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管理者アスラの夢帳簿  作者: ゆん
世界を望む少年編
35/35

後悔、そして

世界は多くの願いが落ちている。

 ーお金が欲しいー

 ー空を飛びたいー

 ー過去に戻りたいー

いろんな願いだ。

もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。

これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。

「うわぁっ!」

「蒲浦!」

私は思わず手を伸ばす。

届け、届け、届けっ!

願いが通じたのか、すんでのところで蒲浦の手の温もりを感じた。

「慧凪……。助かったぜ。」

「早く……こっちへっ。滑りそう……。」

川はゴウゴウと茶色く濁った大量の水が流れていて。

いつの間にか空からは雹が振ってきていた。

「ぐぅっ……。」

冬の時期にたくさん着込んでいたからか、ものすごく水をたくさん吸っている服を着る蒲浦は重かった。

近くにあった木の枝を掴みながらもう片方の手でなんとか蒲浦を繋ぎ止める。

「ぐっ……。くそっ……。っ!」

まだなんとか耐えていたその時だった。

山の中で倒れて流されてきたと思われるかなり大きな木がこちらに向かって勢いよく流れてきたのだ。

「慧凪!は……離せっ!木がっ!」

「わかってるよっ!でも……それじゃ蒲浦が!」

「離せって言ってんだろっ!本当に昔から頑固なとこだけは変わんねぇなっ!離せって!」

「……嫌だ!」

こんなとこで……こんな形で終わってしまうの?

……そんなことはない。

「絶対に離さないからっ!」

そう言って冷たくなってもう動きの鈍くなった手に力を込めた瞬間だった。

急に手に小さな痛みが走って思わず手を――


「っはぁっ!」

全身で息をするかのように体を震わせた。

「エリー?大丈夫?」

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……。」

「ちょっと、どうしたの?あぁ、ほら……。」

そう言ってフェンは水を一杯持ってきてくれた。

「これ飲んで落ち着いて……。大丈夫?随分うなされてたようだけど……。」

「……はぁ。大丈夫……だと思う。昔の夢を見てたの。」

フェンがくれた水は温かく、身体の震えは徐々に収まっていった。

「夢?前にも言ってたけど……。それは本当に夢なの?」

「どういうこと?」

「此処では夢は見ることはできないのよ。それは記憶ではないのかしら?あなたが……昔体験した記憶。」

「そう……だね。夢ではないのか。うん……記憶か。あれはそうだ。嫌な記憶だ……。でもそれはどうしてなの?」

「此処は願いを叶える場所。此処では夢は現実と同じ。現実を見ることは、それは叶ったことと同義なの。あなたが見ていたそれはおそらく後悔の記憶ね。蛇を見なかったかしら?とてもすごく大きな蛇。」

蛇?

「白い?」

確かに見たような気がしないでもない。

とても大きな白い蛇だった。

フェンがよく分からないような顔をした。

「きっとそこは意識だけの世界――イヴラでしょうね。迷いのある者はそこに彷徨い込むそうよ。私はそこで昔黒く大きな蛇と会ったの。蛇は何でも聞いてくれた。……何か悩みでもある?私で良ければ聞くけど……。」

「……ううん。ちょっと歩いてくる。」

そう言って私はフェンの元を離れた。

わかっている。

私の中にある迷いはきっと後悔だ。

歯車を拾ったときの、あの日。

私は失敗したからだ。

この世界と別れを告げて彼に会うことに。

あの橋の下で勇気が出なかったのだ。

彼は私を許さない気がして。

私はあの時よりも弱く流れていく水を見て中に入っていくことはなかった。

ただ、流れていくのを見ていた。

どれだけ謝っても――彼は私を許すことはないだろう。

「ごめんなさい……蒲浦。ごめんなさい。あの時私が手を離さなければ……。」

あたりには私のうめき声だけが響いた。

「……もうそれは過ぎたことだ。過去は戻ることはない。バリスのためにも早く手柄をあげて現実へ帰らないと。なんで忘れていたんだろう?やるべきことはここではできないのに。帰らなきゃ。そして……蒲浦に会いに行かなきゃ。謝らないと……。」

そう呟くと、私はフェンのところへ戻ろうと立ち上がった。

戻るとみんなはもう起きてそれぞれゴソゴソしていた。

アルは紙にたくさんの魔法陣を描いていて、2号はそれを分類している。

エレンは弓の弦をしっかりと張り直しているし、テルは準備体操をしているし、フェンは何やらおぞましい匂いのする液体をカバンに詰め込んでいる。

近くにいたアルに声をかけた。

「どこ行くの?」

「あぁ、エリーですか。先程ルーの眷属がこれを運んで来たのです。」

アルは私にクシャクシャになった紙を渡した。

広げるとそこにはとてつもなく汚い字で3階中央広場会議中と書いてあった。

「2号が場所を調べ終わったようですし、ここにいるのが敵にバレる前に奇襲してしまったほうがいいと判断しました。」

みんなは戦いへ向かう準備はできたようだ。

一斉に私に言う。

「エリー、準備はできた?」

「管理者様は援軍を送るって言っていましたが、いつ来るのか分かりません。早めに対処したいので、私達は援護をしません。エリー、自分の命は自分で守ってくださいね。いざってときは人形ですよ。」

「エリー、バフをかけるけ、本気で走りゃなんとかなる。あのシュダってやっちゃも捕まえたんスピードじゃ、誰も捕まえられん。」

「できるだけ助けに入れるようにはしたいが、無理なときもあるから早め早めに言ってくれよ?」

「そんな一変に喋られてもわかんないよ。元気出た。私なら何でもできちゃうもんね。大丈夫。何ならみんなのこと助けに入るかもよ?」

ドッとみんなで笑う。

「さぁ、敵をぶっ叩きに行こう!」

私達は戦場と化す地へ向かって行った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は次の水曜日に出す予定です。

感想お待ちしてます。



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