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モフモフ好きのオッサン、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第106話:トレントの爺さん、再び不調になる

 昼寝をしていたニャン吉が姿を現すと、大きく伸びをした。


「ニャ~……ゥ」


 臆病な性格は変わらないものの、みんなと打ち解け始めている。


 最近はトレントの爺さんに遊んでもらったり、クレアやウサ太と追いかけっこしたりする姿を見かける機会が増えてきた。


 俺だけでは面倒が見切れないので、クレアが気にかけてくれるのは、とてもありがたい。


 そのお礼といっては何だが、彼女にはニャン吉が作り出す絹糸を使った品をプレゼントしようと考えていた。


「そういえば、ニャン吉の絹糸で作った毛布ができあがったぞ」

「えっ? 本当!?」

「ああ。思った以上に肌触りがよくて、良い出来栄えだ。早速、今夜にでも使ってみてくれ」

「わーいっ! ありがとう、トオル! 猫ちゃ~ん!」

「ニャニャ!?」


 クレアが抱き締めようとニャン吉に近づくと、急な動きに驚いたのか、追いかけっこが始まってしまう。


「きゅー! きゅー!」

「よしっ、挟み撃ちだよっ!」

「ニャッ!? ニャウー!」


 これだけ遊んでもらっているのであれば、ニャン吉も喜んでくれるだろう。


 拠点のすみっこに隠れてばかりだった頃と比べれば、本当に快適な生活を手に入れているような気がした。


 これでみんな仲良く過ごすことができて、めでたしめでたし……と言いたいところなのだが。


 今度はトレントの爺さんに異変が現れている。


 まるで、初めて出会った頃のように体調が優れない様子で、ジッと過ごしてばかりだった。


「トレントの爺さん、大丈夫か?」

「……」


 以前は、目を開けて返事をしてくれていたものの、今回は反応がない。


 ウサ太がペシペシと叩いても返事がなく、ニャン吉が近づいても動かなかった。


 もちろん、クレアが声をかけてもアーリィが近づいても同じこと。


 ここ数日は、栄養剤をあげても果実を実らせなくなっていた。


 もしかしたら、ニャン吉がトレントの爺さんの上で昼寝をしていたのも、心配してくれた結果なのかもしれない。


 何かできることはないかと、傍にいてくれたんだと思う。


 クレアも晴れない表情を浮かべて、毎日トレントの爺さんの様子を見に来ている。


「木のおじちゃん、大丈夫かなあ」

「青葉が茂っているから、問題ないとは思うぞ。少なくとも、生きていることは確かだな」


 魔物を育てたことも、木を栽培した経験もないため、ハッキリしたことはわからない。


 ただ、栄養剤をあげると口元が緩むので、何かしら変化しようとしている状態なんだと思う。


 十分な栄養を得たことで、進化する可能性もあるが、果たして……。


 そんなことを考えていると、軍隊蜂がトレントの爺さんに近づいていった。


 ブーン♪


 何やら機嫌良さそうにしているので、やっぱりトレントの爺さんは悪い状態ではなさそうだ。


 同じ魔物であるウサ太とニャン吉は、詳しい状況を把握しようとしているのか、軍隊蜂に問いかけている。


「きゅー?」

「ニャウー?」


 ブーン♪


「きゅー!」

「ニャウー!」


 軍隊蜂が身振り手振りで説明すると、それを理解したウサ太とニャン吉も喜んでいるが……。


 何が言いたいのか、サッパリわからない。


 こういう時、魔物と会話できないというのは、非常に不便である。


「ねえ、トオル。今のでわかった?」

「いや、サッパリだな。良い傾向なんだろうなーということを察したくらいだ」

「もしかして、お腹に赤ちゃんがいるとか……」

「なかなか面白い発想だな。その場合、トレントの婆さんだった説が浮上するぞ」


 喜びのあまりに駆けずり回る魔物たちを眺めていると、森の方から肩を落とした一人の女性がやってくる。


「いいわね。()()()()軍隊蜂はシャキッとしてて」


 バラ園を管理しているアーリィだ。


 彼女の意味深な言葉が気になるが……、先に疲労が取れるリンゴジュースを用意してやろう。


 アーリィが荷物袋の中に大量の雑草を入れている姿を見れば、精力的に働いてくれていることが、よくわかるから。


 これには、駆けずり回っていたウサ太と軍隊蜂も敬礼で出迎えている。


 その一方で、ニャン吉は覇気のないアーリィに怯えているが。


「ニャ、ニャウ……」


 ようやく剣を持つアーリィの姿に見慣れたと思っていたが、普段と違う仕草を見せると、まだダメみたいだ。


 しかし、アーリィもそんなニャン吉の姿を見ることに慣れたみたいで、気にした様子を見せることはない。


 クレアの方に近づき、荷物袋を差し出していた。


「これ、いつもの感じでお願いね」

「うんっ、わかった!」


 雑草入りの荷物袋を受け取ったクレアは、畑の近くに掘ってある穴の方に向かった。


 そこに持ち込まれた雑草をドッサリと入れて――。


「むむぅ……ファイア~!」


 ゴミを焼却することがクレアの仕事である。


 魔法を扱える幅が増えてきたことで、クレアの仕事が増えつつあるのであった。


 そんな中、アーリィにリンゴジュースを差し出した俺は、先ほど疑問に抱いたことを聞いてみる。


「こっちの軍隊蜂はシャキッとしているというのは、どういう意味なんだ?」


 リンゴジュースを受け取ったアーリィは、それを一口飲んだ後、重い口をゆっくりと開いた。


「花が咲いたバラ園に来れば、すぐにわかるわ」

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