表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに君と出会えたのなら  作者: あまの
第二章 探し物と秘密
11/22

11話 フードコートの中で

「あ、お兄ちゃんと凛音さん!」

「ずいぶんと遅かったじゃねぇか?」


 琴葉と凛音の兄は、俺と凛音に気がつくと手を振った。だが手を振りかえすことはできなかった。二人が座っているのはフードコートの、四人用の席。その二つに、大量にぬいぐるみと、俺が買ってそのまま放置してしまっていた日用品が置かれていた。


「兄さん、ゲーセン行くなら私を呼んでよ」

「勝手にお前らがいなくなったんだろうが」


 俺の方を見向きもしない凛音の兄は、塞がれた席の荷物を、床や膝に乗せることでどかした。自然な動作で凛音がそこに座った。

 

「あれ、俺の席は?」俺は琴葉を見た。

「お母さんに頼まれた荷物が思ったより多いから……」

「理由になってないからな?」


 仕方がないので、俺は琴葉の隣に立った。迷うことなく凛音兄が立ち上がり、俺を睨んだ。座れ、という無言の圧が伝わってくる。


「さっさと座れ、見下されるのはごめんだ」

「……ありがとうございます」


 お礼を言うと、彼は舌打ちをした。素直ではないだけなのか、本当に立たれているのが嫌だったのか、判断がつかない。どちらにせよ言えるのは、この人は苦手だ。俺をいじめている前原に近いものを感じる。普通に怖い。


 しかし、それは俺だけだったようだ。


「……かっこよすぎてヤバい」と琴葉が言う。頼む、冷静になってくれ。祈りは伝わらない。


 その祈りの間に、凛音と凛音兄の会話は続いた。

 

「兄さんって、やっぱり優しいね」

「その目は節穴か? それとも橘の影響か?」

 

「……橘?」


 しまった、余計なことを言ってしまった。凛音兄しか見てない、危機感ゼロな妹を除いて、二人の視線が俺に向く。頭が真っ白になり、俺はしどろもどろで言う。


「えっと、その……凛音の苗字は橘じゃないですか。ど、どうしてそんな言い方をするのかって思いまして……」


 まずい。言えば言うほど、何を言っているのかわからなくなる。緊張のあまり、記憶が飛んだ。


 そんな俺を置いていくように、凛音があまりにあっさり言う。


「あぁ、私と兄さんは他人だよ。血も繋がってないし、戸籍もそう。あくまで、私が兄って思っているだけ」


 衝撃の大きさに、思わず俺は黙る。

 赤の他人? なら、凛音はどうしてそんな男と出会ったんだ?――俺の疑問は、もっと大きい疑問にかき消された。


 凛音兄――もとい、凛音の兄を名乗る者は言う。

 

「俺も凛音は妹って思っているからなぁ。ま、同居人だし、あながち家族だろ」


 おい待て。同居人? あ、そういえば凛音は「兄さん」に毎日、弁当を作ってもらっていたな。納得と引き換えに、俺の心に理由のわからないダメージが入る。


「あ、だから苗字が違う……え、待って。もしかしてわたしの初恋終わった……?」

「? 兄さんは彼女いないよ?」


 呟くような声も、凛音の空気の読めない声も耳に入らない。ただ、彼が凛音とどういう関係なのか、深く知りたくなった。もちろん友達として。


 凛音の兄に視線を向ける。何か言おうとしたが、口は動いてくれなかった。


「その程度の勇気なら、入ってくるんじゃねぇよ」


 彼は耳元で、俺にだけ聞こえる声量でそう言った。どういう意味だ――そう、俺は言おうとしたが、やっぱり口は動かなかった。彼はついに呆れたように、凛音に声をかける。


「そういや凛音。橘に服を買いたかったんじゃねぇか? 今から行くか」


「いや、待ってくれ――」


 俺たちを一瞥することもなく、彼は踵を返そうとして――。


「やだ。お腹すいた。ラーメン食べたい」


 マイペースな凛音に、凛音兄は頭に手を当てた。


「……帰りに買ってやるから」

「やだ。ラーメンはテイクアウトできない」

「家の近くのラーメン屋。帰りによれば……」

「やだ。その時には気分変わっているもん」


 なんとも間の抜けた会話だ。だが、張り詰めていた空気が和んだ。琴葉が俺に耳打ちする。


「なんか、仲のいい兄妹だね〜」

「本当にな。……俺らも何か食べるか?」


 琴葉はパフェを食べたばかりのはずだ。それでも、俺は確認をとった。何故かって?


「うん!パフェだけだとお腹空いている!わたしもラーメン食べたい!」


「俺の妹も大概だしな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ