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管理者アスラの夢帳簿  作者: ゆん
世界を望む少年編
9/26

知らない罠

世界は多くの願いが落ちている。

 ーお金が欲しいー

 ー空を飛びたいー

 ー過去に戻りたいー

いろんな願いだ。

もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。

これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。

唸り続ける化け物を観察して私はとあることに気づいた。

何故か化け物の体に銃弾のような傷がいくつもついていたのだった。

銃?と不思議になる。

エレンは銃なんて持っていなかった。持っていたのは弓だけだ。

当然私は何も武器になるようなものは持っていない。しいて言えば小石くらいだ。

なんだ……?と首をかしげた私に、エレンがフェンたちと共にやってきた。

「こっちだ。とりあえず罠にはめたが……。」

「エレン、これどうするのよ。こいつ昨日のと同じ個体じゃない?」

「あぁ。怒りで戻れんみたいやな。」

化け物は罠から抜け出そうともがき続けている。

辺りには化け物に絡みついている縄がきしむ音が響いていた。


「悲しそうな声だ。何かあったのかな?」

「悲しい?」

エレンとフェンが化け物をどうするか話している横でバリスがつぶやく。

「何が悲しいの?バリス?化け物が?」

「そう。悲しいって。あと痛いって。」

「痛い?カスったくらいで、ガッツリとは当ててへんよ?」

バリスの声に反応したエレンが言う。

「ううん、痛いって。」

もしかしたらあの傷の事だろうか?と思い、エレンに銃で撃たれたかのような傷があることを伝えた。

「じゅう?なんやそれ?」

「何よ、じゅうって?」

「じゅうって、数字?」

三人の困惑した顔が並ぶ。

エレンたちは銃について知らないようだった。

ということはエレンたちが負わせた傷ではないことがあきらかだ。

「もしかしてあんさんのいた時代にはあるもんか?」

「うん。」

私はうなずいた。

首を傾げながらもフェンとエレンは銃の傷をいやし始めた。

化け物は最初こそ警戒して唸ったり身をくねらせたりしていたが、助けてくれていることを理解したのか、おとなしくしていた。


「ふう。」

「とりあえずはこんなもんやな。」

5分ほどでいやし終えた二人が戻ってきた。

「しっかし、なんでまたこげな傷ができたんやろかね?」

「何かが起きてるのかも。あの人がこれほどの傷を作る物を排除しないわけがないわ。」

「やけどなぁ……。空間をつなげれるやつがおらんと持ち込むのは無理っちゅうもんがあるが。」

「それは無さそうだけど……。そういえばバリスは?」

あれ?と私はさっきまでバリスのいた場所を見たがバリスはいない。

さっきまですぐそばにいたと思っていたのだが。

 

辺りをしっかりと見回してみると少し離れたところでバリスはある一点に耳を傾けていた。

三人でたてたガサガサとした移動の音でこちらに気づいたバリスは森の中の暗闇の一点を指さした。

「あっちから痛いって声がするの。あっちの生き物の声と似ているんだよ。」

「え……?また痛い?」

「何も見えんし、何も聞こえんが……。」

「……あ。」

よく目を凝らし、耳を澄ましてみると確かに何か小さな生き物がかすかな鳴き声をあげながらもがいていることに気づいた。

何かに挟まれているのか、身動きが取れないようだ。

助けてやろうと、小さな生き物のところへ駆け寄ったが、ヒュッと息を飲むほど絶句して立ち止まった。

その小さな生き物は化け物と同じ種族のようだった。

もとは穏やかだったというエレンの言葉通り、穏やかそうな顔つきだが、今にも死んでしまいそうな感じだった。

それでも必死に生きようともがいている。

刺さったらただじゃすまなそうなとても太くするどいギザギザとした部分におなかを挟まれている。

「急にどうしたのよ?……え?」

「いったい何が……はぁ!?」

「とりあえずこれ溶かすわ!いいわね?あとバリス捕まえてて!」

「わかった!」

「いいもなにもこんなの仕掛けた覚えないんやけどな……。」

そんなことをエレンはつぶやきながら生き物のそばへと駆け寄った。

「あれを溶かすには……えっと……。」

そんなこと言いながらフェンは抱えてきたバリスを下におろすと、鞄の中をゴソゴソしだした。

「しっかりしぃ、もう大丈夫じゃけな。」

エレンはそう言いながら少しずつ生き物をいやしていく。

生き物はぐったりしていたが、助かるのには間に合ったようだ。

「あった!エレン、ちょっとのいて。」

「あいよ。」

フェンが何やらどす黒い色の液体を金属にそっとかけていく。

すると瞬く間にあれだけ強靭そうだった罠はシューという音と共に溶けていった。

エレンは絶え間なく傷をいやしていく。

そうして生き物は死にかけた状態から脱したのだった。

 

「おい、確認してきたか?」

「あ、えっとあとあそこに仕掛けた分だけですぜ、アニキ。」

「じゃあとっとと確認してこい。そうしたら見つからねぇうちにずらかるぞ。」

「わかりやしたぜ、アニキ。」

ふと、そんな声が聞こえてきた。

エレンの癒しの効果か、3人には聞こえていないようだ。

まだ相手は遠くにいるらしく、こちらに人がいることに気がついていない。

「どうしたの?」

私の不安げな雰囲気を感じたのか、バリスは不安そうだ。

バリスをかばうように後ろの方へ移動させる。

今エレンやフェンに声をかけると相手にこちらの事を知られてしまうかもしれない。

だからと言って、フェンたちの所へバリスを連れて行くと移動に音が生じてしまう。

どうしたものか、と頭を悩ませていると、いつの間に近づいてきたのだろう、子分と思わしき人がすぐ目の前にいた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は次の水曜日に出す予定です。

感想お待ちしてます。

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