ハックシュン!
世界は多くの願いが落ちている。
ーお金が欲しいー
ー空を飛びたいー
ー過去に戻りたいー
いろんな願いだ。
もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。
これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。
「……はぁっ!はぁっ!」
ドタドタと大きな足音を響かせながら、私たちは走っていた。
「な、なんとかしなさいよ!」
「そんなこと言ったって、お前こいつ持てねぇだろ!俺は手があかねぇとなんも出来ないって言ってんだろ!」
「モット速ク走ラナイト、追イツカレマス。」
「んなこたぁ、自力で走ってから言えって!」
後ろには、さっきの敵が私たちを追いかけてきていて、さらにそれをアルが追いかけていた。
2号は移動が遅いからとテルが必死で抱えている。
「キャキャキャッ!楽しいねぇ、楽しいよぉ!鬼ごっこは大好きさぁ!」
「まーちなさーい!どーこまで行くんですかっ!」
全員が本気で逃げているせいか、いつまで経っても状況は変わらない。
あぁ、こんな時何かできたらな。
火なんか噴けたらこんなやつなんか丸焦げにしてやるのに。
後ろの方を見ながらそんなことを考えているとなんだか、鼻がムズムズしてきた。
「ん?え、はっ、はっ……ハックシュンッ!」
その瞬間――私の口からものすごい勢いで火が噴き出て来た。
風が焼け、空気が悲鳴を上げた。
「キャキャ……ギャッ⁉︎」
少し追いつかれかけていたせいか、敵はボワッと反応する間もなく火に包まれていく。
「ギャギャッ……熱い熱い熱いっ!あぁ、溶けるぅっ!女ぁ!何者だぁっ!」
そんなことを言いながら敵はどんどん溶けていってしまった。
「はっ、はっ、は、はふっ!」
口の中がありえないほど熱い。
喉の内側も舌も焼けているのか、べちょべちょとしていて気持ち悪い。
「なんだその力……?」
テルも呆然としてこちらを見てくる。
「は、ははんなひ……。はひこへ……?ひたひよぉ……。」
痛みと不安で泣きそうな顔をしている私の口の中をちょっと見たテルは叫んだ。
「ちょっ!お前一回喋んな!ア、アル!速くこっちきてくれ!」
「分かってますよ!一体なんでしょうか?この力は……。エリー、大丈夫ですか?」
呼ばれても、私はもう声を出せなかった。
熱と痛みで、息を吸うたびに胸の奥がじゅっと音を立てる気がした。
「あー酷いことなってますね……。今回復かけます。口開けれますか?」
痛みに耐えながらなんとか口を開けると、アルはすぐさま呪文を唱え出した。
「我は虚無より生まれし徒なる器。
滅びを見届け、絶望を抱き、なおも光を求める愚者なり。
されど我が魂は、幾千の傷を糧に再誕を願う。
流れよ血潮、巡れ生命。
絶望の黒に染まりし世界よ、いま白銀の救済を知れ。
我、禁断の契約により命を紡ぐ者。
苦痛を喰らい、死を呑み、代償を払ってなお癒しを成す者なり。
ゼーレンゲーレ!」
低く、静かな声が響くたびに、光は形を帯びていく。
火傷で爛れた私の口の中を、白銀の光がやさしく包んだ。
じゅ、と小さく焦げた音がして、痛みがまるで嘘だったかのように綺麗に消えていった。
「……だ、大丈夫ですか?痛みは?」
「ぷっ……、あっはっはっ!」
思わず笑ってしまった。
テルはなんだなんだと驚いた顔でこちらを見ている。
「エ、エリー?」
「だ、はは、大丈夫……。あははっ。どーしよ、笑いが止まんないんだけどっ!」
「大丈夫なんですか?」
私は笑いで肩の震えが止まらないのを必死で抑えながら言った。
「いや……アルが必死でなんか厨二病っぽいこと急に言い出すから……っ。あんな澄ました真面目な顔してなんで……っこんなっ……おもろすぎでしょ!」
「……恥ずかしいんですよ。若気の至りってやつでしたか……。後悔してるので、もうそんな言わないでください……。だから魔法は魔法陣で起こすのが1番なんだ……。」
アルが仮面で覆われている顔を手で隠しながら恥ずかしがっている。
見えないはずなのに、耳まで真っ赤になっている気がした。
「前にエリーのいた時代の人たちが来た時にも言われたんですっ……!」
「……まぁ、治ったのなら良いんじゃねぇか。行くぞ。火はアルが近くにいる時にやれよな。」
「やりたくてやったんじゃないから!」
「助かった。行くぞ。ここにいるかはわかんねぇけど、リルも助けを待ってんだからな。」
「……うん。行こう。」
そう言って歩き出した私たちの後ろで2号がアルと話していた。
「水身体の魔法、ですか?」
「オソラクハ。アレハ分身ダッタ。ダカラ主ノ魔法カラ逃レテイタ。」
「そうですか……。厄介ですね……。」
「水身体?」
「ええ。おそらくは。実体がないため、どうもあの魔法は良くなかったようです。」
はぁ……と残念そうにアルはため息をついた。
「ねぇ、魔法ってどういう原理でできるの?魔法陣とはやっぱ違う?」
ふと気になって聞いてみた。
「原理……ですか。うーん。願いを実現させる……みたいなイメージでしょうか。例えば、コップの中に水が満たされている様子を強く願いながらそれっぽいこと言えば実際にコップの中に水が満たされる状況があるなら、それが魔法と言えるでしょうね。魔力持ちの生き物なら誰でもできますよ。属性によって得意不得意はありますがね……。テルは確か風が得意でしたよね?」
「ああ。まぁ斬り刻むくらいしかできないけどな。」
「あとは魔法陣でしたか。魔法陣は魔力持ちが魔力を素に魔法陣を描くんです。これらの魔法陣は微細な部分は術者により様々ですが、ある程度は同じなのですよ。出来上がった時点で魔力は魔法陣に含まれている状態なので誰でも使えるのです。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は次の土曜日に出す予定です。
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