王女の告白×天命の出会い
35歳の社畜が、名刺管理スキルを武器に異世界へ。
名刺から魔法・アイテム・キャラまで顕現できる《Card Registry》を手に、
世界の構造崩壊に立ち向かう物語です。
地味な名刺管理が、異世界では最強のチートになる。
そんな“構造×異世界ファンタジー”を楽しんでいただければ嬉しいです。
エリックの話が終わったあと、
部屋にはしばらく静寂が落ちた。
リリアは視線を落とし、
胸元の紋章にそっと触れながら、
何かを噛みしめるように息を整えていた。
やがて、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳には——
恐れではなく、強い決意と期待の光 が宿っていた。
「……エリックさま。
あなたのお話を聞いて……驚きました。
ですが……私は、信じられます」
「信じられる……?」
「はい。
創造神アストレアさまのお名前は……
各国の王族にのみ伝承される“秘伝”です。
一般の民はもちろん、
騎士や魔術師でも知らない者がほとんどです」
リリアは静かに続ける。
「知っているのは……
王族と、賢者級の者だけ。
それほど古く、そして重要な伝承なのです」
エリックは息を呑む。
リリアは一歩、彼に近づいた。
深紅のショートマントが揺れ、
胸元の紋章が淡く光を反射する。
「だから……あなたが迷いなくアストレアさまの名を口にした時、
私は悟りました。
あなたのお話は……本当なのだと」
そして、リリアは小さく息を吸い、
覚悟を決めたように姿勢を正した。
「エリックさま。
私も……あなたに真実をお伝えしなければなりません」
その声音は、
これまでよりもずっと重く、そして真剣だった。
「私は……
ヒューマン種族の国、アルディア王国の王女——」
胸に手を当て、正式な礼を取る。
「リリア・アルディア・エル=フェリア と申します」
その瞬間、
エリックの思考が一瞬止まった。
(……え?
今……王女って言った?
王女?
お、王女……?)
理解が追いつかず、
頭の中で同じ言葉が何度も反響する。
「お、王女……!?
リリアが……王女……?
いやいやいや、ちょっと待て……!」
思わず声が裏返る。
(そりゃあ確かに、見た目も雰囲気も普通じゃなかったけど……
まさか本当に“王女”って……
俺、さっきまで普通に話してたよな?
敬語とか全然使ってなかったよな!?
やばいだろこれ……!)
背中に冷たい汗が流れる。
リリアはそんなエリックを見て、
少し困ったように、でも優しく微笑んだ。
「驚かせてしまいましたね……
ですが、隠していたのは私の方です。
エリックさまが気に病む必要はありません」
その穏やかな声に、
エリックはようやく息を吐いた。
(……いや、無理だろ。
王女だぞ……?
俺、転生してきたばかりの一般人だぞ……?
なんでこんなすごい人と話してるんだよ……)
しかし、リリアの瞳は真剣だった。
「この世界は今、十の種族が互いに争い、
どこにも安らぎがありません。
私はこの現状を変えたい。
十種族の和平を実現したいのです」
その表情には、
王女として背負ってきた重さが滲んでいた。
「そのために身分を隠し、
仲間を集める旅に出たばかりでした。
そんな時に……あなたと出会ったのです」
リリアの瞳は、
まるで“運命の相手を見つけた”かのように輝いていた。
「エリックさま。
どうか……私と共に来てください。
この世界を……救うために」
その言葉は、
王女としての願いであり、
ひとりの少女としての祈りでもあった。
エリックは、
胸の奥が熱くなるのを感じた。
読んでいただき、ありがとうございます。
名刺スキルが異世界でどう広がっていくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




