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雨上がりに君と出会えたのなら  作者: あまの
第一章 雨上がりの出会い
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7話 曇りの日

「珍しい名前だよね。太郎って。何か由来でもあるの?」

 

 とある日、凛音は卵焼きを口に運びながらそう聞いてきた。名前の由来、それは俺の聞かれたくない質問の一つだ。

 

 どうやって誤魔化そうかと迷っていると、凛音は「ありふれているようであんまりない名前だよね」と、のんびりした物言いで続けた。

 

 凛音は度が過ぎたマイペースだ。そして、度が過ぎた天然でもある。そのこともあり、空気を読むと言うことが苦手らしく、ズケズケと酷いことを口にすることがある。

 

 今回も適当な思いつきで、俺の返答には全く期待していないのかもしれない。

 そんな願いを込めて凛音に視線を向けると、俺の想像通り、彼女は目を輝かせながらミニトマトを口にしていた。

 

 まるで、自分からした質問を忘れているようだ。俺は安堵のため息をついた。

 だが、そんな都合の良いことは起きていなかった。

 

「私は、呼びやすいから太郎って名前好きだけど、太郎は自分の名前好き?」

 

 凛音は、俺が嫌がっていることにも気づかないまま、また質問を重ねた。

 つい苛立って、ぶっきらぼうに言った。

 「……好きなわけないだろ、こんな変な名前」

 自分でも驚くくらい低い声が出た。凛音が目を見開き、サッと視線を逸らした。


 謝罪はしたくなかった。気を紛らわすためにコンビニのパンを大口で食べた。それを味わう余裕もなく、俺は強引に飲み込んだ。


 凛音の箸を置く音が聞こえる。彼女は、視線を彷徨わせながら言った。


「……ごめん。なんか、ご飯美味しくないし、帰るね。たまには授業出ないとだし」


 凛音は隣に置いていたカバンに、食べていたお弁当箱を詰めた。そのまま、振り向くことさえなくドアノブを捻って出て行った。

 お決まりの挨拶はなかった。――だって、凛音が先に出ていくのは初めてのことだったから。


 世界から音が消えてしまったような静寂の時間。凛音に出会ってから、短いと思っていた昼休みは、今日だけはやけに長かった。

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