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第5話:不思議な感覚

 水が入った桶を持ちながら、ウサ太と一緒に拠点に戻ってきた俺は、奇妙な音が聞こえてきたので、立ち止まった。


「遠くから何かが近づいてくるみたいだ。これは……羽音か?」


 徐々に音がハッキリと聞こえてくると共に、見晴らしの良い場所から、小人に羽が生えたような蜂の魔物が群れを成してやってきた。


 大きな目がクリッとして可愛らしいものの、手には鋭い槍と盾を持ち、眉間にシワを寄せている。


 機嫌が悪いみたいで、背中の羽を激しく動かして、ブーンッと威嚇するような音も立てていた。


「集団で活動する魔物、()()()か……。ん? どうして俺は今、この魔物のことがわかったんだ?」


 自分の中に芽生えた不思議な感覚に戸惑っていると、その間に軍隊蜂たちに取り囲まれてしまう。


 呑気なことを言っているように思うかもしれないが、俺は決して逃げ遅れたわけではない。


 興奮した彼らを前にして、背を向けて逃げ出したり、大きな音を出したり、慌てたりする方が危ないと、不思議と理解できたからだ。


 ウサ太も怯える様子を見せないし、なぜか軍隊蜂が危険な存在ではないと伝わってくる。


 アイリス様には過信しないように注意されたけど、これも魔物と友好関係を築きやすくなる加護の影響なのかもしれない。


 ブーンッ ブーンッ ブーンッ


 まあ、威嚇するような羽音は怖いと感じるが。


 品定めするかのように飛び回った後、桶に汲んである水を見た軍隊蜂たちは、突然、態度をコロッと変えてしまう。


 空中で綺麗に整列したと思ったら、ビシッと敬礼してきたのだ。


「こ、これは……同じように敬礼をすればいいんだよな?」


 見よう見真似で敬礼を返すと、力強くウンウンッと頷いた軍隊蜂たちは、いろいろな方向に飛び散っていった。


 その行動に疑問を抱いた俺は、彼らが向かった先にあるものを見て、なんとなく状況を理解する。


「どうやら軍隊蜂は、花を守っているみたいだ」


 動物の蜂と同様に、軍隊蜂も蜜を集める特性があるみたいで、花の様子を入念にチェックしている。


 もしかしたら、彼らが態度を変えた理由も、花に関係しているのかもしれない。


 水の入った桶を見て、俺がここで花を育てている人だと勘違いしたんだろう。


「軍隊蜂の存在が良いとも悪いとも言い難いが、花の栽培を手伝うだけで仲間に入れてもらえるのであれば、ありがたい。木をなぎ倒すような魔物がいる以上、仲間は多い方がいいからな」


 花に近づいた俺は、桶から水をすくって、それを優しくかける。


 近くにいた軍隊蜂がビシッと敬礼してくれたので、うまく対応できたみたいだ。


 そんなことを考えている間に、ウサ太も花の周りにある雑草を抜いてくれていた。


「おっ、ウサ太も手伝ってくれるのか。偉いな」

「きゅーっ!」


 軍隊蜂が再び敬礼すると、ウサ太も地面にチョコンッと座った後、ビシッと敬礼を返していた。


 怯える様子のないウサ太と、敬意を示す軍隊蜂を見る限り、両者は共存関係にあると推測することができる。


 こうして互いに協力し合うことで、危険な森を生き抜いているみたいだった。


 俺もその仲間に入れてもらうのであれば、もっと敬意を払うべきだよな。


 幸いなことに【箱庭】でモノづくりができるのだから。


「花が傷まないように水をあげたいから、少し待っていてくれ」

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