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管理者アスラの夢帳簿  作者: ゆん
世界を望む少年編
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ヘアピンさん

世界は多くの願いが落ちている。

 ーお金が欲しいー

 ー空を飛びたいー

 ー過去に戻りたいー

いろんな願いだ。

もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。

これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。

「たまーにいるのよね、過去の世界の人に自分の常識を教える人。やっぱりこういう人は実験体として使い切ってから追放とかで良いと思うのだけどねぇ。」

後ろにいたのは長い髪と前髪を止めるヘアピンが特徴的な背が高めの人だった。

その人はふわぁとあくびをしながら少し後ろに下がった。

なんか優しそうな人だなって印象だけど、さらっと言ってることが怖い。

正直、私にとってここはとても居心地良いし面白いものだらけだから帰りたくないなという気持ちが強い。

「ごめんなさい、知らなかったんです。」

こういう物騒なこと言う人にはすぐ謝った方がいい。

「ほんとに数日前にここにきて、今日初めて部屋の外に出たんです。初めて会ったのがこの子で、」

「あぁ、あの部屋の子?あの願いのないっていう子かしら?」

ヘアピンさんはよく分からないことを言った。

あの部屋?どこだ?私のいた部屋か?

でも願いが無いのはあってる。

「多分それであってます。願い無いの珍しいらしいし……。」

「誰に説明聞いたのかしらぁ?それでいろいろ変わると思うのだけどぉ。でも、あの部屋はマシューの担当でしょう?」

「マシューに教えてもらったんです。」

正直に答えると、ヘアピンさんはあーって何とも言えない顔をした。

「あら、珍しい。じゃあ雑な説明なのもあり得るわねぇ。あの人結構適当だし……。そもそも外に出るなんて想像していなかったんでしょうねぇ。」

結構雑な説明だったのはそういう理由だった。

道理で何にも理解が出来ないまま終わったわけだ。

みんなはちゃんとした説明を受けてんのか……。

と少ししょんぼりした。

「本当に軽率な行動してすみませんでした。今度は気を付けます。」

「ならいいわよ。まぁ、2度目はないんだけどねぇ。早く2度目やらかしてくれないかしら?」

ひぇっ。怖すぎでしょ。

「新しい実験始めたいのよねぇ。」

「エリナ、この人は……?」

バリスがそっと不安そうに聞いてくる。

「多分大丈夫。多分優しいな人だよ。多分。実験狂っぽいけど。」

「多分!?」

バリスの驚いた声があたりに響く。

その声にヘアピンさんはあらバリスいるじゃない、と言った。

「こんなところにいたのね。私よ、フェンよ。この声に聞き覚えないかしら?」

ヘアピンさんはフェンというらしい。

さっきまでの物騒な会話の内容とは裏腹に、かわいらしい名前だ。

「あ、フェン?フェンなの?」

「そうよ。フェンよ。忘れてなくて良かったわぁ。」

「願い叶える人はもう来てくれたの?世界見れる?」

願いを叶えるのに順番待ちでもあるのかな?

「まだよ、ごめんね。あの人は今出かけてていないのよねぇ。」

「そっか……。でも願いは絶対叶えてくれるんでしょ?早く帰ってこないかなぁ。」

待ち遠しそうにバリスは言う。

「願いを叶えるのはアスラなの?」

ふと気になり、フェンさんに聞いてみた。

「そうよぉ、あの人しか願いを叶える権限は無いの。私やマシューはあの人のサポートをすることになっているのよね。」

「へぇ……。」

そうなのか、とうなずく私を横目にフェンさんはバリスを軽々と抱っこした。

「じゃあ、私たちはこれで。さあ、バリス、お昼を食べに戻るわよ。」

「うん、じゃあねエリナ。」

バイバイと手を振ってる私とバリスの横でフェンがとてつもなく嫌そうな顔をしていることに気づいた。

フェンはまさかと思うけどというような顔をしながら言った。

「え、ちょっと待って。あなた本名は他にあるのでしょうね?まさかエリナではないでしょうね?」

何を言ってるんだろう?とバリスと私は首をかしげた。

「聞いてるんだけど?エリナじゃないんでしょ?そうでしょ?そうなんでしょ?」

フェンの圧がすごい。

私の名前はエリナだ。

間違ってはいない。

「エリナです……。」

そう言ったとたん、はぁ……とフェンはため息をついた。

「え……。マシューからなんにも聞いてないの?本名は明かしたら守護者が変わってしまうのよ?知っててやってるの?」

そういうこと何も言ってなかったと思うんだけど。

少なくとも私の記憶の中には無かった。

「すみません、知らないです……。」

私の短い人生は終わりを迎えたのだろう。

これから実験体としてのつらい日々が待ってるんだ。

良い人生だったな、と今までのことを振り返った。

「はぁ……。あんのじじい、分かっててやってんな……。今度会ったらあいつの顔の皮剝ぎ取ってやるんだから。」

フェンはきれいな美人さんだったとは思えないほど怒りをあらわにしていた。

「フェン、フェン。お口悪いよ。かわいい声が台無しだよ。」

とてつもなく想像がつかないほどかわいくない言葉の内容をぶつくさ言ってるフェンにバリスは止めなよとたしなめる。

「え……と、フェン、本名教えちゃうと何かあるんですか?」

知らなかったからしょうがない、でもなんかあったら怖いし、そっとフェンにたずねてみた。

「いや、バリスみたいに普通の場合は大丈夫よ。でも、私たち守護者などの役職持ちに知られるといろいろめんどくさいのよねぇ。」

「ごめんなさい、フェン。僕が名前を呼んじゃったから……。」

申し訳なさそうにバリスは謝った。

「しょうがないわ、あなたに説明していなかったんだもの、私が悪いわ。」

しょんぼりした顔でフェンはバリスにそう言い、くるっと私の方を向いた。

「とりあえずは私の管理地に来て、しばらくはおとなしく過ごしていなさいね。ついてきなさい。」

そういうと、フェンは歩き出した。

ついていくのは少し怖かったけど、何かありそうだ。

夕飯までまだ時間もあるからと私はフェンについていくことにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は次の水曜日に出す予定です。


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