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竜に転生したのでとにかく異世界謳歌します!!  作者: オレンジペン✒
第一章 僕と異世界と不思議な迷宮
5/17

4 蟻って気付いたらいるよね、足とか背後とか

 僕とスライムが外の世界を求め、迷宮内を探索し始めてから一週間ぐらい経過した。

 もっとも、まだ外の世界のその字も見つけられてないけどね。

 スライムが前に人間を見たという場所へ行ったりしたけど、手掛かりはなし。

 これはかなり時間が掛かりそうだ。


 それとこの一週間で、僕はある程度の魔法を使えるようになった。

 勿論、魔法を教えてくれのはスライム。

 外の世界探しの合間合間で、かなり丁寧に指導してくれた。

 僕が使えるのは低級魔法だけだけど、低級と侮るなかれ、道中かなりのモンスターと戦ったが、対モンスター戦では普通に役に立った。

 正面切っての戦闘は無理だけど、コソコソとやる分には十分だ。

 あと、相手の目に水を掛ける事で逃げる時間も作れる。

 この迷宮のモンスターは、どうやらかなり好戦的だからな。

 どんな魔法でも使えれば生き延びる確率も上がる。

 死んだんじゃ、外の世界どうこう以前の問題だしね。

 そういった面でも、僕はスライムと会うことが出来て本当によかった。

 感謝してもしきれない。


 あと一週間の内にあった事と言えば、僕のスキルが判明した事かな。

 【唯一能力(ユニークスキル)】 〘魂之叡智(アカシックレコード)

 どうやらこれが僕のスキルらしい。

 判明した切っ掛けは、僕が毎日のようにスキル発動って言っていた時だ。

 ある時突然、頭の中に流れてきたのだ。

 とても驚いたし、喜びたかったとこだけど、何より凄く頭が痛くなった。

 どうやら魂之叡智の能力が、目に映る物の全ての情報が頭に流れるってものらしい。

 そのせいで、脳内にいくつもの情報が溢れて、処理しきれず頭痛を引き起こした。

 かなりのデメリットを背寄ったスキルだ。

 頭痛が完全にトラウマになり、あれ以来一度もスキルを使っていない。

 スライム曰く、魔法には思考を加速させるものがあるらしいから、それを習得する迄は使う事はなさそう。

 折角のスキルだというのに残念だ。


「おい兄弟。毒巨大蟻(ポイズンジャイアント)や」


 スライムが迷宮探索の弾みを止め、声を潜めて言う。

 僕たちの視界の先にいる毒巨大蟻というモンスターは、性格が荒く、十五〜二十程度の群れで行動する。

 そして毒酸弾(ポイズンボム)という魔法を使ってくる、かなり厄介なモンスターだ。

 外の世界探し中に何度か会ったが、今のところ全て逃げている。

 僕とスライムは二匹、対する相手を大勢。

 敵に回す事はとてもいい選択肢とは言えない。

 戦うなんて馬鹿な事はせず、逃げに徹するのが定石だ。


「引き返そう」

「ああ、そうやな」


 毒巨大蟻の数は目で見える範囲で六匹。

 普段の奴らに比べると数は少ないが、まあいい。

 数が少い方がこっちも逃げやすい。

 うまい具合に奴らの視線に入らず、辺りの罠を警戒して逃げれれば――


 なんて考えたのがよくなかった。

 いや、よかったけど、もっと数が少い理由を考えていれば、なんとかなったのだろう。


「よし兄弟、ゆっくりと音を立てず、引き返すで――あっ」


 突然、振り向いたスライムの声が小さくなった。


「………? どうし――あっ」


 そして振り向いた僕の声も小さくなった。

 なるほど、通りで群れの数が少い訳だ。

 狩りにでも行っていたのだろう。

 

「キシェェェエエエ!!!!」


 僕たちの背後にいた十匹の毒巨大蟻は、口に咥えていたモンスターの死骸を落としながら咆哮した。

 どうやら僕たちを餌だと思っているのだろう。


「なあ……兄弟………」

「……ああ……話し合いで解決できると思うか……?」

「………無理やな……こいつらには知性がない……」

「……うん、逃げよっか!!」


 そう言うと、僕たちは全力ダッシュで逃げ出した。



■◆■◆■◆



「「――ぃぃぃぃいいいャャャャや!!!」」

『キシェェェエエエエエエエ!!!』


 背後を振り向く暇もないくらいのスピードで、僕とスライムは迷宮内を駆けた。

 勿論、罠を警戒している暇なんてない。

 だが幸いな事に、僕は飛ぶことで罠を踏まずに済んでいるし、スライムは体の構成上、矢が刺さらず火傷もしにくい。

 罠の全てが、僕たちを追い掛けている毒巨大蟻で発動しているおかげで、ギリギリ捕まらずに逃げ続けられている。

 僕たちは今、首の皮一枚で生きてるって訳だ。

 もっとも、こんな状況が長く続くとは思えないが。


「どないする兄弟!!!!」

「今考えてるとこ!!!!」

『キシェェェエエエエエエエエエエエ!!』


 いや本当にどうしよう。

 スライムは分からないが、僕はもう体力の限界が近い。

 飛んでいる間は、自分の体重を常に翼で支えている。

 だから体力の消耗がかなり激しいのだ。

 毒巨大蟻に追い付かれないスピードで飛行するのも、保ってあと一分ちょい。

 流石に逃げてばかりじゃいられない。

 そろそろ何か手を打たないと……。


「クソったれ!!」


 そう舌打ちしながら、スライムは突然走るのを止めて振り返った。

 僕も急いで飛行を止める。


「おい! 何を――」

「スキル発動!!!!」


 スライムの体が、二十、三十と増えていく。

 

「兄弟!! お前さんだけでも逃げるんや」

「何を言ってるんだ!! 一緒に逃げよう!!」

「ダメや!! このままじゃあ、わいも、兄弟も、あいつらに食われてまうのは時間の問題や。

 なら、長く生きとるわいより、生まれたばかりで、希望に、明るい未来に溢れとる兄弟だけでも生きるんや」

 

 僕たちがそう会話している間にも、毒巨大蟻の群れは走る足を止めずに向かって来る。

 あと五メートル程って距離まで。


「それにな兄弟。言ったやろ。

 わいは、勇敢で偉大なモンスター、スライムや。ここで立ち向かわんとわいの名が廃る。

 それと、命を助けてもらった分はこれでちゃらや。じゃあな兄弟!」


 スライムそのまま、毒巨大蟻の群れへ分身たちと共に突っ込んでいった。

 毒巨大蟻たちは、僕の目の前で次々とスライムを蹂躙していく。

 その間、僕は、僕は、僕が――


 逃げるとでも思ったか? 

 黙って見ているとでも思ったのか?


 兄弟(スライム)が勇敢で偉大なモンスターなら、それは僕も同じだ。

 なんせ僕たちは、命を助けた、助けられたの間柄で種族的な繋がりが無かったとしても、兄弟なのだから。


「スキル発動!!!!!!」


 頭が痛くなるのがトラウマ?

 関係ない。

 そんなもん、兄弟を失う方がトラウマだ。


「あれが本物か!」


 スキルの能力で本物の兄弟を見つける。

 そして、体力の全てを使って全力で飛行する。


「捕まえたぜ!! 兄弟!!!」

「なっ……何をしているんや!!?」

「そんなもん後だ! 僕たちが生き延びるいい作戦を思い付いた。

 兄弟、分身体で僕を運んで、この迷宮内を駆けてくれ!」

「分かったで!!」


 兄弟の分身体が、僕の体を持ち上げて、バケツリレーのように僕を運んでいく。

 まるで動く床に乗った気分だ。

 勿論、兄弟はすぐ側にいるし、未だ毒巨大蟻の群れは僕たちを追ってくる。

 でもそれでいい。


「てか兄弟、スキルを……」

「ああ、最高に頭が痛いよ」


 次から次へと、目に映る物の全ての情報が流れてくる。

 あまりいい感覚ではないが、今はこれが、このスキルの能力が必要だ。

 塵一つ見逃さないように全力で目を開いて、なるべく多くの情報を脳内に送る。

 そして――


「あった……」

「何がや?」


 兄弟が不思議そうに尋ねる。

 だが回答は後回しだ。


「兄弟ストップ! そして僕が合図をしたら、そこの壁にあるスイッチを押してくれ」

「おう!」


 僕はスキルの発動を止めて背後を見る。

 相変わらず、奴らは追ってきている。

 不意に群れの先頭たちの眼前に魔法陣が浮かび上がった。

 そしてそこから、紫色をした液体が生成される。

 あれが奴らの使う魔法、毒酸弾だ。


『キシェェェエエエエエエエエエエエ!!』


 僕目掛けて飛んで来るそれを、低級魔法の石塊(ストーンブロック)で対応する。

 

「兄弟まだか……」

「ああ、まだだ。もうちょい」


 六、五、四メートルと、毒巨大蟻との距離は縮まっていく。

 よし!


「今だ!!」


 僕の合図と共に、スライムはポチッと壁のスイッチを押した。

 そして、


『キシェェェエエエエエエエ!!』


 奴らのいた場所の地面が無くなり、全員が下へと落ちていった。

 そう、兄弟が押したのは、地面がなくなる罠のスイッチ。

 色々と運要素が多かったが、なんとかうまくいったようだ。

 

「やったな! 兄弟!!!!」

「ああ……まあね」

「しっかし、よくこの罠が分かったな」

「僕のスキルは、この目で見た物の情報が知れるんだ。罠の内容なんか、ひと目見たら丸わかりよ」


 ガハハと笑うスライム。

 まあしかし、スキルのおかけで頭は最高に痛いけどね。

 流石に使い過ぎたか。


「わいはまた、命を助けられたみたいやな」

「それはこっちのセリフだよ。あの時、兄弟が立ち向かわなければ、僕は勇気を持てなかった」

「ほな、互いに貸しやな」

「そうだな」


 パチンっと、僕と兄弟は横になってハイタッチをした。

 取り敢えず、こんな事はもう懲り懲りだ。

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