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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

14歳 花の跡

作者: えりざら氏


この話、書くかどうか、めちゃくちゃ迷った。

思い出すだけで泣けてくるし、

書いてる途中でも何回も、涙が止まらなくなった。


でも、それでも書こうと思ったのは、

私みたいに、今まさに苦しい人がいるって思ったから。

居場所がないとか、死にたくなるとか、

わかるよって、伝えたかった。


こんな私でも、生きてる。

間違って、転んで、ぐちゃぐちゃになって、

それでも、やり直せた。

そんな話を、残したかった。


この物語が、誰か一人の心にでも届いたら、

私は、書いてよかったって思える気がする。


――私の左腕には花が咲いている。

あのとき、自分を傷つけた場所に。

過去を隠すためじゃない。

生き延びた証として。

私は今でも、あの日のことを、花の根っこのように心に持っている。


14歳の私には、見た目のコンプレックスがあった。

「デブ」「豚」「死ね」

言葉が刺さるたび、私は自分を見失っていった。


でも、あの“事件”がきっかけだった。

サッカー部の、みんなに好かれている男子。

「社会の教科書がない」

ただの一言から、すべてが始まった。


松本えりこの机にあるんじゃねぇ?」

教室に響いた冗談めいたその言葉。

笑い声とともに、全員の視線が私に集まった。


ないはず。

絶対に、ないはず。


でも、机の引き出しをあけたその瞬間――

あった。

本当に、あった。彼の教科書が。


誰かが、入れたんだ。


目の前がぐらぐらと揺れた。

聞こえてきたのは、嘲笑、罵倒、怒号。

「盗んだんじゃねえの?」「最低じゃん」

「やっぱ太ってるやつって、性格も腐ってる」


この日から、私の居場所はどこにもなくなった。



毎日が、地獄だった。


盗ってないのに。

盗んでなんかいないのに。


なのに私は、教室の空気ごと追い出されていた。

視線の刃が突き刺さる。

ひそひそと聞こえる「死ねよ」の声。

机に書かれる落書き。

上履きがゴミ箱に捨てられていたこともあった。

給食に異物が混ぜられていたこともあった。


でも、誰にも言えなかった。


先生には言えるはずない。もっと酷くなる。

父には心配かけたくなかった。

友達も、いたはずの子たちも、離れていった。


頼る場所なんて、なかった。

逃げ道も、なかった。


死ね、死ねよ、死ねって

毎日、どこかから聞こえてきた。


生きてるんじゃねえよ。

早く自殺しろよ。

そんな言葉を、当たり前のように浴びせられた。


私は、心を閉じた。

無表情で歩き、うなだれて座り、だれの目も見なかった。


自分が悪いんだと思った。

こんな自分なんて、生きている価値がないって。

誰かに「違うよ」と言ってほしくて、

誰にも気づいてほしくて、

でも、誰にも届かなかった。



ある日の体育の授業。

私はいつも通り、青いジャージに着替えようと体操袋を開けた。


……そこで、息が止まった。


中に入っていたはずのジャージは、

ぐちゃぐちゃに切り裂かれていた。


布の端がボロボロになっていて、

はさみで無理やり裂かれたみたいな跡だった。


一瞬、頭が真っ白になった。


後ろの方からクスクスと笑う声が聞こえる。

「え、まじでやったの?」

「ウケるんだけど」

そんな声が耳の奥に残った。


だいたい、誰がやったのかはわかっていた。

あの女子たちだ。


でも、証拠なんてないし、

何より――私は誰にも言えなかった。


涙が出そうになったけど、

ここで泣いたら、もっと笑われる。

だから、何もなかったふりをして、

ぐちゃぐちゃのジャージを体操袋に戻した。


そのまま、教室を飛び出した。

とにかく、どこか遠くへ逃げたくて。


廊下の角を曲がったところで、女性の先生とばったり出くわした。


「……どうしたの?」


私の顔を見て、すぐに察したのだと思う。

そして体操袋を見て、中をのぞいた。


先生の顔が変わった。

静かに、ジャージを広げた。


私は思わず叫ぶように言ってしまった。


「言わないでください……。

誰にも言わないでください。

お願いです……。もっとひどくなるから……」


先生は、何も言わずに、ただ、私の肩に手を添えてくれた。

その手が、あたたかかった。

だからこそ、余計に悲しかった。


「わかりました」と、その先生は言ってくれたけど、

私はその優しさすら、誰にも知られたくなかった。


守られることも、私には怖かった。




でもね、その日のホームルーム。

あの女性の先生が、前に立って言ったの。


「このジャージを見てください」

そして、私のズタズタに裂かれた青いジャージを、みんなに見えるように掲げた。


教室が、一瞬にして凍りついた。


私は、息が止まりそうになった。


「松本さんのジャージです。

こんなことをした人が、クラスにいる。

これは、いじめです。犯罪です。

この中に心当たりがある人がいるなら、名乗り出なさい」


正義感だったのか、私の味方をしてくれたつもりだったのか、

先生の気持ちはわからないわけじゃなかった。


でもその瞬間、みんなの視線が一斉に、私に刺さった。

冷たい目。あざける目。面白がる目。

黙ったままの無数の視線が、私の全身を撃ち抜いた。


私は――絶望した。


終わった。

また、もっとひどくなる。


「チクった」って言われる。

誰にも言うなって言ったのに。

信じたのに。


心臓がバクバク鳴って、頭がぼんやりして、足が震えて、

私は机の下で手を握りしめていた。


唇を噛みながら、ただ嵐が過ぎ去るのを祈ることしかできなかった。


この日から、私はもっと、

誰にも頼らないって決めた。



もう、大人も信用できない。

誰も――信用できなかった。


あの先生にさえ裏切られたような気がして、

誰かに助けを求めることが、怖くなっていた。


案の定、いじめはさらに酷くなった。


「てめえ、センコーなんかに頼りやがって、気持ち悪いんだよ、豚が」

「死ねよ。生きてて恥ずかしくないの?」

「お前の顔なんか、もう見たくねぇんだよ」


休み時間になるたびに、悪意のある言葉が飛んできた。

教室のすみにいる私のほうへ、わざと大きな声で。


「早く死ね」

「死ね、死ね、死ね――」


罵詈雑言の嵐。

人の声じゃないように思えるくらい、汚い言葉が降ってきた。


ある日の授業中。

教室の後方から、ゴツンッという鈍い音が鳴って、

私は痛みに肩をすくめた。


野球ボール。

誰かが投げたそれが、私の背中に命中していた。


思わずうめいたけど、誰も心配なんかしない。

笑い声だけが後ろから聞こえてくる。


先生は黒板に向かっていて、気づかないふりをしていた。

たぶん、気づいていた。

でも、何も言わなかった。


私はノートを取りながら、何もなかったふりをして、

目の奥に涙を溜めた。


泣いたら負け。

泣いたら、また笑われる。


もう、どうでもよかった。

このままいなくなってしまえば楽だって、

そんな考えがふとよぎって、私は机の上にただ、下を向いていた。





だけど、嬉しいことも

やっと夏休みが来るの。


あんなにも待ち望んでた「行かなくていい日」。

教室に行かなくてもいい日。

誰にも会わなくていい日。

何も言われなくて済む日。


やっと、やっと夏休み。

だけど――解放されたようで、どこか心が空っぽだった。


ぽっかり穴のあいた毎日の中、

何気なくつけたテレビから、「リストカット」という言葉が耳に入った。


画面の中で誰かが、

自分で手首を切っている行為を「自傷」と呼んでいて、

私は、ああ――これかもしれない、って思った。


心の奥底でずっと、言葉にならない何かが渦巻いていて、

その何かに触れられたような気がして、

私はそっと、自分の左手首に目をやった。


そして――

おもむろに、何の感情もないような顔をして、

私は、自分の手首を傷つけてみた。


最初は怖かった。

でも、刃が肌を裂いて、小さな赤が滲んだとき――

なぜだろう。

少しだけ、少しだけ、息ができた気がしたの。


痛みが、悲しみを飲み込んでくれるような気がした。

誰にも言えなかった感情を、

この左腕だけが、全部、全部受け止めてくれる気がしたの。


だから私は、

何度も、何度も、何度も――

自分を傷つけた。


血が出るたびに、

「大丈夫だよ」と言ってくれるような気がした。

「ここにいるよ」って、誰かにやっと抱きしめられた気がした。


それが私にとって、

この世界で、唯一の「分かってくれる存在」だった。



それでね、

私は父と二人で暮らしていたから、

手首の傷を見せないように、

毎日、袖の長い服を着て、

何もなかったように生活をした。


お父さんは気づいていたのかもしれない。

でも、何も言わなかった。

いや――私が気づかれないようにしてただけなのかも。


そして、夏休みが終わった。


ずっと先だと思っていたその日が、とうとう来てしまった。

新学期。

また、あの地獄に戻る日。


でもそのとき、私は心に決めていたの。


「もし、また“死ね”って言われたら――

 今度こそ、本当に、目の前で死んでやる」って。


もう、耐える必要なんてない。

私が死んだら、満足するんでしょう?

私がいなくなったら、笑えるんでしょう?


みんなが望んでたことでしょ?

なら、叶えてあげるよ。

そう思った。


遺書も書いたよ。

びっしりとノートに書いた。

誰に何をされたか、全部、全部書いた。


「私はこうして消えます。

 だから、あなたたちはそれをちゃんと見てくださいね」って。


そうやって、自分の存在を消すことでしか、

この世界から抜け出せないって、

本気で思ってた。



案の定ね。

学校に行ったらさ。


「死ねよ」

「キモイんだよ、お前」

「なんで生きてるの?意味ねえじゃん」

「自殺すれば?誰も止めないよ」


教室の後ろから聞こえる声。

男子たちの嘲笑と悪意の矢が、また今日も飛んできた。


ああ、やっぱりそうだ。

何も変わっていない。

夏休みを越えても、私の居場所なんてなかった。


私は静かに立ち上がると、制服のポケットに手を入れた。

ずっと入れていた、小さなカッター。

冷たくて、鋭くて、でも、

唯一私の痛みを受け止めてくれる“道具”。


これで、終わらせよう。

誰にも届かなかった私の気持ちを、今ここで、

はっきり“見せつけてやる”。


そして、私は――

今までにない力で、

左腕を深く、深く、切りつけた。


ぱっくりと開いた皮膚。

白い脂肪が見え、真っ赤な血が溢れ出す。


「……これで満足?

 死ねって、言ってたよね?

 ねえ、見て?これが、あなたたちの望んでたことでしょ?」


声が震える。涙が出る。だけど、止まらない。


「遺書も書いたよ。

 ちゃんと、あんたたちの名前も書いた。

 “あんたたちに殺されました”って。

 よかったね、夢が叶うよ」


教室中が凍りついて、

誰も、何も言えなかった。


だけど私は、はっきり聞こえた。

さっきまで「死ね」と言っていた男子たちの、

ガタガタと震える声と、逃げるような足音。


誰かの悲鳴。

誰かのすすり泣く声。

でも、私はもうどうでもよかった。


この血がすべてを流してくれる。

そう信じたの。




先生たちが駆け寄ってきた。

誰かが「止血!早く!」って叫んで、

誰かが私の手首にタオルをきつく巻きつけて。


ぎゅっと締められて痛かったけど、

そんな痛みより、心がすこし軽くなってた。


「松本、大丈夫か?」「しっかりしろ!」

何人もに囲まれて、まるで“急に大切にされた”みたいで、

それがなんだか、おかしくて。


私は静かに、連れていかれる。

保健室へ、そして病院へ。


騒ぎは学校中に広がって、

あれだけ私のことを見向きもしなかった人たちが、

今は「大丈夫だったの?」

「松本がそんなことを…」なんてヒソヒソ言ってる。


それを聞きながら、私は心の中でこうつぶやいた。


「ああ、そうか。

 “切ればいいんだ”って、こういうことか」


死ねって言われるたびに、

教科書投げられるたびに、

ジャージを破かれるたびに、

私の中で“答え”が生まれてしまった。


「ああ、そうか。

 切れば、もう“死ね”って言われないんだ。

 いじめられない。

 誰も、何も言わない。」


怖かった。でも、それよりも――

安心した。

「簡単じゃん」って、思っちゃったんだ。


私の存在の証明が、

“傷”になってしまった瞬間だった。




家に帰ると、お父さんが玄関まで飛び出してきた。

「えりこ、大丈夫か…!」って、私の顔を見て言った。

私はうなずいたけど、腕の包帯は隠しきれなかった。


お父さんはいつも優しい。

私をとっても大事にしてくれてるのは、ちゃんとわかってた。

でも、私はいじめられてること、言えなかった。

心配させたくなかったし、迷惑もかけたくなかった。


だけど、その日のお父さんは違った。

私の包帯を見た瞬間、顔色が変わって、

怒りでいっぱいになったような目で言ったの。


「誰だ、えりこにそんなことを言ったのは。

 いじめてた奴の名前を言ってみろ。電話してやる。

 家まで行ってやってもいい。許さねぇ。

 お前にそんなことさせるなんて…絶対に許さない。」


お父さんのその目には、

私のために怒ってくれてる、真剣な気持ちがあった。


私はびっくりして、そして少しだけ泣きそうになった。

優しいだけじゃない、

私を守るために、本気で怒ってくれるお父さんがそこにいた。



私は、父に全部話した。

ずっと隠してたこと。

死ねって言われ続けたこと、

教科書を机に入れられたこと、

ジャージを切り裂かれたこと、

誰がやったのか——全部。

泣きながら、一つひとつ、言葉をつなげて話した。


お父さんは黙って聞いてたけど、

手が震えてた。目の奥が怒りでギラギラしてた。


「……許せねぇ。」


それだけ呟くと、すぐに電話を取り出して、

いじめてたやつの代表の男子、

一番ひどかったあいつの家に電話をかけたの。


「おい、〇〇って家か? おたくの息子、うちの娘に何してくれたんだ!

 こっちはな、腕に何十本も傷があるんだぞ!」


でも、出たのはその子の母親だった。

「うちの息子が、そんなことするわけありません」

の一点張り。


何を言っても、聞こうとしなかった。

息子を信じてるって、目をそらしてるだけだった。


父は何度も、何度も言った。

「おたくの息子が、うちの娘を追い詰めたんだよ!」って。

でも、相手は全然変わらない。謝罪も、認める気配もない。


電話を切ったあと、父は机をドンッと叩いて、

「何なんだよ……!ふざけんなよ……!」

って怒鳴った。


その怒鳴り声は、

私のために怒ってくれている声だった。


悔しかったんだと思う。

こんなに苦しんでる娘がいて、

ちゃんと訴えたのに、何も変わらない現実に。


お父さんの怒りは、私の代わりに叫んでくれてるみたいだった。



そして父は、私の頭をぐしゃっと撫でながら言った。


「学校なんか、もう行かなくていい」

「無理して行く必要なんか、どこにもない」

「そんな、毎日地獄みたいな思いをしてまで行く場所じゃない」


私は目を見開いた。

ずっと「頑張って学校に行かないといけない」って、

自分を責め続けていたから。


「いいか、えりこ。世界はもっと広いんだ」

「今の学校がすべてじゃない。そこが合わなきゃ、他を探せばいい」

「勉強なんて、やろうと思えば家でもできる」

「そんな地獄みたいな場所に、お前の人生を削られる必要なんか、どこにもない」


お父さんの声は、怒りながらも震えていた。

たぶん、自分を責めてもいたんだと思う。

気づいてあげられなかったこと、守ってやれなかったこと。


でも私はそのとき、

「……行かなくていいんだ」って、

初めて誰かに許された気がした。


「大丈夫。えりこは、大丈夫だよ」

「お父さんがついてる。どんな選択をしても、お前を守るから」


その言葉が、

私の心に、少しだけ温かさをくれた。




でもね、今思えば、私はまだ子どもだった。

お父さんのあの優しい言葉も、

「学校に行かなくていい」って言葉の、本当の意味も、

ちゃんと受け止めることができていなかった。


私はただ、

「行かなくていいんだ」っていう表面だけを握りしめて、

その優しさの裏にある、「それでも生きてほしい」「前を向いてほしい」って気持ちは、

ぜんぜん見えてなかった。


毎日、朝起きて、テレビをつけて、

ただただぼーっと、時間が流れるのを待ってた。

悔しかった。

悲しかった。

何もできない自分が、情けなかった。


でも、心の奥の奥ではずっと叫んでた。

「私、変わりたい」って。

「どこか、ここじゃない場所に行きたい」って。


ある日、私は自分のお財布を開いた。

中には、これまでのお小遣いやお年玉をためていた数万円が入ってた。

それを見たとき、思った。


「このお金があれば、どこかに行けるかもしれない」


そして、私は着替えて、荷物も持たず、

電車に乗って、渋谷に向かった。


理由なんてなかった。

「ここじゃない場所に行きたい」

それだけだった。


ただ、逃げたかった。

過去も、学校も、自分自身も、ぜんぶから。






そして、初めて降り立った渋谷駅。

人、人、人。

見渡す限りのキラキラした世界。


女の子たちはみんな可愛くて、

自信に満ちていて、

華やかな服を着こなしてた。


メイクもバッチリで、

髪は茶色や金色に染まってて、

大人っぽくて、個性的で、

どこか雑誌の中から飛び出してきたみたいだった。


なのに私は──

Tシャツには犬のプリント。

しかも、それがちょっとコミカルで、

どう見ても子どもっぽい。

足元は、ただのスニーカー。

ジーパンも、ただのジーパン。

ファッションの“ファ”の字もない。


私は、あまりに場違いだった。


まるで自分だけが“白黒の世界”で、

周りはみんな“カラー”だった。


恥ずかしくて、

顔を上げるのがやっとだった。


「私、なんでここに来たんだろう」

そう思った。


でも、戻りたくなかった。

あの家にも、学校にも、日常にも。

戻る場所がないから、私はここにいるしかなかった。



私は変わりたかった。

あの教室の中で「醜い」と思われていた私じゃなくて、

渋谷にいるキラキラした女の子たちみたいになりたかった。


だから私は、109に向かった。

テレビで何度も見たことがある、

“おしゃれの聖地”みたいなところ。


エスカレーターを上るたびに、

どんどん現実から離れていくような感覚だった。


ふと足を止めたお店の前。

マネキンが着ていたコーディネートに目が釘付けになった。

ショート丈のトップス、デニムスカート、

可愛いアクセサリー、白の厚底サンダル──

全部が眩しかった。


私はセンスに自信がなかったから、店員さんに言ったの。

「これ、マネキンのまんまでください」って。


ちょっと驚いた顔をしながらも、

店員さんは優しく応えてくれて、

サイズもちゃんと見てくれた。


お金は、数万円持ってたから足りた。

お財布から札を出す手が、少し震えてた。

でも──手に入った。


そして、試着室で着替えたら、

鏡に映った私は──まるで別人だった。


「え……私?これ……私?」


髪はボサボサだし、ノーメイクなのに。

でも服を変えただけで、

こんなにも気持ちが変わるんだって驚いた。


“あの”えりこじゃない、

“なりたい”えりこに、ほんの少しだけ、近づけた気がした。



新しい服が手に入って、すごく可愛くて、

私はもうちょっとだけ、自分を変えてみたくなった。


次に向かったのはコンビニ。

なんとなく雑誌コーナーを見ていたら、目に飛び込んできたのが――

**『eggエッグ』**だった。


表紙の女の子たちは、まるで芸能人みたいにキラキラしてて、

メイクも髪型も表情も全部、自信に満ちてた。


私はその雑誌を手に取って、ページをめくった。

「ギャルメイク入門」みたいなコーナーがあって、

マスカラ、アイライン、チーク、グロスの塗り方まで、

一から丁寧に載っていた。


「これだ……これなら、私にもできるかもしれない」って思った。


私はその雑誌を買って、

次はドラッグストアに向かった。

プチプラコスメのコーナーで、

雑誌に載っていたものを探しながら、

アイシャドウ、マスカラ、チーク、リップ、

必要そうなものをひと通りカゴに入れた。


全部で数千円だったけど、

その時の私には“未来”を買ったみたいな感覚だった。


109のトイレにこもって、

雑誌を見ながら一つずつ塗っていった。


時間はかかったし、

うまくいかない部分もあったけど──

でも、鏡の中の私は、確実に“変わって”いた。


「可愛い……かも」


自分で自分を見て、

ちょっとだけ笑っちゃうくらい、

ほんの少しだけ、自分を好きになれた気がした。


まだお金には余裕があった。

次に欲しくなったのは、髪の毛の色。


みんなみたいに、キラキラしたかった。

黒髪のままじゃ、あの頃の「私」のままな気がして。

髪の毛を変えれば、もっと変われる気がした。


私は思いきって、美容室に飛び込んだ。


「茶髪にしてください」

ちょっと震える声だったけど、ちゃんと伝えた。


美容室のお姉さんは、優しく微笑んで、

「うん、任せて。すごく可愛くなるよ」って言ってくれた。


シャンプーをしてもらって、

ブリーチの匂いがふわっと鼻をくすぐって、

染まっていく途中の髪を鏡で見ながら、

「本当に変われるのかな」って、

でもどこか、ワクワクしてる自分がいた。


丁寧にブローされて、

カットもしてもらって、

仕上がった自分を見たとき――


**「え?私……誰?」**って思った。


まるで雑誌から出てきたみたいな、

モデルみたいなお姉さんみたいな髪型。


メイクもバッチリ、服装もバッチリ。

完璧だった。


鏡の中の私は、

あの教室で泣いてた私じゃなかった。

あの、犬のTシャツにジーパンの子じゃなかった。


新しい「私」になれた気がした。





それからね、渋谷の街を歩いていると、

なんと——ナンパされたの。


あの私が? って思った。

制服のスカートを引きずって歩いていたあの頃の私が?


でも本当だった。

男の人たちがチラチラと私に声をかけてくる。


「ねえ、どこ行くの? 飯でも行かない?」

「お姉さん、めっちゃ可愛いじゃん」


え、うそ。

私、こんなふうに見られる存在になったの?


びっくりした。

嬉しかった。

……ほんの少し、救われた気がした。


いじめられて、無視されて、死ねって言われてた私。

でもこの街では、ちゃんと“女の子”として扱ってもらえた。


その日は、ナンパしてきた男の人にご飯をおごってもらった。

お金も心もギリギリだったから、

温かいご飯に、お腹も心も満たされていった。


そうやって、私は渋谷でなんとか生きていた。


寝る場所は、公園のベンチだったり、

漫画喫茶のリクライニングチェアだったり。


決して快適じゃなかったけど、

あの教室より、ずっと呼吸がしやすかった。


楽しかった。

自分で決めて、自分の足で歩いてたから。

ちょっと危なっかしいけど、自由で、心地よかった。




でもね、そんな生活も、

いつまでもは続かなかった。


お金が、ついに——

底をつきそうになってきたの。


ああ、もうダメかもって思った。

でも、帰りたくなかった。

帰ったら負けな気がしてた。

「ほらね、何も出来ない負け犬」って聞こえてきそうで。


だから私は、その夜も公園にいた。

ベンチにうずくまって、眠ろうとしてた。


そしたらね、

一人のお兄さんが声をかけてきたの。


「どうしたの? 家出?」


……ドキッとしたけど、

私はうなずいた。嘘はつけなかった。


「うち来る? 女の子もいるしさ、安心だよ」


——そう言われて、私は信じてしまったの。


“女の子もいる”って、その言葉だけで安心してしまった。

誰かが泊めてくれるなんて思ってなかったから、

「助かった」って本気で思った。


危機感なんて、ゼロだった。


だって、私はただ、

眠る場所がほしかった。

安心できる場所が、

ほんの少しだけでもほしかったから——





でもね、

そんなの、全部嘘だった。


私がついて行ったその男は、

笑顔なんて一瞬で消えて——

茂みの中で急に私を荒々しく押し倒してきた。


「え……? ちょっと、やだ……!」


でも、もう遅かった。

体が動かなかった。

必死に拒んでも、無視された。


痛みが走った。


私は、

処女を喪失した。


「ああ、何これ……? どういうこと?」

わけがわからなかった。


でも、確かに感じていた。

体の奥からくる激しい痛み。


頭がぐるぐるして、涙も出なくて、

ただ、呆然としていた。


「……ああ、そうか」

騙されたんだ。


大事にしていたわけじゃないけど、

何か、とても大切なものを

奪われてしまった気がした。


そして、

男は何事もなかったかのように立ち上がって、

私を見下ろして言った。


「ほらよ」


そう言って、

数万円のお金を私の前にばらまいて、

そのまま去っていったんだ。


私は、地面に散らばったお金を見つめてた。



私はその場に座り込んだまま、

ばらまかれたお金を泣きながら、ひったくるようにして握りしめた。


涙が止まらなかった。

でも——お金は大事。


この街で生きるには、お金が必要。

どれだけ悔しくても、惨めでも、

それを拾わない選択肢なんて、私にはなかった。


震える手で、必死に拾い集めながら、

私は、どこかで何かが壊れていく音を聞いた気がした。




処女を喪失した今、

私はとにかく、夜の渋谷を歩いた。

歩いてないと、自分がどこかに消えてしまいそうだった。

現実から逃げるために、ただただ人波の中に紛れていたかった。


そんなときだった。

一人のおじさんが、私に声をかけてきた。

「3万でどう?」って。


……その意味は、もう私には分かっていた。


私は、ほんの一瞬だけ考えて、

「いいよ」って言った。


あのときの自分は、

もう何も守るものなんて残ってないって思ってた。

どうにでもなれって、思ってた。


その瞬間、私は“汚い大人の世界”に、足を踏み入れた。


戻れないって、わかってた。

でもそれでも、私はもう戻りたい場所すら、なかったのかもしれない。




大人って、ほんとに汚い。

14歳の私を、金で買うんだよ?

信じられなかった。

それでも、現実だった。


「大丈夫?」なんて優しい言葉をかけてくるおじさんもいた。

でも――どうせ全部、嘘。

だって、この世界はこんなにも汚くて、

優しさの裏には、いつも“代償”があるって、私は知ってしまったから。


それでもね、

私の手元には、大金が入った。

見たことのない、重たいほどの札束。

おじさんたちと体を重ねるたびに、

お金はどんどん膨らんでいった。


私の世界は、

音を立てて、変わっていった。






でもね、ある日――警察に補導されたの。

深夜の渋谷。

「君、何してるの?年はいくつ?」

警察官の声は、妙に優しくて、それが逆に怖かった。


そのまま私は、渋谷警察署に連れて行かれた。

「保護者に連絡するからね」って言われて、

…お父さんに連絡がいった。


捜索願いが出てたんだって。


私は警察署のソファで、小さくなって待ってた。

変わり果てた私。

茶髪、濃いメイク、派手な服。

渋谷の女の子を真似た“新しい私”。


そして、ガチャ…ってドアが開いて、

お父さんが走ってきた。


「……えりこか?」


一瞬、表情が止まった。

でも次の瞬間には、

「えりこ……心配したんだぞ!」って

涙目で、私をぎゅって抱きしめた。


何も言わずに、何も責めずに。


私がどんな姿をしていても、

それでも「えりこ」だってわかって、

全てを包み込むように、

お父さんはただ、私を抱いてくれたんだ。





私はもう、本当にグレてしまってた。

お父さんに抱きしめられても、

心の奥ではまだ尖ってた。

許せないものがたくさんあった。

信じられないものもたくさんあった。


それでも、お父さんに連れ戻されて、

私は家に帰った。

渋谷でのあの日々が、夢みたいに遠ざかっていった。


だけどね、

それでも私は、変わりたかった。


家に帰っても、

普通の生活に戻ったとしても、

私は、変わった私を捨てたくなかった。


もっと可愛くなりたかったし、

もっと強くなりたかった。


そして――

あの学校の奴らに見せつけたくなったんだ。

私をいじめてたやつらに、

「見ろよ、私を」って。

「私はもう、前の私じゃない」って。


悔しさと、

変わりたいって気持ちと、

渦巻く感情の中で、

私は新しい自分を探しはじめてた。




だって、私はもう変わったんだもん。

あいつらなんて、まだ全然子供。

自分でお金を稼ぐこともできない。

社会も知らない。現実も知らない。

痛みも、怖さも、何も知らない。


ただ、学校っていう、ちっぽけな世界の中だけで生きてる。

毎日、同じ制服着て、同じ教室にいて、

同じ顔ぶれで、同じ空気を吸って、

その狭い世界で強いフリして、

誰かをいじめて、笑ってるだけ。


そんな奴らが――私に勝てるわけない。


私は、

世界を見た。

大人の世界を、汚い現実を、

痛いほど知った。


怖い思いもしたし、

騙されたこともあったけど、

私は、自分の足で歩いてきた。


だから、

あいつらが私を見下せる時代なんて、

もうとっくに終わったの。


私はあの頃の私じゃない。

ただ泣いてるだけの私じゃない。


今度は――

私が見下ろしてやる番だって、思ったんだ。




そして、朝になって、私は鏡の前に立ってメイクを丁寧に仕上げた。

髪の毛も綺麗に溶かして、ふわっと巻いて、

あの頃と違って、私の目にはもう迷いなんてなかった。


いつもの制服を着る。

でも、スカートはグッと短くして、

開けたばかりのピアスをバチバチに光らせて。

どこからどう見ても、"前の私"ではない"新しい私"。


そうやって私は――学校に行った。


昇降口を抜けた瞬間、

生徒たちの空気が変わるのがわかった。

「え……?誰?」

「マジ?あれ、松本……?」

「やっば……なんか超変わってね?」


ギョッとする目。ひそひそ声。

だけど、私は堂々と歩いた。

下を向かない。もうあの日の私じゃない。


でもね――びっくりしたんだ。


教室に入ったら、

いじめは……なくなってなかった。


ただ、

その標的が、私じゃなくなっただけ。


もっと地味な女の子が、

私がされてたようなことをされてた。


机にゴミが入れられてて、

陰で「死ねよ」とか「ウザくね?」って声が聞こえてきた。


ああ、これが学校って場所なんだ。

誰かを生贄にして、笑っていられる世界。

ターゲットが変わるだけで、本質は何も変わってない。


私は――

あのとき助けてくれなかった周りと、

そっくり同じ場所に、今は立っていた。


だけど、私はもうあの頃みたいに泣かなかった。

それが、大人になったってことだったのかもしれない。



私のことを一番にいじめていた男子。

教室の隅で、いつもの仲間たちとゲラゲラ笑いながら、

今度は地味な女子をからかってた。


「マジきもいよな、お前。なぁ?なぁ?死ねよ〜」

お決まりのセリフ。

あの時の私が受けた言葉と、寸分違わない。


だけど、

そいつは――

自分の背後に、私が立っていることに気づかなかった。


私は、無言で近づいて、

ポンッと、そいつの肩を軽く叩いた。


ビクッと振り返る、顔。


私は、真っすぐその目を見て、言ったの。


「……ダセェな。」


教室の空気が止まった。

みんなが静まり返った。


「お前が死ねよ。お前こそいらねぇんだよ、このクズが。

まだそんな子供みたいなことしてんの? バッカみたい。

お前らみたいな人種、なんて言うか知ってる? “クズ”って言うんだよ。」


男子は、私を見て、言葉を失ってた。

目を見開いて、口を開きかけて……でも、何も言えない。


「呆れちゃうよ。まだこんなことやってるんだ。飽きないね。」

冷たく、ゆっくり吐き捨てたその言葉に、

そいつの顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。


私はもう、

あの頃の私じゃなかった。




「ねえ、僕ちゃんはどうしたらいじめやめるのかな?」


私はそう言って、

ゆっくりと制服のポケットから財布を取り出した。

中から――綺麗に揃えられた札束を見せつけるように広げた。


「お金、あげたらやめてくれるの?そういうダサいこと。

それとも、どうしたらやめてくれる?教えて、クズくん。」


男子は一瞬ぽかんとして、

でもすぐに、目の奥がギラギラと輝いた。

「え……え、くれるの?」って、

言葉には出さないけど、顔にぜんぶ出てる。


本当に、バカ。

本当に、ダサい。

情けなさすぎて、笑いそうになった。


私は無言で、数枚の一万円札を――

バサッと、教室の床にばらまいた。


ひらひらと舞うお金に、男子たちが群がる。

床に這いつくばるみたいにして、札を拾い集める姿が、滑稽すぎた。


その光景を背にして、

私は、いじめられていたあの地味な女の子の手を、

スッと取った。


「……行こっか。」


彼女は驚いた顔をしてたけど、

私の手をちゃんと握り返してくれた。


誰も追ってこなかった。

お金を拾うのに夢中で、私たちを見ていなかった。



校舎の裏――人気のないフェンス沿いの道に、私はその子を連れていった。

手を引いているあいだ、彼女はずっと泣いてた。

声も出せないくらいに、震えながら、涙だけがぽろぽろ落ちていく。


私は何も言わずに、ただ一緒にそこまで歩いた。

教室の喧騒も、金を拾うバカたちの声も、もう聞こえない。


そして、静かになったその場所で、私はしゃがみこんだ。

彼女も私の隣にしゃがんだ。


「……辛いよね。苦しいよね。」


私がそう言うと、彼女は顔を伏せたまま、かすかにうなずいた。

その震え、息の詰まり方、肩のすくめ方――全部が、あの頃の私と同じだった。


「わかるよ。すっごくわかる。私も、そうだったから。」


言葉を出しているうちに、自分の胸の奥がギュッと締めつけられた。

あのときの絶望、孤独、無価値感。誰にも助けてもらえない感覚。

あの闇の中に、彼女も今、いるんだと思った。


私はそっと、彼女の背中に手をまわした。

拒まれるかと思ったけど、彼女は逆に、ぎゅっと私にしがみついてきた。


「……死のうとか、思ったでしょ」


彼女はこくん、と首を縦に振った。


「わかるよ。私も、そうだった。でもさ――」

私はゆっくり、彼女の耳元で言った。


「ここまで生きてきたじゃん。

しかも今、貴方ををいじめてたやつら、札束に群がってんだよ? ダサくない?」


彼女がふっと、小さく笑った。

ほんの、ちょっとだけ。


それだけで十分だった。




そして私は、それからも毎日、あのスタイルで学校に行った。

メイクして、髪の毛も整えて、制服はスカート短め、ピアスもそのまま。

だけど――ポケットの中には、ずっとカッターを忍ばせていた。


何があってもおかしくないって、どこかで思ってた。

また誰かに何か言われたら、そのときは――って。


そして、ある日のことだった。

廊下ですれ違いざま、あのバカが私の方をチラッと見て、

ニヤッと笑って、吐き捨てたの。


「死ねよ。」


――懲りねぇなぁ。って思った。

こっちはもう何度も地獄見て、戻ってきたってのに、

まだそんな言葉しか吐けねぇのかって、あきれた。



まだそんなこと言ってるなんて、本当にバカだなって思った。


「はいはい」って、心の中で呟いて――

その瞬間、私は無意識にカッターに手を伸ばしてた。


ポケットから引き抜いた、それは小さな刃。

ただ、それを持ってるだけで、自分を守れるような気がしてた。


でも――


「待ちなさい!」


パッと現れたのは、男の先生だった。

焦ったように私の腕を掴もうとした。


その一瞬で、ほんの少しだけ――

先生の手のひらにカッターの刃が触れた。


ピリッ――と、赤い線が走った。

数ミリの、浅い傷。

でも、私には十分すぎる衝撃だった。


「……あっ……」って、思わず声が漏れた。


私は、先生を傷つけるつもりなんてなかった。

カッターは、ただの“お守り”だった。

自分を守るためのもの。

怖くなったときに、自分を消すためのもの。


なのに――


先生の手からポタッと落ちた、赤いしずく。

私の中で、何かが崩れた。


「やばい……やばい……!」


頭の中が真っ白になって、

私は逃げた。走って走って――

気づけば、家の前に立っていた。


心臓がバクバクしてて、息も荒くて、

でもなにより、胸の奥がギュウッと痛くてたまらなかった。




私は焦った。

心臓がドクドクしてた。逃げたけど、ずっと頭の中がぐちゃぐちゃだった。


そして――

しばらく家にこもってたら、家のチャイムが鳴った。


警察だった。

本当に、警察が来た。


お父さんがドアを開けて、少ししてから私の名前が呼ばれた。

玄関に行くと、警察の人が真剣な顔で私に言った。


「先生を殺そうと思ったの?」


その言葉に、私は固まった。

息が止まったみたいに、何も言えなかった。


本当は――そんなつもりなかった。

先生を傷つけるなんて、考えてもなかった。

あのカッターは、“自分”のためのものだったのに。


でも……

でもね、私は、子供だった。

すごく幼くて、すごく心が荒れてて、

誰かの優しさを受け取る余裕も、うまく言葉を選ぶ力もなくなってた。


だから、つい口にしちゃったんだ。


「うん、殺そうと思った。」


……違うのに。

本当は全然違うのに。

でも、もう言っちゃったら戻せなかった。


警察の人は優しかった。

怒鳴ったりもしなかった。

ただ静かに、淡々とこう言った。


「そう言うなら、それは殺人未遂になっちゃうんだよ。」


……殺人未遂。


その言葉の意味なんて、まだ私にはちゃんと理解できなかった。

重さも、現実も、ぜんぶ宙に浮いてて、

私は黙り込んでしまった。


そしたら、警察の人は私を連れて行った。

「傷害の容疑で」とだけ言って。


私は、制服のまま、うつむいて靴を見ながら、

家を出た。


お父さんの声が後ろから聞こえてたけど、振り返れなかった。

なんだか、もう、全部がどうでもよくなってた。




こうして私は、少年勘別所に入れられた。

壁の色は無機質で、空気はいつも冷たくて、

時計の音だけが、やたら大きく響いた。


反省しろって言われても、

私には、どれをどう反省すればいいのか、本当にわからなかった。


私がしたことは確かに悪かった。

でも――私、ただ強くなりたかっただけなんだよ。

ただ、生きていくための力が欲しかっただけ。

それだけだった。


それなのに。

どうして。

なんで、私だけ。


だって、私を買った大人たちは?

私の体に触れて、名前も聞かずに金を投げた男たちは?

誰一人、名前も顔も晒されずに、普通の顔して社会にいる。


あいつらは裁かれないのに、

どうして、私だけがこんなところにいるの?


どうして、私だけが「有罪」なの?


どうして、私ばっかり罰を受けなきゃいけないの?


私はまだ十四歳だよ。

なのに、世界はもう私に「罪」ってラベルを貼った。

大人たちは知らん顔してるくせに。


あの時の怒り。

悔しさ。

やるせなさ。


胸の奥でずっと渦巻いて、

「なんで?」「なんで?」「なんで?」って、

気づいたら毎晩、心の中で叫んでた。


だけど――誰も答えてくれなかった。




そして――審判が行われた。

売春、そして傷害。

あのカッターの一件。


少年審判官は静かに、でも淡々と告げた。


「児童自立支援施設、国立きぬ川学園に1年7ヶ月送致します。」


……え?


頭が真っ白になった。

思考が止まった。


「帰れないの? 家に?」

「お父さんにも会えないの?」


声にならない声が喉の奥でつっかえて、

涙も出なかった。

ただ、「え?」って、心の中で何度も何度も繰り返してた。


どうして?

なんで?

なんでそんなに長いの?

1年7ヶ月って何?

そんなに私は悪いことをしたの?


心の中で叫び続けてた。

「帰りたい」

「お父さんに会いたい」

「ごめんなさいって言えば、許してもらえるの?」


でも、誰も私の心の声には答えてくれなかった。


審判官はもう別の案件に視線を向けていた。

周りの大人たちは、決まった書類を整理していた。

私の“運命”が、ただの処理のひとつみたいに進んでいくのを見て、

なんだか私という存在が、すごく小さく、

誰にも必要とされていないものに思えた。


私は罪なんだ。

私は罰される存在なんだ。

そう、決まってしまったんだ――あの日、あの瞬間に。





私は、きぬ川学園に入ることになった。

審判のあの日から数日後、連れて行かれる日が来た。

手錠をかけられて、そのまま車に乗せられた。

あの金属の冷たい感触が、皮膚に食い込んだとき、

「私は本当に罪人なんだ」って、身体で思い知らされた。


行き先は――栃木。

国立きぬ川学園。

聞いたこともない場所。

でもそこに、私は“送られる”。


車にはお父さんも一緒に乗っていた。

横にいたのは、役所関係の大人たち。

みんな真面目な顔で、前だけを見ていた。


お父さんは何度か私に話しかけようとしたけど、

私はわざとそっぽを向いて、黙っていた。

今さら優しくされても、何にも響かなかった。

だって、あの審判で誰も私を止めなかったじゃん。

誰も「この子は悪くない」って、かばってくれなかったじゃん。

ただ静かに処理されて、

“送致”って決められて、

私は連れて行かれてるんだよ?


それなのに、なんで今になって優しそうな顔してるの。

って、まだ心のどこかが尖ってた。


自分の運命を受け入れられなかった。

「これは違う」って、心の中では叫んでいた。

「こんなの間違ってる」って、思ってた。


でも…言葉にはできなかった。

叫べば叫ぶほど、自分がちっぽけになりそうで。

誰にも届かないって、もうわかってたから。


だから私は、何も言わなかった。

車の窓に映った、自分の姿だけをじっと見てた。


そこには、子どもでもない、

大人でもない、

どこにも居場所のない――“私”がいた。






そして私は知ることになる。

きぬ川での生活の厳しさを。


まず驚いたのは、序列の世界。

そこはまるで、軍隊のようだった。

すべてが命令で、すべてがルールで、すべてが監視のもとにある。

入ってすぐに、「下っ端」と呼ばれる立場から始まった。

全員に敬語。先輩には頭を下げて、言われたことは絶対。

反抗すれば、無言の圧が押し寄せる。


最初の仕事は――トイレ掃除だった。


まだ名前も覚えられてない私は、

素手に近い状態で便器を磨かされた。

もちろんゴム手袋は渡されたけど、

冷たくて薄くて、便器の感触がリアルに伝わってくる。

鼻をつくような臭いの中で、

ひたすらひたすら、しゃがんで、こすって。

誰かの汚したものを、私は黙って片づけてた。


その瞬間、涙が出た。

なんで私はこんなことしてるんだろう。

どうしてここまで落ちたんだろう。

どこで間違えたの?

便器を磨くたびに、自分の中のプライドが砕けた。

「もう強いとかカッコいいとか、そんなの全部嘘だ」

って思った。


しかも、それだけじゃ終わらない。

髪の毛も、無理やり短く切られた。

茶髪も許されなかった。

バリカンで刈られるような感覚だった。


鏡を見たとき、知らない誰かがそこにいた。

目を伏せた。

涙が止まらなかった。

こんな惨めな思い、したくなかった。

でも、誰にぶつけていいのかわからなかった。


心が、ぐちゃぐちゃだった。




でもね、

そういうふうに厳しい生活をしていく中で、

私は一つずつ**「覚える」**ことをしていった。


最初はただ、生き延びるためだった。

怒られないため。

目をつけられないため。

とにかく、やるしかなかった。


でも、そんな毎日の中で、

先輩たちに教えてもらったことが、ひとつの芯みたいになっていった。


何かしてもらったら、「ありがとうございます」。

教えてもらったら、「ありがとうございます」。

間違ったことをしたら、「ごめんなさい」。

口に出して言う。

そのタイミングを逃さず、ちゃんと、素直に。


それを言わないと、怒鳴られたり、無視されたり、

時には班全体が連帯責任で注意を受ける。

だから最初は、怖くて言ってただけだった。

「ありがとうございます」も「ごめんなさい」も、

心なんてこもってなかった。


でもね、ある時ふと気づいたの。

誰かが自分に優しくしてくれる時、

教えてくれる時、

守ってくれる時、

その瞬間に、自然と「ありがとう」が出るようになってた。


私、変わってるかもしれない――

って思った。


まだ全部が許せたわけじゃない。

大人のことも、世の中のことも、全部信じられたわけじゃない。

でもね、

この言葉たちは、自分の中で「ちゃんと生きる」ための

最初の一歩だったような気がしてる。




そして、施設に入ってしばらくして、

私は亜衣という子と仲良くなり始めた。


私より3ヶ月先に入っていた子で、

ちょっと不良っぽくて、でもどこか落ち着きのない雰囲気の女の子。


右手の甲には、小さなハートのタトゥーみたいな墨が入っていて、

「中学のとき、自分で入れちゃったやつ」って、

少し照れながら笑って見せてくれた。


最初は、なんか近寄りがたいかもって思ってたけど、

掃除の時間とか、食事の時とか、

さりげなく声をかけてくれた。


「それね、先にやっといた方が怒られないよ」

「返事はちゃんとした方がいいよ。ちょっとでも遅いと指導されるから」


淡々としてるけど、どこか優しい口調で、

私はいつのまにか、心を許していた。


ある日、私が「なんか、亜衣ちゃん変わってますよね」って言うと、

亜衣は小さく笑って、こう言った。


「ここにいる子たち、みんな色々あって来てるから、似たようなもんだよ。

でもね、ここで腐ってたら、ほんとにもったいない。

私たち、ここ出たあと、ちゃんと生きていくためにいるんだよ」


その言葉が、なんだかすごく胸に残った。


ああ、

私も、ここで終わりたくないな。

ちゃんと、やり直してみたいかも——

そんな気持ちが、ふと生まれた。



そして、朝起きてすぐにラジオ体操。

そのあとランニング。

床は雑巾がけ、ホール流しっていうのもして、

朝食を食べたら、施設の中にある「学校」へ行く。


そこでは一般教科だけじゃなくて、礼儀や生活態度についてもみっちり指導された。


学校が終わったら、みんなで農作業。

土を耕したり、野菜を植えたり。

それが終わったらまた掃除して、お風呂入って、ご飯を食べて、就寝。


そんな生活が、ずっと、続いていった。


最初は「なんでこんな生活…」って思ってた。

でも、不思議と、慣れてくるんだよね。

ルールがあるって、ちょっと安心する。

何をしていいか決まってるって、気持ちがラクになることもあるんだって知った。


季節ごとにあるスポーツも、けっこう楽しみだった。


春には卓球。

ラリーが続くと、みんな笑って、ちょっとだけ声が明るくなる。


夏には水泳。

日差しが眩しくて、水に入ると心までスッと冷えるような感じ。

水の中だけは、誰とも争わなくてよかった。


秋にはテニス。

ラケットを持ってボールを打つ感覚が、なんかスカッとした。

自分の力で思いきり何かを弾き返せるって、快感だった。


冬にはバレー。

寒い体育館で、声を出して、みんなでボールを追いかける。

1点入るたびに、少しずつ、笑い合える時間が増えた。


「面白い」って、ちゃんと思った。

こんなふうに、誰かと一緒に何かをやって、

悔しがったり、喜んだり、笑ったりすることが。


…ああ、

もしかしたら、私にも

「普通」って言われる毎日が似合うのかもしれない。


そんなふうに、ほんの少しだけ、心がやわらかくなる感覚があった。




そうだな。

行事も、ちゃんとあった。


その中でも、運動会は特別だった。


普段は厳しい顔をしてる職員さんたちも、この日ばかりはちょっと緩んでて。

みんなで紅白に分かれて、本気で競争する。


私が出たのは、リレーと、障害物競走。

その中でも一番記憶に残ってるのは、ラムネ一気飲みリレー。


順番がまわってきたとき、私の前の子が少し出遅れてて、

バトンをもらったときは、正直、うちのチームがビリだった。


でも、私は自信があった。

ラムネを飲むのは昔から得意だったし、

なんなら外で遊んでた時代に炭酸は毎日のように飲んでた。


他の子たちが「げほっ」て咽せてる横で、

私は、ガーッて、一気に瓶を飲み干した。


最後のビー玉が「カラン」って音を立てて口の中で動くのを聞きながら、

私は瓶を机に置いて、そのままダッシュした。


――一着。


ゴールした瞬間、

みんなが「うおおお!」って歓声をあげて、

そして、

亜衣がこっちを見て笑った。


「えりこ、やるじゃん」って。


その顔が、

なんていうか、すごくあったかかった。


初めて「役に立てた」って感じがした。

ここで、ちょっとでも誰かに認められたって感じがした。


私、

走るの、嫌いじゃないかもしれない。

って、

ちょっとだけ思った。




それからというもの、

先生や仲間たちにもだんだん認めてもらえるようになって、

私もどんどん先輩になっていった。


朝の掃除の時間には、下級生の子に雑巾がけのコツを教えて、

食事の準備では「こぼさないようにこうやって持つんだよ」って言って、

夜の反省会では「今日もよく頑張ったね」って声をかけた。


私の後に入ってくる子たちは、

やっぱり最初は、私と同じように尖ってて、

職員に反抗したり、口もきかなかったりした。


そんな子を見るたびに、

「昔の私だなぁ」って思った。


でも、だからこそ、

私は怒るんじゃなくて、寄り添うことを選んだ。


「大丈夫だよ」

「私もそうだったから」

「でも、ここでちゃんとやれば、自分、変えられるよ」


そう言って、

できるだけ、あったかく、まっすぐに伝えた。


中には、泣きながら「ありがとう」って言ってくれる子もいた。

それがすごく、嬉しかった。


そしてふと、

気づいたんだよね。


あの頃、私が一番ほしかったのは、

「怒られること」でも「罰を受けること」でもなくて、

ただ、「誰かに理解されること」だったんだって。


今、私はその「誰か」になれてるかもしれないって。




こうして私は、

少しずつだけど、温厚な性格っていうのかな、

落ち着いた人間になっていった。


周りからは「優しいね」って言われることが増えた。

「ちゃんと人を見てるね」って。

「話すと安心する」って言われたりもして、

それがすごく、うれしかった。


私は、

人の顔色を読むのがうまくなったんじゃない。

人の気持ちが、自然と分かるようになってた。


それは、私がたくさんの「痛み」を経験してきたからだと思う。


騙されたことも、

傷つけられたことも、

自分で自分を壊しそうになったことも、

全部、自分の中に残ってる。


だからこそ、

誰かの小さな異変にも、気づけるようになってた。


ああ、この子、今つらいんだな。

ああ、無理して笑ってるな。

言葉には出さないけど、助けてって目が言ってるなって。


そうやって、

前の私を助けたかったように、

今、目の前の誰かを助けたいと思えるようになってた。


たぶん、

私は「優しくなった」んじゃなくて、

優しさが生まれる余地が、自分の中にできたんだと思う。



そしてお父さんが、

久しぶりに面会に来てくれた。


面と向かうのは、

あのきぬ川までの道のりの車の中以来だったかもしれない。


最初はちょっと気まずかった。

私もどう話したらいいか分からなかったし、

お父さんも少し、戸惑ってるように見えた。


でもね、

私は、ちゃんと話そうって決めてたんだ。


あのとき言えなかったこと、

「ごめんなさい」って。

そして、

「お父さんがどれだけ心配してくれてたか、分かったよ」って。


お父さんは、

黙って、私の話を最後まで聞いてくれた。


何も遮らずに、ただ、うなずいて。

時々目を細めたり、目元をぬぐったりしながら、

「そうか、そうか…」って言ってくれた。


私は言ったの。


「私、また頑張るから。

また一からやり直すから。

たぶん、また失敗するかもしれないし、

また道を外れるかもしれない。

でも、それでも私は諦めない。

負けないから。」


お父さんは、じっと私を見つめて、

一言だけ、こう言ったんだ。


「それでいいんだよ、えりこ。

お前がそうやって言ってくれただけで、父さんは嬉しいよ。」


それを聞いたとき、

私は、やっと――

やっと許されたような気がした。


自分自身にも、

そして、この世界にも。




退所の日が近づいた。


私は、カレンダーのその日を、

指でなぞるように毎日見つめてた。


不安も、期待も、名残惜しさも、全部が混ざってた。


ここに来てから、私はたくさん泣いたし、笑ったし、怒ったし、落ち込んだし、許したし、許された。


そして何より、自分とちゃんと向き合った。


過去のことも、自分のしたことも、

傷つけた人たちのことも――

全部、逃げずに見つめることができた。


それまでは、「強がってただけ」だった。


ツンとした態度で、鋭い言葉で、派手な見た目で、

何もかも跳ね返そうとしてた。


でも本当は、怖かっただけなんだ。

自分が壊れそうで、弱いのを知られるのが、

たまらなく怖かった。


だけど、今は違う。


強さって、優しさなんだと思う。

誰かの痛みに気づいてあげられること、

誰かのために一歩引けること、

ごめんねって言えること、ありがとうって伝えること――

それが、本当の強さだって、私はここで教わった。


退所を前にして、私は思ったんだ。


「もっと、誰かの力になりたい」って。


今度は、私が誰かに、手を差し伸べられるような人になりたい。

あの日、手を引いてくれた誰かみたいに。

亜衣みたいに。

お父さんみたいに。

そして――あの頃の私みたいな子を、見捨てないように。


この1年7ヶ月は、地獄みたいに感じたときもあった。

でも今は、ここに来てよかったって心から思える。


だって私はここで、自分の人生を、自分の手に取り戻せたんだから。





私は、いじめがきっかけで、道を外してしまった。


自分を守るために、牙をむくしかなかった。

でも、誰かを傷つけていい理由にはならなかった。

それでも私は、生きて、立ち上がって、ここまで来た。


たぶん、この世界には私と同じように

いじめられて、苦しんで、

引きこもって、

時には死にたいって思ってる人がたくさんいると思う。


今まさに、涙をこらえてる人、

誰にも助けを求められずにいる人、

どうして自分だけが、って思ってる人――


その人たちに、私は伝えたい。


「人は変われるよ」って。


時間がかかってもいい。

遠回りしても、転んでも、何度でもやり直せる。


でも、一つだけお願いがあるの。


誰かが差し出してくれる手を、見逃さないでほしい。

その手が本物か、ちゃんと見極めて。

本当にあなたの味方になってくれる人は、

必ず、この世界のどこかにいる。


苦しんでいる人へ、

今、どうしようもないほど孤独な人へ、

過去の私みたいに、自分を責めてる人へ――


あなたは一人じゃない。

あなたの痛みを、ちゃんとわかる人がいる。

あなたの涙の理由を、抱きしめてくれる人がいる。


どうか、生きていて。


どうか、諦めないで。


私はこの人生で、

「人は変われる」ってことを証明してみせる。


だから、次はあなたの番。

自分の未来を、少しだけ信じてみて。


大丈夫。

ちゃんと、道はあるよ。




そして、大人になった今、

私の左手首に残っていたリストカットの傷跡には、

綺麗な花のタトゥーが咲いた。


それは、私が自分で選んだ、私の生きた証。

痛みも、後悔も、涙も、

全部ぜんぶ、その花の中に閉じ込めた。


過去を消したわけじゃない。

でも、私はそれを受け入れて、愛して、咲かせることにしたんだ。


傷は、ただの傷じゃない。

誰にも見せたくなかったあの日の叫びが、

今は、静かに私の中で「生きててよかった」とささやいてくれる。


あの日の私に、

「大丈夫、ちゃんと笑える日が来るよ」って

やっと言える気がする。

ここまで読んでくれてありがとう。

ぶっちゃけ、きれいごとなんて書いてない。

読んでて不快になった人もいたかもしれない。

でも私は、過去の自分を、あえて曖昧にしなかった。


誰だって傷ついたら壊れるし、

間違えるし、尖るし、泣くし、逃げる。


でもそれでも、生きてていいってこと、

何回間違っても、やり直せるってことを、

この話で伝えたかった。


強がることが強さじゃない。

泣いて、向き合って、歩くことこそが、

ほんとの“強さ”なんだって、私は信じてる。


この物語が、どこかの誰かの力になってたら、

それだけで、書いてよかったって思える。


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