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35歳社畜の俺、異世界で名刺管理システムがウルトラレアスキルとして覚醒し、世界の命運を託されることになる  作者: それがし
1章

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4/11

紺の衣装 × 告白

35歳の社畜が、名刺管理スキルを武器に異世界へ。

名刺から魔法・アイテム・キャラまで顕現できる《Card Registry》を手に、

世界の構造崩壊に立ち向かう物語です。

地味な名刺管理が、異世界では最強のチートになる。

そんな“構造×異世界ファンタジー”を楽しんでいただければ嬉しいです。


 コン、コン。

 

 静かな離れに、扉を叩く小さな音が響いた。


「エリックさま、起きていますか?」


 リリアの声だ。

 俺は慌てて鏡から離れ、扉を少しだけ開けた。


「……リリア?」

「様子を見に来ました。それと……こちらを」


 リリアが両手で抱えていたのは、

 紺色を基調にした、上品な服だった。

 刺繍が控えめに入っていて、村の服より明らかに質がいい。


「エリックさまの服……その、今の黒い服は目立ってしまうので。

 私の家にあったものですが、サイズは近いと思います」


(リリアが……用意してくれたのか。

 こんなに綺麗な服を……)


「ありがとう。助かるよ。

 ちょっと着替えるから、そこで待っててくれる?」

「はい。外でお待ちしますね」

 リリアは扉の前で軽く会釈し、外へ下がった。




 服を広げてみると、

 紺の生地は柔らかく、軽いのにしっかりしている。

 袖や襟のラインも綺麗で、

 “村の服”というより“どこかの良家の普段着”に近い。

(……こんなの着て大丈夫か……?

 いや、スーツよりは絶対にマシだな……)


 着替えてみると、意外にも体にしっくり馴染んだ。

 鏡を見ると、さっきの“新しい俺”の姿に、

 この服が妙に似合っている。

(……なんだこれ……

 俺、普通にイケてるやつみたいじゃん……)

 深呼吸して気持ちを整え、扉を開けた。


「リリア、入っていいよ」

「失礼します……」


 リリアが部屋に入った瞬間、

 彼女の瞳がわずかに見開かれた。


「……とても、お似合いです」


 その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

 落ち着いてリリアを見ると、

 改めて気づく。

(……この子……めちゃくちゃ可愛い……

 いや、可愛いどころじゃない。

 美人で、スタイルも良くて……)


 そして、視線が自然と彼女の服装へ移った。

 白を基調とした軽装。

 肩から背中にかけては深紅のショートマント。

 胸元には見たことのない紋章。

 腰には細身の剣と、淡く光を帯びた杖のようなもの。


(……これ、村の普通の服じゃないよな。

 武器まで持ってるし……

 どう見ても“ただの村娘”じゃない。

 むしろ……どこかの高い身分の家の娘か、

 特別な役目を持つ人間にしか見えない……)


 顔立ちや雰囲気だけじゃない。

 身に着けているものからも、

 おそらく高貴な出であることが伺える。

 リリアの美貌に内心テンションが爆上がりしているのに、

 表情は必死に平静を保つ。


「ありがとう。

 ……少し時間が経って、気持ちも落ち着いてきたよ」


 リリアは安心したように微笑んだ。

 そして、少しだけ真剣な表情になった。


「……あの、エリックさま。

 無理に答えなくてもいいのですが……」


 言葉を選ぶように、ゆっくり続ける。


「エリックさまは……

 どこで倒れていたのか、覚えていらっしゃいますか?

 その……本当に記憶がないのか、気になって……」


(……そう来るか。

 “どこから来たのか”じゃなくて、

 俺の負担にならないように、まず“覚えているかどうか”から聞いてくれる……

 この子、本当に優しいな……)


 俺は少しだけ視線を落とした。


(……話すべきか……?

 こんな話、信じてもらえるのか……?

 いや、そもそも俺は……

 この状況を誰にも話さずに生きていけるほど強くない)

 リリアの瞳は、

 疑いではなく、ただ心配している色だった。

(……この子なら……話してもいいかもしれない)


 腹をくくる。


「……信じてもらえるか分からないけど、

 全部話すよ」


 リリアは黙ってうなずく。

 俺は深く息を吸い、

 草原で目覚めた瞬間から語り始めた。


「気づいたら……草原に倒れていたんだ。

 本当に、何も覚えていなかった。

 でも……その直前に、ひとりの存在と会っていた気がする」

 リリアが小さく息をのむ。

「……存在、ですか?」

「創造神を名乗る人物だ。

 名前は——アストレア。

 俺がいた世界とは違う場所で……

 “転生”を告げられた」


 リリアの瞳が揺れた。

 だがそこに恐れはない。

 むしろ——

 期待に満ちた光が宿っていた。


「……創造神アストレアさまに……会われたのですか……?」


 その声は震えていたが、

 それは恐怖ではなく、

 “何かが始まる予感”に震える声だった。


「そして……左手に刻まれた、この印も」


 俺は手の甲を見せた。

 リリアは息を呑み、

 その刻印をじっと見つめた。


「……本当に……アストレアさまが……」

 その表情は、

 驚きと、感動と、期待が混ざったような——

 まるで“奇跡を目の前にした人間”の顔だった。

読んでいただき、ありがとうございます。


名刺スキルが異世界でどう広がっていくのか、楽しんでもらえたら嬉しいです。


次回もよろしくお願いします。

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