不安と共に
世界は多くの願いが落ちている。
ーお金が欲しいー
ー空を飛びたいー
ー過去に戻りたいー
いろんな願いだ。
もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。
これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。
「どうやって行くの?あと才華があるかもってどうすんのよ、無かったら。」
そう言うと、アルはうーんと微妙な顔をして言った。
「私の才華は……まぁ実力がわかりやすいものなのですが……。私の見立てだと、あなたは持続と言った所でしょうか。」
「アルはどんな才華が?」
「無尽蔵の魔力です。魔法使いは魔力切れを起こすと心身にまで簡単に影響を及ぼしてきますが、私にはそれが起こりえません。起こるとしたら、それは私の死ぬ運命だった、ということでしょうね。」
何とでもないような様子でサラッと言ってくるあたり、やはりアルはアルのようだ。
「ふーん……。んで持続って何でそう思うの?」
「うーん……、何と言えば分かりやすいか……。では、何だか自分の動きがすごく軽いとか、そういう感じの感覚はありませんか?」
そう言われれば、そういう気もする。
シュダたちを追いかけた時も勢いが思ったよりも出て驚いた覚えがある。
「確かにそうかも。」
「エレンにしてもらった時におまけで付いた身体力の向上バフなのですが、見た感じ今でも効果があるようです。……しかし、エレンのバフってぶっちゃけると彼の気分次第で効果時間が変動します。ただ、どんなに長くても1日程度だった気がするので、その状態が保てているエリーの今の状態は異常なのですよ。」
「だから再現?」
「ええ。才華が発現した願有者は守護者になる可能性を持ちます。すなわち、」
「でも。」
ちょっと待って、と私はアルの話を遮った。
「私はアスラに願いを叶えてもらってないよ?エレンやフェンは叶えてもらって発現しているんじゃあ……。」
「フェンは特殊で、守護者の内、あの子だけは管理者様から授かっています。私やエレンは手助けはしてもらっていますが自力と言えるでしょう。」
「へぇ……。」
そんな話をしていると、テルが行くんならさっさと行くぞ、と声をかけてきた。
準備が整ったようだ。
「身体力向上のバフがありますし、何とかなると思いますよ。最悪の時はこの呪文を。――――です。」
「――?」
「ダメです!最悪の時だけって言ったでしょう。その呪文は私が開発したもので、ほんのちょっぴりの魔力で発動できるのですが、何が起きるのか唱えきるまで分からないんです。その人形には200年ほど前にかけた魔力が残っていて、今あなたが唱えてしまうと発動してしまいますから。」
マジか……と思いながら、私は自分の首にかけている小さな人形を無意識に触って言った。
「で、でもアル?この効力がいつまで持つのか分からないじゃない。そんな状況で……。」
「だからこそ、その呪文なんです。私が彼女にあげた――最悪の呪文。」
辺りがしんと静まり返った。
「……アル様。ダメですよ。いくらあの子に似ていたとしても、そんなこと聞いたらこの子は唱えるべき状況でも躊躇ってしまう。」
「それ以外にどう説明すればいいんでしょうか?あの時、唱えた瞬間に地獄と化したのです。最悪の呪文でしょう。」
「はぁ……。呆れた。そういうところですよ。すぐになんでも教えようとするのですから……。」
呆れたようにナージャは言った。
そしてもう一度ため息をついた後、私に向かって跪いて言った。
「我が身に宿りし御魂に申し。我が願い叶えたもう。」
ナージャがそう言った瞬間、私の周りにふわふわ光が漂ってきた。
「……これで少しは。気休め程度ですが、守りのまじないです。本当に気休め程度ですが……少しでも役に立てれば。」
ナージャは私の手を取って言った。
「逃げてもいいんです。1番大切なのは命ですから。もう……を増やさ……もいいように……。」
最後の方は上手く聞き取れなかったが、温かい気持ちで満ちていた。
「ありがとう、ナージャ。なんか不安が取れた気がする。」
「良かった。そろそろ出発できますか?」
「うん。大丈夫。ありがとうね。」
「分かりました。アル様、しっかりお守りするのですよ。……お気をつけて。」
「ええ。もちろん。さぁ、この魔法陣へ。」
アルに促されるまま、私たちは魔法陣へと足を踏み入れる。
描かれた文字や記号が鈍く光を放ち出し、私たち3人を包み込んだ。
フッと体が宙に浮くような感覚がして――。
次に分かったのは自分のお尻の痛みだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は次の土曜日に出す予定です。
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