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プロローグ 交通事故からの……

 僕、村井悠人には夢がない。目標もない。

 そんな中、毎日をダラダラと過ごしている事に危機感はある。

 でも僕にはなにもない。

 小さい頃からそうだ。

 将来やりたい事やなりたいもの。

 それらが全くと言っていい程なかった。

 だからなのか、学校で将来という言葉が出る度に怖くて仕方なかった。


 みんなは、ちゃんとした夢や目標を持っているのに僕にはそれがない。

 僕は将来何をやって、どう過ごしているかのビジョンが見えない。

 まるで暗闇の中を進んでいるみたいで、僕はそれに怯えていた。

 ただひたすらに――



■◆■◆■◆



「え〜今配ったプリントに将来就きたい職業とそれに就くにはどんな大学へ進学すればいいのかを、え〜来週の月曜までに調べて、え〜書いて持って来て下さい。はいえ〜以上、号令」


「起立! 礼! 着席!」


 放課後、僕は教室の掃除を済ませ帰路についた。

 自転車を漕ぎ、高校生になってから二年も使っている通学路を寄り道する事なく進んでいく。

 いつも通り一人で。

 

「はいオーライ! オーライ!」

「工事、新しい家が建つのか……」


 信号待ちの時間、工事をする人達が見え、自然とそう呟いていた。

 別に新しい家が建つ事に文句や不満があるわけじゃない。

 でも、僕の中の二年間が少しだけ変わってしまう事が寂しかった。

 やっぱり、時間が経てば全て変わるんだ、って思ってしまう事が寂しかった。


「変わる……か。僕も、ずっと子供じゃいられないよな」

 

 もう高校二年生。

 夢や目標がないからってダラダラ出来る年齢じゃない。

 見つけないといけない、作らないといけない年齢。

 

「将来、僕は何をしているんだろう」



■◆■◆■◆



 僕の通学路には小学校がいくつかある。

 だからよく帰宅途中の小学生を見ては、昔の自分と重ねたり、将来を考えず今を純粋に楽しんでいる姿を羨んだりしている。


「元気でいいなー」


 小学校時代の僕は、休み時間はずっと図書室で本を読んでいた。

 だからか校庭で遊ぶ声を聞いていると、もっと外で遊べよかったなと少し後悔する。

 

「それにしてもよくあんなに動けるな」


 流石は小学生。泥まみれ、土まみれになっても追いかけっこを続けているだなんて。

 仮に外で遊んでいたとしても、あれは当時の僕には不可能だろう。

 そう思い自転車を漕ぎ進めていた時だ。


「……何をしているんだ?」


 少し先で、車道を突っ切って反対側の歩道へと移動する小学生が何人か見えた。

 しかも彼らがいる場所に信号や横断歩道はなく、車道には普通に車が通っている。

 勿論これだけで危ないのだが、小学生達の目の前には車が列をなしており、反対から来る車の姿が見えづらくなっている。

 

「いや流石に危な過ぎ」


 いつ事故が起きてもおかしくない状況。

 僕はそれを、気付いた者として無視するわけにはいかなかった。

 自転車をなるべく速く漕いで、小学生達へと近付いていく。

 この間にも何人かは車道を突っ切って行った。

 そして僕の声が聞こえるであろう距離まで近付き、僕が声を上げたのと、周りに背中を押され、怯える様子で女の子が走り出したのは同時だった。

 あとついでに、車の甲高いクラクションの音も。


「危な―――ッ!!!!」


 僕は急いで自転車の方向を女の子へと変えた。

 全力で漕いで、全力で自転車から飛んだ。

 そして……


 ドン!!


 僕は吹っ飛んだ。

 

 グシャ……


 吹っ飛んで後ろの車に轢かれた。


 こうして夢や目標がない僕の人生は、結局なにもないまま突然終わりを告げたのだった。

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