再開...?
世界は多くの願いが落ちている。
ーお金が欲しいー
ー空を飛びたいー
ー過去に戻りたいー
いろんな願いだ。
もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。
これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録。
カッと勢いよく光った魔法陣の光で思わず目を瞑る。
ようやく目を開けると、今までとは何かが違う、薄汚れた場所にいることに気づいた。
まるでゴミ捨て場の様に、真っ黒でもやもやとした何かがあちこちに落ちている。
「……あれ?」
周りを見渡していると、隣にいたはずのアルもテルもいないことに気づいた。
「どこ行ったんだろう……。」
冷たく風が足元をかける中、不安な気持ちを押し殺して何かないか自分の持ち物を探す。
「……何これ?」
唯一、ポケットの中にあったのは4cmほどの小さな人形の飾りだった。
かなり精巧に作られたもので、この大きさの人形にしては重かった。
眺めていると、小さな声だったがどこからかアルの声がした。
「……ますか?聞こ……返……くだ……。」
「アル?どこ?」
「……した!テ……繋が……!」
少し興奮気味のアルの声が何故か人形から聞こえてくる。
「何?聞こえない!」
焦って思わず大声を出すと、今度ははっきりとアル達の声が聞こえてきた。
「……驚きましたよ。まだこれが機能しているなんて。」
「アル、これは?」
「200年ほど前にフェンに差し上げたものです。まさかまだ機能するとは……。そもそも何故あなたが持っているのかも謎ですが……。」
「あ、この服フェンに借りてるの。それでかも。」
「そうでしたか。……よく聞いてください。今はまだ何とか使える様ですが、いつまで使えるのか分かりません。この繋がりもすぐに切り、あなたを探す手掛かりにします。いいですね?」
「この人形が目印ってこと?」
「そうです。できるだけ身につけておいてください。最悪の事態の時はこの人形握りしめて力を込めてください。その場だけなら何とかなるかもしれません。」
「わ、わかった。」
何とかって何だ、何とかって。
そう思いながらも突っ込まないでおいた。
人形をずっと手に持つのもアレなので、最初にいた塔から出るときから無くさない様にとペンダントにした歯車と一緒につけた。
周りから見たら変だろうが、緊急事態だし、そんなこと言ってられないと歯車と一緒にぶら下げた。
そもそも歯車単体をペンダントとしてたのだから元からダサかっただろうし問題ない。
繋がりが切れたあと、少し辺りを探索することにした。
あまり動くなと言われたが、少しくらいなら許されるだろう。
しばらくして私は何か自分の真後ろの方で何かが何かを引きずる音がした……ような気がした。
振り返っても何もいない。
「気のせい……だよね?」
不安になっちゃダメだ、と気合を入れ直すが、やはり後ろの方から音がする。
「ひっ……。」
思わず声にならない悲鳴をあげてしまった。
何か細長い湿ったものが私の首元を撫でたのだ。
バッと後ろを振り向くと、いつのまに居たのか、巨大な蛇がいた。
思わず全身から力が抜けてへたり込んでしまった。
あぁ、食べられる……。人形……握らなきゃ……。
そう思うが、どうしても腕が動かない。
蛇は舌をチロチロと出し入れしながらゆっくりとこちらを見つめてくる。
「ええい、食うなら一思いに頭からいってくれ!」
そう言って目を固くつぶった。
「……こんなところで何をしておるんじゃ。ほら、行った行った。」
何とも言えない落ち着いた声が聞こえた。
「おぉ、誰かと思ったらお嬢ちゃんか。」
目を開けるとそこには少し息が切れてるマシューがいた。
「誰かが襲われているのが見えてのぅ、助けに来たんじゃが……。どこに行っていたんじゃ?いつまで待っても帰って来んし、探そうにもこの体じゃしな。無事で良かったわい。」
「ありがとう。助かったよ。」
そう言いながらも何とか立ち上がり、服についた土や埃を払い落とす。
「ここで何をしていたんじゃ?この地はノルメルディ――願いの墓場じゃが。」
「願いの墓場?」
あまりにも不穏な言葉に私は思わず聞き返す。
「ここも昔は他の地域と遜色ないほど素晴らしく美しい、音楽に満ち溢れた都市だったんじゃ。だが、70年ほど前にその地を守護していたフェンが色々してしまってのう。都市は崩壊し、廃れ、住んでいた獣人達は人間の姿へとなる力を失い、イラヴェルナのあちこちへ散り散りになってしもうた。そして、ここで叶わなかった願いやお嬢ちゃんたちにとっての現実世界の叶わなかった強い願いたちが溜まり、澱んでしまう様になっていったのじゃ。そこから願いの墓場と呼ばれておる。」
思ってもみない事実に驚きを隠せなかった。
フェンは一体何をしたんだ。
「んで、何でここにいるんじゃ?」
あぁ、と私はマシューに今までのことを事細かに教えた。
「……それでもお嬢ちゃんが来る様なところでは無いはずじゃ。さぁ、とりあえず帰ろうじゃないか。」
そう言いながらマシューは私の背中を押して帰らせようとする。
まるで何か隠し事でもしているかの様だ。
背中に当たる手は、急いで来てくれたはずなのに、どこか力強くて妙に冷たかった。
「……ねぇ、マシュー。そういえばアルがあんまり動くなって言っていたの。ここに残っていた方が良いんじゃない?」
「アル?あぁ、あのピエロか……。いや、構わんよ。」
「ふぅん……。」
そんなことを話しながら私はマシューの後をついて行った。
ある程度歩くと、地面に魔法陣が描かれている場所へと辿り着いた。
「さぁ、ここじゃ。お嬢ちゃん、ここの模様へ足を踏み入れてくれんか?」
「ここ?何で?」
「塔へ送ってやるんじゃよ。さぁ。」
少し嫌な予感がして、少し警戒していると、マシューが懐へ手を伸ばした。
何をする気だろう。
「すまんな、お嬢ちゃん。」
そう言うと、マシューは鈴を取り出して鳴らし始めた。
「?何して……っ……。」
あの鈴の音がする。
チリン……チリン……と1回鳴るごとに頭が締め付けられる様に痛み、耐えきれずにその場に倒れてしまった。
「な……何で……。」
「心苦しかったぞ?元々の守護者のマシューは死んでおるからな。死んでいない時と同じ様に振る舞うのは流石に疲れるもんだな。」
そう言うと、マシューだった者はニヤリと笑い、動けない私を軽々と持ち上げて模様へと足を踏み入れた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は次の土曜日に出す予定です。
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