんな場所にまで及んでいるのだと分かる。
しばらく歩いたところで、リリアが口を開いた。
「エリックさま。王都へ向かう前に、この世界の情勢をお話ししておきますね」
「はい。ぜひ教えていただけると助かります」
リリアは頷き、歩きながら淡々と説明を始めた。
「この世界には十の種族が存在します。
それぞれ特徴も文化も違い、国も分かれています。
そして今、そのほとんどが戦争状態にあります」
「……戦争、ですか」
「はい。三百年前の“魔族暴走事件”をきっかけに始まった対立は、今や全面戦争に発展しています。
国境線は崩れ、各地で戦闘が起き、世界は破綻寸前です」
エリックは思わず息を呑んだ。
リリアは順に種族を挙げていく。
「まずは我々、ヒューマン族。
人口が最も多く、組織力と外交力に優れています。
ドワーフ族、妖精族、海人族と同盟を結び、戦線を維持しています」
「ドワーフ族は技術力が高く、武具や魔道具の供給で重要な役割を担っています」
「妖精族は魔力操作に優れていますが、戦闘力は高くありません。
それでも、後方支援として欠かせない存在です」
「海人族は海と潮流を操ると言われる種族で、海上戦の要です。
魔族との海戦が激化しており、海は常に戦場になっています」
「エルフ族は長寿で知能が高く、魔法に優れています。
これまで中立を貫いてきましたが、森が戦火に巻き込まれつつあり、武力行使も辞さない姿勢に変わりつつあります」
「獣人族は身体能力が高く、単体ではヒューマンより強い者が多いです。
ですが、部族ごとに参戦・中立が分かれ、草原地帯は混乱状態です。
ヒューマンとの衝突も増えています」
「竜人族は……孤高の集団です。
古代竜の血を引き、戦闘力は最上位。
ですが、他種族の争いには興味がなく、同盟も敵対もありません。
ただし、領域に近づいた軍は容赦なく排除されます」
エリックは思わず背筋を伸ばした。
「そんな存在が……」
「はい。彼らの領域は“死の高地”と呼ばれています」
リリアは続ける。
「巨人族は力と耐久に優れた上位種族で、鬼人族と共に戦線を形成しています」
「魔族は最大の侵攻勢力です。
暴走事件の再発を恐れられつつも、その力で各地を圧迫しています」
「鬼人族は戦闘民族で、魔族と同盟し、荒野から侵攻を続けています。
獣人族との戦闘も激化しています」
エリックは聞きながら、頭の中で世界の姿を想像していく。
(……本当に、世界が壊れかけているんだ)
「魔力資源の枯渇も進んでいます。
争いはさらに激しくなり、どの国も余裕がありません」
「……そんな状況なのですね」
エリックは静かに息を吐いた。
しばらく歩くと、遠くに白い城壁が見え始めた。
だが、よく見ると補修跡が多く、戦火の痕跡が残っている。
「エリックさま。あれが王都です」
「……立派ですが、傷だらけですね」
「はい。王都も安全とは言えません。
それでも、ここが最後の砦です」
二人は城壁の前に到着した。
門番たちはリリアを見るなり、すぐに姿勢を正した。
「リリア様、お帰りなさいませ!」
「ただいま戻りました。皆さん、警戒をお願いしますね」
兵士たちは皆、当然のようにリリアを知っている。
その自然さに、エリックは改めて彼女の立場を意識してしまう。
(……やっぱり、本当に王女なんだ)
エリックは少し緊張しながら、王都の空気を吸い込んだ。
こうして――
エリックはついに、戦火に揺れる王都へ足を踏み入れた。
読んでいただき、ありがとうございます。
名刺スキルが異世界でどう広がっていくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




